ビジネス自工会

「二輪車市場動向調査報告書」50代を境に、情報源の違いが明確に

公開日: 2022/05/31

更新日: 2022/09/06

日本自動車工業会は4月20日、2021年度版『二輪車市場動向調査報告書』の公開およびオンライン説明会を開催した。この市場動向調査は、二輪車の新車を購入したユーザーに対して実施されているもので、2年に一度、自工会が発表している。今回の調査では、購入者の年齢層が若干若返ったほか、年代による情報源の違いが明確になった。

購入者平均年齢、前回調査から0.5歳の若返り女性はマイナス2.4歳の53.2歳に

<center>バイク使用実態「二輪車購入者年代」</center>
バイク使用実態「二輪車購入者年代」

0.5歳、若返った。これは何かというと、二輪車の新車を購入した人の平均年齢だ。日本自動車工業会では2年に一度、『二輪車市場動向調査報告書(以下、報告書)』をまとめているが、その2021年度版を4月20日に公開。その中に「運転者特性」の項目があり、それにより購入者の平均年齢が前回の調査よりも0.5歳若くなったことが分かった。

前回(2019年度版)の調査では、購入者の平均年齢は54.7歳。それが今回は、54.2歳となった。男女別に見ると、男性が54.4歳で、女性が53.2歳。ただ、年齢の分布に前回と大きな違いはなく、最大のボリュームゾーンは50代(前回30%、今回31%)。30代以下の割合が、29%から32%となったことが平均年齢を下げた要因となったようだ。

30代以下の割合が伸びたのは女性に顕著で、前回の32%から今回の38%へと6ポイント増えた。これにより、女性購入者の平均年齢は55.6歳から53.2歳へと2.4歳も若返った。男性は前回54.5歳だったので、0.1歳の低減となった。

また、今回からは輸入車ユーザーも調査対象となり、輸入車を購入したユーザーの平均年齢は51.7歳。全体からすると2.5歳ほど若いが、最大のボリュームゾーンが50代なのは変わらず、占める割合も多い。

<center>バイク使用実態「二輪車継続乗車意向」</center>
バイク使用実態「二輪車継続乗車意向」

全体の平均年齢に話を戻すが、10年前の2011年度版では平均年齢49.9歳。かろうじて40代だったのだが、それ以降は50代を超え、年を経るごとに平均年齢も少しずつ上昇。前回調査では54.7歳となった。

報告書では、二輪車に継続して乗る意向も聞いているが、「ずっと乗り続けたい」のピークは男性・女性ともに40代(男性76% 、女性59%)で、50代からは減少。ユーザーの多くを占める男性(男性85%、女性15%)の回答を見ると、50代で65%、60代になると一気に43%にまで落ち込む。購入者の平均年齢が54.2歳だと、乗り続ける意向が大きく減少する60代まで5年ちょっとしかない。前回よりも若返ったとは言え、二輪業界が安定して持続していくには、若年層への訴求が重要であることは明らかだ。

ネットを主な情報源とする若年層において10代は「販売店での試乗」も重視

<center>上から、バイク使用実態「今回購入車を最初に認知した情報源」、バイク使用実態「用途」</center>
上から、バイク使用実態「今回購入車を最初に認知した情報源」、バイク使用実態「用途」

50代未満と50代以上で、明確な違いが出たのが「情報源」。複数回答なので全項目を足すと100%以上になるが、全体で見ると、上位の3つは「メーカーのWebサイト」が46%、「販売店での実物」が39%、「販売店の店員の話」が33% となっている。これは、単数回答でも順位は変わらない。

簡単に購入までの流れを想定すると、まずはネットで情報を得て、店で現車を見ながら店員に話を聞いて、購入を決める…という感じだろうか。

最近、複数の二輪販売店のスタッフから「お客さんが来店しても、挨拶以外、向こうから話しかけられるまでは、あまり声をかけないようにしている」という話を聞いた。けれども、33%のユーザーが店員の話を情報源として活用しているのだから、シャットアウトするのではなく、声をかけるタイミングをしっかりと見つけていくことも、販売に結びつけていく大切な要素になるものと思われる。

