公開日: 2025/06/30
更新日: 2025/07/08
二輪専門の整備士養成講習を行うBDSテクニカルスクールの井田講師が、ブリヂストンよりモニター提供いただいた「T33ツーリングタイヤ」を約1,800km走行した上で、忖度なしのレビューをお届けします。
二輪専門の整備士養成講習を行っているBDSテクニカルスクールの井田と申します。ここではメカニックの少しマニアックな目線からいろいろ情報を発信しております。
先日、ブリヂストンモーターサイクルタイヤさんからタイヤモニターのお話を頂きました。私は年に約2万kmも運転するので、とにかく走行距離が多いです。そのため、モーターサイクルショーの時にいろいろ話をしたら、是非使ってほしいという依頼を受けまして、今回、NC750XにブリヂストンのT33ツーリングタイヤを装着しております。実はファーストインプレッションではありません。というのも、もう組み替えて1800kmぐらい既に走っているんですよ。それを踏まえて、試したいことがありますので、皆さんに情報を共有して、どんなタイヤなのかをお伝えしたいと思います。
早速、駐車場に来ました。正直、ごめんなさい。ブリヂストンさんのタイヤの印象というのが、申し訳ないですけども、あんまり良くなかったんですよ、今まで。というのは、実際にこのNC700Xを買った時に、BT023というOEMタイヤが付いてたんですけれども、ハンドリングとかちょっと乗り心地悪いなというふうに正直、感じてました。
細かい路面の凹凸には結構、唐突に衝撃が来るし、あとは低速を運転した時にハンドルがちょっと切れ込むかなという風な印象がありました。それで他のメーカーさんとかと比較すると、同じサイズでも、ブリヂストンさんのタイヤはトレッドというタイヤの設置する部分の幅がやや広めだったりするんですよ。なので、やっぱりその印象があったので、それ以降、ブリヂストンさんのタイヤは全然、使いませんでした。
タイヤはOEMとリプレイスの2種に分類されます。新車装着タイヤは見た目が同じでも、車体メーカーさんが価格を抑えるために、ゴムの質が異なるものもあったりするので、同じ銘柄でもタイヤ屋さんで売ってるものを買うと全然、良かったりするんですよ。今回のこのタイヤというのは、いわゆるリプレイスと言われてるタイヤ屋さんで普通に買えるタイヤになります。細かくテストし、このタイヤの気になる部分を確認したいです。
じゃあ早速ですけどね、外周はもう走ってはいるんですけれども、改めて、走りながらT33の性能を、確認していきたいと思います。
今、Uターンしましたけれども、嫌だと感じることはないです。ハンドルが自然に切れるセルフステアという現象がありますよね。傾けるとバイクはハンドルが切れてくれるのですが、タイヤの幅が広いと、セルフステアが結構、唐突に出やすかったりするんですね。自ら切れて行っちゃう。切れて何がダメなの? と言うと、バイクが起きちゃうんですよ。思ってるよりもハンドルの舵の入りがきついと、私はちょっと扱いづらいなって感じがするんですね。特に低速の時にその違いが分かりやすいんですけれども、セルフステアは緩やかで、結構ナチュラルな感覚。
以前、私はMICHELINのROAD5というのをずっと使っていたんですけれども、ハンドリングで言うと、そこからの乗り換えでもあまり違和感がないと思います。定常円で曲がってる時にセルフステアが効き過ぎると、起き上がるような挙動になるんですね。そうすると曲げにくいなという感じがするんですけれども、それがこれには、ほぼ無いと。逆に、セルフステアが全く入らないと寝て行ってしまうんですね。逆操舵をわざと切るとバイクが内側に入ろうとしますね。倒れて行こうとするんですよ。そこら辺のバランスというのは結構、メーカーによって違いはあるんですけれども、ナチュラルなところが、私は結構好きかもしれないですね。
