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20代男性は実用性よりも趣味性でバイクを選ぶ!?データで見る、ユーザーのバイクライフ

公開日: 2020/07/29

更新日: 2022/09/06

オンロード軽二輪購入比率が最も高い世代は、20代男性

 ユーザーの特性やバイクの使用状況。これは、どの販売店でも知っておきたい情報だろう。それを知ることのできる資料の一つが、日本自動車工業会(以下、自工会)が実施している「二輪車市場動向調査」だ。これは、自工会が隔年で新車を購入したユーザーを対象にリサーチしているもので、最新の2019年度版が4月に公開された。

 今回の調査では、2018年6月から2019年5月までに、ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの国内4メーカーの新車を購入した全国の4967人のユーザーから回答が寄せられている。約5000件というサンプル数は、アンケートとしては十分に信ぴょう性の高いもの。この結果から、店のユーザーだけでは把握しきれない動向が見えてくるはずだ。

 今回の調査でまず注目しておきたいデータは、表1にある「属性別購入二輪車」だ。これは、ユーザーを性別、性年代、年収、職業、購入パターンに分け、どのようなバイクがどの層に購入されているのかをまとめたもの(年代のみ抜粋)。「若者のバイク離れ」が指摘されるなか、20代男性の購入しているカテゴリーを見ると、トップは「オンロード軽二輪(126〜250㏄)」の27%。これは「スクーター原付一種(〜50㏄)」の24%よりも、3ポイント高い数字となっている。軽二輪以上の排気量クラスは実用性よりも趣味性が高いとされているが、そのクラスが原付一種や原付二種(51〜125㏄)のスクーターよりも高くなっているのは、20代の男性のみ。しかも、全体で見ればオンロード軽二輪の購入割合は7%なので、20代男性の27%がいかに高い数字なのかが分かる。他の年代を見ても、20%を超えているところはいない。この層のオンロード軽二輪支持の高さは、飛び抜けているのだ。

 確かに、サンプル数を見れば、20代男性は154で、最も多い50代男性1278の1割強に過ぎない。絶対数は少ないが、それでも20代男性がバイクを実用的なものとして購入しているのではなく、趣味のモノとして購入して楽しんでいるという傾向は、このデータから読み取ることができる。実際、数年前から、ゴールデンウィークや夏の大型連休などでは、20代と思われるような若いユーザーが250㏄クラスのバイクに乗ってツーリングする姿をよく見かけるようになってきている。

 以前は、若い世代というとビッグスクーターが多かったが、今は様相が異なる。ヤマハ「YZF-R25」のユーザー層の中心は10代や20代だと聞いたことがあるが、スーパースポーツ系に乗る若者を見かけることが確実に増えている。

 あとは、絶対数をどう増やしていくかが今後の課題といえるが、このまま10代や20代のユーザーが増えず、購入者の平均年齢だけが上がっていくと、必ず頭打ちになる。ただ、20代男性に趣味としてバイクを楽しむ傾向が見られるので、その層を訴求ターゲットにし、人気のスーパースポーツ系ならではの「乗る楽しさ」を提供していければ、若い世代の軽二輪クラスへの興味・関心は、さらに高まるだろう。

二輪免許保有パターンにおいて、全く違う傾向を示す男性と女性

 表2は、年代別に見た「二輪免許の保有パターン」。着実に伸びを見せているのは「大型二輪免許」で、前回の調査より3ポイント高い35%となった。男性を年代別に見ると、大型二輪免許の保有率が最も高いのは60代。10代から60代にかけ、徐々に保有率が高くなっているのが分かる。それに反比例するように、20代をピークにして年代が上がるごとに減少しているのが、「普通二輪免許限定なし」。

 このことから読み取れるのは、普通二輪から大型二輪へのステップアップだろう。一過性の趣味としてではなく、バイクライフを長く楽しみたい、と考えるユーザー像が浮かんでくる。人気のヤマハ「YZF-R25」 見落としてはならないのが、20代から40代の女性。他の年代と比べて、「普通二輪免許限定なし」の保有率が高い。ピークは30代女性の29%。

