公開日: 2021/12/27
更新日: 2022/09/06
2021年11月10日、テイストオブツクバのHERCULESクラスにおいてKATANA1000Rを駆る加賀山就臣選手(Team KAGAYAMA)がPOLE TO WINを飾り、57秒786のコースレコードを樹立!そのマシンに装着されていたのがAragosuta(アラゴスタ)の市販品ツインショック。内部構造も変更せず、セッティングのみでそのパフォーマンスを見事に実証した。
アラゴスタサスペンションのスペシャリストとして、KATANA1000Rのサスセッティングを担当したのが、Garage Mototech(ガレージモトテック)を経営する杉山祐一さん。2006年に静岡県静岡市にガレージモトテックを創業。2014年頃からアラゴスタの二輪販売元としてスタートする。二輪のサスブランドとしては後発メーカーであるアラゴスタの開発に尽力した。
「サスはセッティングしなければいけないものです。○○用と販売されていても、まずバネは変更しなければならない。購入者のマシンはマフラーも変更しているので、そのままでマッチする訳がないんです。メーカーもセッティングパーツを公式に用意していない。四輪の世界ではスプリングとショックアブソーバーは別体であるのが当たり前です。二輪の場合、ショックありきという考え方が蔓延し、スプリングは後回しになっている。バネレートの表記もない。二輪サスペンションの世界は四輪と比較すると30年は遅れていると言われているんです」
オランダのアラゴスタンパーダ開発技術者も、ツインショックの重要性を理解していなかったため、杉山さんは現地スタッフを日本に招待することから始めた。
「本国の技術者に日本のサーキットや峠道を走ってもらい、日本独特の二輪文化を理解して貰いました」
こうして開発された二輪用アラゴスタは、既存のサスができなかった幅広いセッティングに対応可能な商品となった。
「同じところを周回するサーキットと比べて、公道は路面状況が複雑です。固いセッティングを柔らかい方向にスプリングを変更すると、今度は圧側のダンピング不足になる。既存の商品ではバネをしっかり動かし、オイルの流用をあげることが構造的に不可能なんです。アラゴスタはビッグピストンを用いてダンピング不足を解消しています。これなら他社の商品のようにシム変更の必要がありません」
アラゴスタサスペンションを注文するには専用のオーダーシートに記入が必要で、サスに関して一定の見識がなければ、適格なオーダーをすることはできない。そのようなユーザーや販売店に対しては電話で対応してくれる。
「ガレ―ジモトテックではアラゴスタ以外のサスでも調整します。販売店の方に伝えたいのは中古販売車両のサスのおよそ8割はオーバーホール時期ということです。サスを変える前にまず車体をリフレッシュするべき。高額な商品ですから、違いを体感できないと意味がないですから」
ガレージモトテックではレース車両をレンタルできるMRDS(レーシングデリバリーサービス)も開始。モータースポーツの普及にも積極的に活動している。更に2021年、加賀山就臣さんと共に一般社団法人MRS(モトライダースサポート)を設立。
「この状況が過ぎたら、バイクの大暴落がおきるかもしれない。せっかくバイクが売れたのなら、遊び方を提供しなければいけない。レースとストリートの融合。バイク乗りのあらゆる垣根を無くしたい。自分たちは老害にはなりたくない。この先は、若い人達を支援していきたいんです」
自分が欲しいと思う商品がなかったから、というシンプルな理由でアラゴスタサスペンションに携わってきた杉山さん。今後の二輪文化を見据えた活動に注目したい。きっと既存の世界にはない、新しい何かを見せてくれるはずだ。
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