今度は速度を上げて、8の字をやってみたいと思います。速度を上げた8の字をやると何が分かるの? というと、切り返しの軽快さと、あとはリヤのグリップですかね。今回のタイヤはロングライフ仕様なので、乗るほど硬くなる気がします。硬くなると基本的にグリップは落ちるんですけど、アクセルを開け始めた時にズッと来る感じは全くありません。すごいですね。だから、ライフを伸ばしつつグリップ力を上げるというのは、やはりなかなか難しいところですね。今、リヤのグリップを感じながらやっていましたけれども、フロントブレーキも使ってみましょう。フロントブレーキを使った方がちょっと舵の入りが出てくるのかなと思ったんですけれども、そんなこともないですね。
あとは、速度が出ている状態でハンドルを操作します。要は障害物を何かぴゅっと避けますよというシチュエーションの時に、どういう反応するかを見ます。速度を上げて、ハンドルを急にグッと切ってみたいと思います。これは非常に反応がいいですね。安定感をちゃんと残した状態なので、倒し始めたときの反応とか、思ったら勝手に倒れるなというのではなくて、自分がコントロールできる範囲で倒れているような感じがします。だからツーリングタイヤって、重めのバイクを対象に作ると、ハンドリングの軽快感を出すために軽めのタイヤをオートバイに入れるとちょっと不安定に感じることがあるんですね。でもそれはこのタイヤだとほぼ無いです。だからワンスペックで今回ブリヂストンさんが作ったと言っていますけれども、そこら辺はよく考えられているんですかね。
やっぱり私が気になっているのは、急制動ブレーキをかけた時の感覚です。ライフを伸ばすとグリップ落ちるだろって思ってるんですよ。でもそれがどうかなというのをやってみましょう。今、大きなブレーキをかけましたけど、フロントタイヤのグリップが抜けて不安だ、みたいな感じは全然なかったです。今、走っている駐車場が本当のドストレートじゃなくて、曲がっているところで行っているので、急制動としてはちょっと難しいところではあるんですけれども。
今度はリヤブレーキだけを思いっきり強めにかけてみましょうか。ブレーキをかけた時の感覚としては、コントロールできている感じというか、怖さは全然なかったですね。なので結構強めに今リヤブレーキだけで、このバイクは前後連動なので、結構、ズボラにリヤブレーキをキュッとかけても止まってくれるんですよね。
次は、ちょっと危ないんですけれども、パニックブレーキを模して、キュッとかけるやつをやってみましょうか。この時にも、ABSが効いているのは分かったんですけども、唐突には効かないですね。パニックブレーキの時に、急にグリップが失われるような挙動はなさそう。
今度は急制動で70kmぐらい出します。ブラックマークがね、全然出ないんですよね。タイヤをロックしちゃうとズゥーってタイヤの跡がつくはずなんですが。もちろんABSがあるのもありますけれども。これくらい効いてくれれば、結構スポーツ走行もいけるような気はしますね。タイヤが本当に負けないのであれば、雨の日の路面などで、あえて試してみたくなるところですね。
なかなか公道じゃできないテストをやってみましたけれども、私の気になってたポイント、タイヤの乗り心地が悪いとか、切り込み傾向にあるんじゃないかというのは、私が個人的に意地悪な感じで最初疑って見てましたけども、良かったんじゃないですかね。
エンジン止めてタイヤを見てみましょうか。ちなみにこれ、もう1800kmくらいもう既に走ってます。最初、タイヤの表面に細かいしわっぽいのはなかったんですけど、今、急制動をやったので、多分そういうのが出たんでしょうね。あとは、まだ1800kmぐらいなので、エッジの部分がそんなに減ってないですよね。溝はほとんど使ってないので、角がしっかり残ってますけども、タイヤの真ん中ら辺のところ、本当は今みたいな急制動を繰り返すと柔らかいタイヤだったりすると、結構ささくれみたいな感じで溝からめくれが出たりするんですよ。
リヤも見てみましょうか。リヤは全然きれいですね。これもやっぱ高速道路とかね、ツーリングしてる後のタイヤですけど、全然綺麗です。ちなみに中央に線がありますよね。これは静電気を地面に逃がすためのアース線のようなものです。帯電防止のラインになってます。走行中はオートバイに静電気が溜まりやすいので、それが地面にちゃんと抜けるようなための線が入ってるんですけど、タイヤの荒れもほとんどなくて、これリヤはかなりもちそうな感じがします。良いんじゃないですかね。
