公開日: 2025/07/09
更新日: 2025/07/18
かつて“現金大国”と呼ばれた日本だが、いまや財布を持たなくても不自由なく生活できる時代となりつつある。このキャッシュレス化の波は、二輪業界においても例外ではないが、導入コストや決済手数料などの課題も抱えているのが実情。そこで今回は、ユーザーからの要望を受けキャッシュレス決済端末を導入した二輪販売店に、その効果と実態を聞いた。
「お支払いはどうしますか?」
「PayPayで」
といった会話が多く聞かれるようになった今日。キャッシュレス決済は、「現金の受け渡しを避けたい」「支払い時のやり取りを手短かに済ませたい」といった、コロナ禍における新たな決済ニーズによって、加速度的に増加していった感がある。
経済産業省が3月31日に発表した「我が国のキャッシュレス決済額及び比率の推移(2024年)」によると、2024年のキャッシュレス決済比率は42.8%(141.0兆円)であることが分かった。内訳は、クレジットカードが82.9%(116.9兆円)、デビットカードが3.1%(4.4兆円)、電子マネーが4.4%(6.2兆円)、コード決済が9.6%(13.5兆円)となっている。政府は2019年、「国内におけるキャッシュレス決済比率を2025年6月までに4割程度にする」と発表したが、その目標を前倒しで達成する結果となった。
キャッシュレス決済拡大の“けん引役”はコード決済だ。統計に含まれるようになった2018年以降の7年間で、決済額は13.5兆円にまで拡大。特に、2018年10月にサービスを開始したPayPayは、飲食店などを対象に3年間、決済手数料を取らないキャンペーンを展開。その結果、新たに344万カ所で利用できるようになった。
少し前の話だが、2023年5月に経済産業省が発表した「キャッシュレスの将来像に関する検討会とりまとめ」によると、2021年11月時点の中小企業におけるキャッシュレス決済の導入率は80%と高い割合を示した。業態別では「小売」が85%と最も高く、次いで「宿泊」が84%、「飲食」が82%、「娯楽」が80%、「生活関連」が72%と続く。
では、二輪業界はどうか。正確なデータが公開されていないため一概には言えないが、80%には達していないと推測される。また、クレジットカードに対応していても、コードやタッチ決済には対応していない、という店は多いのではないだろうか。
利便性の良さから利用者が増え続けている今日において、キャッシュレス決済端末を導入するか悩んでいる会員店も少なくはないだろう。そこで今回は、実際に同端末を利用している二輪販売店に、どのような効果が得られているか話を聞いた。
まずは、昨年5月に「Air PAY」を導入したという販売店A。
「以前から『クレジットカード使えますか』と尋ねられることが多々あったので、導入することにしました。ウチは自転車も扱っており、パンクの修理代は1500円ですが、それもカードで払いたいという方もいます。また、出張修理の時もカードをはじめ、電子マネーやコード決済で払いたいという方もいるので、導入して正解でした。ただ、決済手数料が発生するため、現金払いのお客さんには値引きをしたりしていますが、キャッシュレス決済の人にはそれができない。決済手数料分のコストをどのように確保するか、考えなければいけないのが難しいところです」
また、ユーザーからの要望を受けキャッシュレス決済端末を導入した、販売店Bは次のように語る。
「キャッシュレス決済は、年々需要が高まっているので、辞めたくても辞められないのが現状です。特に、オイル交換は多くの人がキャッシュレス決済を利用されます。現金払いとの差別化も検討しましたが、なぜ他の人と金額が違うのか、といったお客さんとのトラブルを避けるため、料金は一律に設定しています。現在はカード、電子マネー、コード決済に対応していますが、利用者が増えているタッチ決済にも今後対応していく予定です」
政府は将来的には、世界最高水準のキャッシュレス決済比率80%を目指し、必要な環境整備を進めていく、としている。いまやスマホ1台で買い物ができる時代。キャッシュレス化の波は、二輪業界にも例外なく押し寄せている欠かせない決済手段と言える。これが世の趨勢なのだ。顧客満足度向上と経営効率化を図る上で、より需要が高まり続けている。
代表的なマルチ決済端末は前述の「Air PAY」をはじめ、「Square」「sterapack」「PAYGATE」等があり、それぞれ決済手数料や入金サイクルなどが異なる。導入を考えている場合は、まずは比較検討から進めてみてはいかがだろうか。
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