公開日: 2020/06/25
更新日: 2022/08/26
今回行ったヒアリング調査の対象は10~20代のライダー17名、非ライダー34名の合計51名。人数が少ないため参考レベルではあるが、予想していなかったか回答をいくつか得られため、それらを紹介する。
まずはバイクに対する興味について。「バイクに乗りたいと思ったこと、興味を持ったことはあるか」という問いに対し、非ライダーの約60%が「はい」と答え、男女共に「はい」と答えた割合が過半数を占めている。
だが、「バイクに乗りたいか」という一歩踏み込んだ質問になると、多くの若者がバイク事故による安全面を危惧し、嫌う傾向が強い。やはり、非ライダーにとってバイクに乗るというハードルは、少し高めに設定されているようだ。
次にライダーのマナーに関する質問について。非ライダーの約60%が疑問を抱いているという結果に。「はい」と答えた若者の多くは、ライダーによる「すり抜け」を危険と感じているようだ。
ある若者は「高速道路での渋滞時、車線変更をしようとしたら後ろからバイクが結構なスピードですり抜けをしていき、バイクに接触しそうになった。これは高速道路に限らず、一般道路の渋滞時でも起こりえるから本当に危険」と実体験を語る。
ライダーにとっては、ごく普通の行為となっている「すり抜け」が非ライダーに悪い印象を与えているのは事実。クルマの運転者が危険を感じる「すり抜け」は、個々のライダーが無理な割り込みを避ける意識がけや、黄線を超えた「追越し」は違反であるなどの認識が必要だ。ただ最近は、車の運転者がウインカーを出さずに急に車線変更を行うなど、クルマの運転者側にも問題がある。
次に、バイクに対する印象について。「世間一般にはバイクに対する否定的な印象が残っていると思うか」という質問に対し、非ライダーの約70%が「いいえ」と答えた。
「親などにバイクに乗ることを反対されたことがあるか」という質問に対しては、「はい」と答えた割合が過半数を占めた。この結果と、今の若者の親がバイクブームを知っている世代である、ということを踏まえると、親世代にバイクに対する否定的な印象が残っていると考えられる。これには、3ナイ運動による影響などが少なからずあるのではないだろうか。
ここで、ライダーに焦点を当ててみる。バイクに乗ろうとしたキッカケについて1番多かった回答は、漫画や映画による影響。2番目はツーリングを目的とするもの。ある若者は「クルマだと旅行だがバイクなら旅になる。ドライブも、バイクなら冒険になる」とツーリングを楽しんでいる。また、「クルマよりもキツい分、思い出に残る」との声も。多くの若者ライダーは、バイクを運転することに楽しさを感じている。
気になったのは、移動手段としてバイクに乗るライダーが少ないということ。都市部で生活する若者が調査の対象となっているからかもしれないが、公共交通機関が充実していること、また、観光地が多い都市部において、バイク専用の駐車場が少ない、ということも、若者が移動手段としてバイクを選択する理由を妨げていると考えられる。
次に、若者ライダーがどれくらいバイクに乗っているのかについて。1番多かった答えは5年。2番目は4年と、比較的長い期間バイクに乗っていることが分かる。既にバイクを降りてしまった若者もいるが、多くは今後もバイクに乗り続けたいと回答している。
最後は、若者が今後のバイクのある生活をどのように捉えているかについて。「今後、バイクに乗る若者が増えると思うか」という質問に対し、全体の約10%が「増える」、約80%が「増えない」、10%が「横ばい」と答えた。増えると考える人からは、「クルマ離れの加速により、単価の安い二輪車に人が流れてくるのではないか」や、「今日、若者向けのラインアップが増え、親しまれている」といった意見などが挙がった。
対して、増えないと考えた人からは、予想通り安全面や経済面を理由とする意見が多く見られた。さらに、「公共交通機関が十分に発達した今日、バイクを使う必要性を感じない」や、「クルマ離れの加速と共に二輪車離れも加速していくのではないか」といった意見などが挙がった。
また、横ばいと考えた人からは「クルマ離れから移動手段としてバイクを持つ人がいてもおかしくないと思う」や「趣味の範囲で欲しいと思う人が一定数いると思う」といった意見などが挙がった。
以上のヒアリング調査を行ったことで、様々な発見と共に、面白い結果を得ることができた。中でも注目したいのは、バイクへの興味の有無に関わらず、若者が「電動バイク」に興味を示しているということ。
「地方の観光地は交通機関が充実していないため、クルマや自転車だけでなく、電動バイクもレンタルやシェアができれば、バイクという選択をする若者もいるのではないか」「レンタルバイクから入り、電動バイクを購入する人もいると思う」「インバウンド客が電動バイクを使用するのではないか」といったような、質問に対する回答とは別に「電動バイク」というキーワードが多く挙げられた。また、「レンタルやシェアサービスが普及すれば、新たな需要を生むのではないか」という意見も挙がった。
現在の日本では、中国ほどの電動バイクの普及は見られず、アメリカや台湾ほどシェアサービスが浸透しているとも言い難い。だが、今後間違いなく電動バイクのニーズは増えると予想される。販売店によっては、すでに電動バイクの取り扱いを検討しているという店もあるだろう。
ここで面白い調査結果を1つ。「YouTubeやSNSを活用して、バイクに関する情報やバイク販売店について調べたことがあるか」という質問に対し、若者ライダーの約90%が「はい」と答えた。
このことからも、若者にバイクに関する情報を提供するには、YouTubeやSNSの活用が有効的であることが分かる。新規の若者ライダーを増やすためにも、今後はSNSを活用した訴求が必要不可欠になってくるのではないだろうか。現に、BDSレポート9月号で特集を組んだ「スズキモータース」は、SNSをフル活用し、前年度比580%の販売台数を達成している。
SNSを活用した販売は、若者だけでなく30代以上の人にも有効的であることは、スマホの普及率からして間違いない。新規ライダーだけでなく、リターンライダーを増加させるためにも、SNSを活用した情報提供を「当たり前」とすることが、いまできることなのではないだろうか。ただし、SNSの活用は、従業員やサービスについてクレームが書かれるなど、リスクを伴うため、活用には十分な注意が必要だ。SNSを活用した訴求を通じ、更なるライダーの増加を期待したい。
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