公開日: 2020/09/22
更新日: 2022/08/26
去年10月から始まった「キャッシュレス・ポイント還元事業」が6月30日をもって終了となった。ご存知の通り、同制度は消費増税に伴い、縮小が懸念される消費を下支えすると共に、海外と比べ水準の低いキャッシュレス利用を促進するために導入されたもの。対象事業者となった二輪販売店の結果について、全国オートバイ協同組合連合会(AJ)の石井大専務理事は次のように分析する。
「一概には言えませんが地域に関係なく、キャシュレス決済により売り上げが伸びたとの声を多数聞いているため、キチンと効果が得られたと捉えています。コロナの拡大により四輪は大きな打撃がありましたが、私が知っている限り二輪はそこまで影響を受けていないと思います。AJはキャシュレス決済導入を推奨してきたので、今回のキャンペーンをキッカケに、多くの二輪販売店に導入していただき嬉しい限りです」
二輪販売店をはじめ、多くの店舗で赤色のキャッシュレスマークが見られたが、どれくらい効果があったのか。
経済産業省は6月30日、事業開始前と期間中に実施した、消費者および店舗向けアンケートの調査結果を公表した。これによると、還元事業の認識度の高まりや、全地域・全世代でのキャッシュレス利用の増加が確認され、実際に還元事業開始後、20代以上の6割を上回る人が週1回以上キャッシュレスを利用していることなどが分かった。また、2016 年に19・9%だったキャッシュレス決済比率は今回の制度が功を奏し、2019 年は26・8%まで引き上げられるなど、梶山弘志経産相が「一定の成果を上げた」と言うように、ねらい通りの効果が得られた。
店舗に焦点を当ててみると、還元事業加盟店の約40%は、売上と顧客獲得に効果があったと回答している。けれども、逆を言えば残りの約60%は「効果がなかった」「変わらなかった」ということになる。つまり、還元事業の導入は一定の効果はみられたものの、半分以上の店舗は思っていたほど売上と顧客確保に結び付かなかったのだ。原因は何か。これには、手数料とコロナ禍が関係している。
加盟店の多くは還元事業開始に伴い、新規顧客の拡大や売上促進のため、キャッシュレス決済を導入するにあたり、決して安くはない手数料を払い続けてきた。けれども、そんな中コロナが直撃した。緊急事態宣言が発出され、国内だけでなくインバウンド消費もほぼ皆無になるなど、手の施しようがない状況に陥ってしまった。
経産省の調査では、コロナ対策となることもあり、還元事業参加店舗の9割前後が今後もキャッシュレスの決済手段の提供を続けると回答している。けれども、消費が停滞する中での手数料支払いや、現金化までのタイムラグなど課題もあるため、多くの店舗が不安をかかえていることは間違いない。店側の「キャッシュレス離れ」を防ぐためにも、キャッシュレス決済導入手数料の補助など、政府による支援が今後も必要となる。
政府は2025 年6月までにキャッシュレス比率を40%、将来的には世界最高水準の80%を目指すとの目標を掲げている。消費者の8割前後は、ポイント還元終了後もキャッシュレス決済を利用したいと回答しているが、あと5年で40%を達成できるのだろうか。現金文化と言われる日本でキャッシュレス決済を定着させるためには、まだまだ時間がかかるだろう。
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