ただ個人的には、タイヤの肉が厚いですから、スポーツ走行して熱を持った時には冷えにくいんじゃないのかなという気はします。そこまで実験していないので断言はできませんが、今回のタイヤはライフをとにかく伸ばしてるので、肉が厚くなってると思うんですよ。で、確かにその分ライフは伸びるんですけれども、タイヤが温まったりとか、スポーツ走行、これどちらかというとサーキット走るようなタイヤじゃないですけども、そういう使い方をした時にはちょっと熱ダレするのかなと。
あとは私が個人的に気になるのが、肉が厚いので、今の状態だといいんですけども、タイヤが減ってきた時にハンドリングの変化ってどう出るのかなというのは非常に興味深いところですね。そういった部分も含めて、どこかで皆さんにお伝えできればいいんじゃないかなんて思っております。
ということで乗ってきましたけれども、非常に良いタイヤでした。最初に、BT023の印象は良くないと話しましたが、それは新車に装着されていたOEMタイヤのことです。リプレイスは使ったことがないので、その良し悪しは分かりません。好みもあると思いますが、T33は非常に良いタイヤでした。
もっと早くブリヂストンのタイヤ入れていても良かったかなって、正直そんな気はしますね。ツーリングタイヤ好きな方って、やっぱりヨーロッパメーカーのタイヤを使う方が多いと思うんですけれども、私も正直どちらかというとそっち派だったんですけど。スポーツタイヤが、MICHELINさんでいうとPOWER5とか、ああいったタイヤよりもライフが欲しいというんだったらツーリングタイヤのがいいですし、私はずっと使っていたのはROAD5です。で、ROAD5はスポーツ走行もできて、タイヤも軽くて、値段もまあそこそこ安くて、ライフも長いというところで、それと比較すると今までずっとなかったんですよ。ですけれども、ライフをとにかく伸ばしてきたって言っているので、乗った感じも違和感なく乗れました。
ROAD6で、もしかするとハンドルがちょっと軽快すぎるかなと感じた人は、T33もいいかもしれないです。やっぱり車体との相性があるんですよ。重い車両には結構軽快でクイックなタイヤを入れてあげた方が、車体自体は軽く動くというのがあるんですけれども、そのタイヤをちょっと軽めの車体に入れたりすると軽すぎちゃって、逆にちょっと不安に感じたりというのがあるんですけれども。なので、私はROAD6よりもROAD5のが好きだったんですね。そこからの乗り換えでも全然違和感ない、というか、反応はいいんですけれども、安定感がやっぱりちゃんとあったので、滑る心配とか、あんまりタイヤを意識しなくても乗れるんじゃないかなというのが、まとめとしてはそんな印象ですね。
ツーリングするとか、とにかく距離乗るって方は試してみるのも全然アリだと思います。このタイヤは、ブリヂストンから提供されたモニター品なので、使い切ったら返却します。最後まで何kmもったかというのは数値で出します。その結果というのは恐らくショート動画とかで皆さんには紹介できると思います。その紹介するときにはもうブリヂストンさんにタイヤ返却しているかもしれませんけれども。なので、ぜひ、自分も距離を乗るんだよという方は、私と一緒に色々試して、コメント欄にこうだったというのを書いていただけるといいかと思います。
ということで、今日はタイヤの話をしてきましたけれども、普段、私は『BDSテクニカルスクール』で整備士の養成講習を二輪専門でやってます。今回はタイヤについて話しましたが、エンジンなど、他のパーツについても解説します。メーカーの関係者ではないので、特定メーカーに縛られることはありません。動画では話せない裏話もいろいろありますので、興味がある方はぜひ聞きに来てください。『BDSテクニカルスクール』では資格を持たない業界関係者向けの講習も行っており、概要欄のリンクから申し込みやお問い合わせができます。一緒に資格を取って、バイクの業界を盛り上げましょう。ということで、また次回の動画でお会いしましょう。ありがとうございました!
もっと早くブリヂストンのタイヤ入れていても良かった
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