公開日: 2020/06/24
更新日: 2022/08/26
「100 円玉で買える温もり、熱い缶コーヒー握りしめ」。
このフレーズを聞いて思い浮かべるものは何か。おそらく、ある一定の年齢以上の人は「尾崎豊」や「15の夜」と答えるだろう。30年前の楽曲のため、“ 100 円玉”というところに時代を感じるが、現在では自販機自体も大きく進化し、ICカードやスマホ決済など、キャッシュレスでの購入が可能となった。だが、いまでも昔と変わらず備わっているものがある。コイン投入口だ。
自販機(自動サービス機)には「縦」と「横」、2種類のコイン投入口があるのはご存じだと思う。では、なぜ2種類あるのだろうか。縦タイプの例では、駅の券売機やガチャガチャなどが挙げられる。一方、横タイプには、飲み物やタバコの販売機などがある。
このように2種類存在する理由について、(一社)日本自動販売システム機械工業会専務理事の恒川元三氏に話を伺った。「それぞれの自販機が使用されるシーンによって、求められる用途が異なります。2種類あるのは、ユーザーにとって使いやすく、販売側にとって効率良く使うためといった、機械を使用する人の都合によるもの。どちらの方が入れやすいという定説はありません」
まず、縦タイプについて。駅の券売機は一度に多くの人が利用するため、並んでいる人を素早くさばく能力が求められる。つまり、重要なのはコインを入れてから切符や商品が出てくるまでのスピードだ。縦タイプではコインが転がりながら落ちるため、識別装置に入るスピードが早くなるが、その分識別能力が優れた、大型で高価な装置が必要となる。
次に、横タイプについて。自販機は券売機と比べ一度に多くの人が並ぶことは少ないため、スピードは求められていない。むしろ重要なのは、売切商品を出さないために、いかに商品のストックスペースを確保するか。このため、多くの飲料自販機では、5円と1円は使用できなくなっている。同タイプでは、縦タイプに比べゆっくり落ちるため、識別装置に入るまで時間はかかるが、この装置を小型かつ薄型のものにすることができ、本体ではなく扉に識別装置の収納が可能となる。
このように求められる用途によって、自販機はコイン投入口の使い分けやスペースの活用など、創意工夫がなされているのである。
最後に、自販機の「売切」に関するトリビアネタをもう1つ。実は「売切」と表示されていても、自販機の中には商品が1つ残っている。なぜなら、商品を補充した際、いきなり補充した商品が出るのを防ぎ、補充後でもすぐに冷めたい、あるいは温かい商品を買えるようにするため。このCOLD・HOT のシステムについて恒川氏は「日本と海外の自販機の一番の違い」と説明する。
無人機とはいえ、購入者のための配慮がいくつも施されているのが、日本独自の自販機の仕組みなのだ。ライダーほど、自販機を利用するユーザーはいない。ただ、多くのライダーが自販機で缶コーヒーなどを購入し、ツーリングを楽しむ姿が見られるのは、治安の良い日本だけということを忘れてならない。
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