公開日: 2020/06/23
更新日: 2022/08/26
2005年に導入されたAT限定大型二輪免許。当時は、大排気量のATモデルがあまりなく、スズキの「スカイウェイブ650」の650㏄が最大排気量だった。簡単に言えば、これがそのまま、AT限定大型二輪免許の上限となっていたわけなのだが、現在はどうだろうか。
いまはホンダの「DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)」や、ヤマハの「YCC‐S(ヤマハ電子制御シフト)」を搭載するモデルが登場している。これらは、クラッチ操作をしないオートマチック車両であり、650㏄を優に超える排気量でもある。AT限定大型二輪免許導入時のAT最大排気量のカテゴリーはスクーターであったが、いまはそれに限定されることはない。
例えばDCT搭載車には「ゴールドウィング」「アフリカツイン」「NC750系」などがあり、どんどんカテゴリーを広げている。つまり上限650㏄は、時代に合わない状況となっていたのだ。「現在、総排気量0.7リットル以上のAT大型二輪車が流通していることや、そのようなAT限定大型二輪車の運転特性が総排気量0.65リットル以下のものと変わらないこと。これらを踏まえ、AT限定大型二輪免許で運転することができる車両の総排気量の上限を設けないこととしました」(警察庁)
こうした経緯を受け昨年9月、『AT限定大型二輪免許に関する規定の見直し』が含まれた、道路交通法施行規則の一部を改正する内閣府令が公布され、12月1日に施行された。 また、法改正以前にAT限定大型二輪免許を取得していたユーザーについても総排気量に限定がなくなり、全排気量のオートマチック車両に乗ることが可能となった。
この法改正により、ユーザーの選択肢は一気に広がった。同時に、販売店にとっても、勧められるカテゴリーや車種の増加につながるため、新たな販売チャンスが生まれることにもなる。 教習所においては、上限撤廃に伴い、AT限定大型二輪免許の試験車両要件が700㏄以上の大型自動二輪車に変更された。ただ、当面の間は従来通り600㏄以上の試験車両を使用できる時限措置が取られている。
AT限定大型二輪免許の排気量上限撤廃が時代に合わせた改正なら、時代を見越した改正が『大型二輪車に関する規定の見直し』だ。これまで、定格出力0.6kWを超える電動バイクは普通自動二輪車に区分され、定格出力0.6kW以下なら原付免許、同0.6kW超から1kWまでが小型限定普通二輪免許、同1kW超が普通自動二輪免許となっていた。極端な話をすれば、定格出力1.1kWでも100kWでも、普通自動二輪免許を持っていれば乗れていたのだ。
昨今、国内外の各メーカーは電動化に力を注いでおり、記憶に新しいところでは、ハーレーダビッドソンの「LiveWire」は発表と同時に大きな話題となった。また、イタリアのミラノで開催される「EICMA(エイクマ)」では昨年、カワサキが電動バイクのコンセプトモデルを発表。KYMCO(キムコ)も2年連続してエイクマで電動バイクを発表した。「RevoNEX」は最高時速205㎞(到達時間は11.8秒)、0‐100㎞/hが3.9秒と、一般的なスーパースポーツと同等の加速性能を持つ。もう、電動化の世界はそう遠い話ではないのだ。
こうした流れを受け、警察庁は規定に関する見直しを行った。「今後、大型の電動自動二輪車が流通することが見込まれることを踏まえ、大型自動二輪車と普通自動二輪車を定格出力により区分することとしました」(同)
これにより、大型二輪車に相当する定格出力は20kW超となった。「現在流通している自動二輪車を参考にして検討した結果、普通二輪免許で運転することのできる最も大きな総排気量0.4リットルの車両の運転特性は、定格出力20kW程度の電動自動二輪車と同程度であると考えられます。そこで定格出力20・00kWを超えるものを大 型自動二輪車と区分することとしました」(同)
現在、日本で売られている定格出力の大きな電動バイクの一例として、BMWモトラッドの「CEVOLUTION」がある。同モデルの定格出力は19kWなので、普通自動二輪免許で乗ることができる。しかし、今後は大きな定格出力の電動バイクが日本市場に続々投入されることが考えられる。こうした法改正を知らないユーザーは決して少なくないものと思う。この先、顧客への説明は、間違いなく必要になるだろう。
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