公開日: 2020/06/24
更新日: 2021/07/13
「レジ袋はお付けしますか?」「はい」「1枚10円です」3年ほど前からだろうか。一部のスーパーでは、このようなやり取りが行われるようになった。 政府は昨年11月、すべての小売店でレジ袋の有料化を今年7月より義務付ける方針をまとめた。数年前から高まっている″脱プラスチック〞の動きを受けてのものだ。一昨年の7月には、スターバックスとマクドナルドがプラスチック製ストローを廃止し、紙製ストローに切り替える方針を相次いで打ち出した。
紙ストローは、耐久性と耐湿性に優れたワックスペーパーで作られており、燃やしても有毒ガスが発生せず、自然に優しいのが特長だ。ちなみにストローには、紙製以外にも竹やステンレスで作られた、再利用可能な製品もある。レジ袋の有料化や紙製ストロー導入の背景には、プラスチック製品のゴミ、いわゆる“プラゴミ”が世界中で海洋汚染を引き起こしているという事実がある。現在、世界では少なくとも、毎年800万トンのプラゴミが海洋に流入しており、このままの状態が続くと、2050年には海洋のプラゴミの量が重量ベースで魚の量を超えると予測されている(出典:Neufeld,L.,etal.2016)。
プラゴミの多くは、波や紫外線の影響を受けるなどして細かく砕け、やがて5㎜以下のマイクロプラスチックと呼ばれる微小な粒となる。容易には自然分解されず、その多くが数百年以上もの間、海洋を漂う。そのため、近年では魚や海鳥が餌と間違えて食べて死に至るなど、生態系にも甚大な悪影響を与えている。
ではなぜ、数多くあるプラスチック製品の中で、ストローが廃止の対象となったのだろうか。これについて、日本製紙株式会社グループ販売戦略本部紙化ソリューション推進室主席調査役の佐藤達也さんは、次のように語る。「企業として取り組みやすく、製品を切り替えやすかったからです。プラスチック製ストロー廃止の取り組みは一昨年からありましたが、昨年末にメディアで取り上げられたことで、拍車がかかっている状況です」
医療的な理由によりプラスチック製ストローを必要とする人、プラスチック製ストローでないと飲み物が飲めない乳幼児などの例外はあるが、飲み物を飲むことができれば別段、ストローがプラスチック製である必要はない。つまり、ストローは代替えが可能な製品であるため、プラゴミの発生を比較的容易に抑制できるというわけだ。
実際、プラスチック製ストローは海洋環境にどの程度、影響を及ぼしているのだろうか。環境擁護団体「OCEANCONSERVANCY」の2019年レポートによると、ストローは世界中のビーチに打ちあげられたプラゴミの中で、タバコと食べ物のビニール包装に次いで3番目に多いという。
プラスチックストローを廃止したからといって、プラゴミ問題がすべて解決するわけではない。けれども、スターバックスやマクドナルドなどの大手企業が取り組むことで、世界中の消費者が問題意識を持つようになることは間違いない。この取り組みこそが、サステナブルな社会作りのための、糸口となるのだ。
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