さて、50代未満と50代以上の違いだが、端的に言えば、ネットの活用だ。

メーカーのWebサイトを情報源としていると回答した人を見ると、20代から40代までは20%以上となっているが、50代以上はその割合が減少している。

「販売店での実物」を情報源としているのは、70代以上が特に多い。販売店の店員の話を情報源としているのは、40代と50代が多く、カタログ・パンフレットを情報源としているのは、70代以上が多い。二輪専門雑誌の記事・広告を情報源としているのは、60代と70代。SNSを情報源としているのは、20代と30代に多く見られる。販売店のWebサイトを情報源としているのは、10代と20代に多く見られる傾向だ。

このように、ネットを積極的に活用しているのが50代以下だと言える。日本では2005年頃から徐々にスマートフォンが普及し始め、2020年には世帯保有率は86%を超えた(総務省調べ)。10代や20代はネット環境が整っているのが当たり前の時代に育った世代。50代以上だと、スマホやネットのない時代を過ごしてきた世代で、現場で現物を見る、紙媒体やテレビなどで情報を得るということに慣れている。この違いが出ているものと思われる。

全体の割合は4%と低いものの、興味深い数字だったのが「販売店での試乗」。最も高い割合を示したのが10代(15%)。2番目に高い20代の3倍もの数値となっている。10代は販売店での実物でも17%と、70代以上に次いで高いので、ネットと現車をバランスよくチェックしている様子をうかがい知ることができる。

また、「実際に走っているのを見て」というのも、若い世代に多く見られる傾向だ。

今もコロナ収束後も、ツーリングの楽しみ方の主流は、ソロツーリング!?

<center>バイク使用実態「ツーリング相手」</center>
バイク使用実態「ツーリング相手」

購入したバイクはどのように使われているのか。それを示しているのが、「使用実態」。全体では「買い物・用足しに」が53%、「ツーリングに」が50%と、2つの項目で50%以上となった。

男性は「ツーリングに」が55%、「街乗りに」が44%で、趣味として楽しむ姿が想像される。女性は「買い物・用足しに」が70%と圧倒的に多く、次いで「通勤・通学で会社・学校まで」が41%と、日常の足として二輪車を利用していることがうかがえるなど、男女で全く違う答えになった。

ただし、女性も「ツーリングに」「街乗りに」がそれぞれ24% となっており、趣味として楽しむユーザーもそれなりの数がいるのが分かる。実際、ネットなどを見ていると、ツーリングの様子を動画にする女性のバイク系YouTuberは少なくなく、登録者数1万人以上というのもザラ。

BDSの提供するバイク情報サイト「BDSバイクセンサー」のイメージガール、竹川由華さんもバイク系YouTuberの一人。

若年層がよく利用するネットで、若年層のバイク系YouTuberたちがバイクを楽しむ様子を見せてくれることで、若年層への二輪車訴求も進んでいくものと思われる。もちろん、それだけに頼っていてはいけないが。

次に、「ツーリング相手」についての回答を紹介。「一人で」というのが飛び抜けて高く83%。「バイク仲間(ツーリングクラブ等の知り合い)」が26%なので、3倍以上にもなっている。

これは、コロナ禍ということが関係しているのかと思ったのだが、「コロナ感染収束後の二輪車使用の変化」においても、トップとなったのが「1人でのツーリング」。特に10代や20代からの回答数が多く、ともに48%。半数近くが、ソロツーリングを楽しみたい意向を示している。しかし、「バイク仲間とのツーリング」も高い割合を示しているので、コロナを気にすることなく、バイクを楽しみたいということなのかもしれない。

さて、ここまで非常にザックリとだが、『二輪車市場動向調査報告書』の2021年度版を紹介してきた。この報告書は、大きく「新車購入ユーザー調査結果特性」と「トピック調査結果特性」の2項目に分かれており、全145ページにおよび様々なデータが掲載されている。

2021年と言えば、コロナ禍の真っ只中。生産地の工場がストップする、物流が滞って新車の入荷がままならない、中古市場の高騰など、前回の2019年度版とは状況が全然違う。その中で得られたデータなので、ウィズコロナやアフターコロナの時代にも参考になるかは分からない。また今年も大きな変化がある1年になるかも知れない。だが、ユーザーの回答が詰まった報告書であることは間違いない。今、ユーザーはどんなことを思い、どうバイクに接しているのか。それらを知るためのヒントにはなるだろう。

報告書は自工会のサイトからダウンロードすることが可能となっている。ページ数は多いが、きっと何かしらの参考になるはずだ。



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