 表1の「属性別購入二輪車」においても、30代女性の13%が「オンロード軽二輪(126〜250㏄)」を購入している。20代女性が11%、40代女性が8%。男性に比べると購入比率は低いが、女性で同カテゴリーを購入しているのは、ほぼ20代から40代に限られる。10代、60代、70代以上の年代は0%なのだから、いかに20代から40代に集中しているのかが分かる。

 また、表2にあるように女性の大型二輪免許保有率は低く、ピークの30代でも10%にとどまる。さらに、男性との大きな違いは、普通二輪免許も大型二輪免許も、女性の取得者は30代がピークとなっているところ。男性のように、年代が上がるごとに普通二輪免許から大型二輪免許へとシフトする傾向はない。このことからも、軽二輪以上のクラスを女性に薦めるなら、中心的なクラスは軽二輪になりそうだ。

 これには体格や力の問題も関係するだろう。それだけに、女性視点から見た場合の、軽二輪モデルのメリットとデメリットを把握しておくことが商談の際には大切になってくる。例えば、小柄な女性で足つき性が心配というユーザーなら、ローダウン仕様はあるか、シート加工する際の費用はいくらか、足つき性を良くするにはどのような手段があるかなど、そのあたりを話に交えられると商談が進めやすくなるだろう。サンプルシートを用意しておくのは、とても効果的。その場で確認できると、商談成立の可能性も高まるだろう。

バイクの保有を止める理由のトップは、 経済面や体力面ではなく駐車スペース

 環境変化による保有中止意向、つまり、どのようなことが起きた時にバイクから降りるのか。その理由を聞いたのが、表3の「環境変化別二輪車保有・乗車意向」。バイクを降りる理由として、パッと頭に浮かぶのは経済面と体力面によるものだが、「経済的に余裕がなくなった時」や「体力に自信がなくなった時」を抑えて、最も割合が高かったのが「駐車スペースがなくなった時」。実に51%のユーザーが「保有を中止する」と回答している。

 駐車スペースの問題は、バイクの保有に関することだけではない。それが、表4のバイクに乗って出かけた際の「駐車で困った経験ありの割合」だ。全体の30%が困った経験ありと回答しており、都市部においてその傾向が顕著となっている。特に「東京23区」は48%と、約半数のユーザーが困った経験をもつ。全国の政令指定都市と首都圏・近畿圏の全域を除く「その他の地域」では26%なので、東京23区内の駐車場問題は、非常に深刻だと言える。以前に比べ多少は駐車場が増えてきているものの、まだまだ数が足らないのが実情だ。

 地域ではなく場所で見た場合が表5「駐車で困った場所」。駅周辺と繁華街で、駐車に困ったケースが非常に高くなっている。停める場所がなければ、バイクに乗って出かけていくことはできない。乗れる環境の整備は二輪業界活性化の重要なポイントだけに、今後も行政などに働きかけていくことが必要だ。

 いくつかデータを抜粋したが、このほかにも「2019年度版・二輪車市場動向調査」には、様々な側面からユーザーの特性やバイクの使用状況をまとめたデータが豊富に掲載されている。同調査資料は自工会のサイトからダウンロード可能なので、ユーザーのニーズを掴むためにも、一読をお勧めしたい。

 さて、今年は、新型コロナウイルス感染症が日常生活、経済活動のすべてを変えた。小誌6月号の特集記事でも触れたが、新型コロナウイルスの感染が拡大し始めた2月頃からは、原付スクーターの需要が急増するなど、東日本大震災の時と同様、、ニーズに変化が表れた。自工会の調査は新型コロナ以前のものなので、現状とは異なる側面もあるが、〝アフターコロナ〞を見据えた対策としては、有用なデータである。 では、ユーザーの特性(嗜好)は変化するのだろうか。ガラリと変わることは、あり得ないだろう。

 どの世代にはどのようなカテゴリーが人気で、ユーザーがどのような嗜好を持っているのか、二輪を取り巻く環境においてはどのような問題があるのか。また、今現在、ニーズや社会にどのような変化があるのか。それらをしっかりと押さえ、自分のできる範囲で対策しておくことが重要だ。



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