公開日: 2020/08/03
更新日: 2022/08/26
SSPは「青木3兄弟」の三男、治親選手が代表理事を務める一般社団法人。脊髄損傷等の障害を負ってもバイクに乗りたいという人々をサポートする活動を行っている。テストコースでの事故による脊髄損傷で下半身不随の後遺症を負った青木拓磨選手、そして同じく事故で下半身不随となったウェイン・レイニー氏が、昨年再びサーキットでバイクを走らせた姿は感動を呼んだ。
今回の体験走行会は、パラモトライダーに向けた第1回目の開催。安全を考慮し、参加した生方潤一さんと野口忠さんは、いずれもバイクレース経験者だ。両者は現在、手による運転が可能なレーシングカートで活動しているが、バイクに乗るのは脊髄損傷を負って以来約30年ぶりだという。
用意された車両にはハンドシステムが装着され、手だけでシフト操作が可能。そしてステップには自転車用のビンディングを応用することで足が固定できるように工夫され、万一の転倒時には離れるようになっている。車両はいずれも大排気量モデル。シフトミスをしたとしてもトルクがあるためアクセルを開ければ引き続き走行が可能であり、エンストして転倒するリスクが少ないなど、安全面が考慮されている。
参加者両名は、まずパドックの広いスペースを利用して、SSPが開発した補助輪付の車両で直線走行。操作および補助輪を接地させずに運転できることを確認した。
パラモトライダーには、1人につき3〜4名のスタッフが乗車と降車、スタートと停止をサポート。ライダーとしっかりとコンタクトを取り、スタート時にはエンストや転倒をしないよう自らの足で長めに並走し、停止時はフロントから確実に受け止めた。
テスト走行後は、いよいよコース走行。サーキットは一方通行で歩行者も飛び出してこないため、パラモトライダーが安全に安心して走行するには最適な場所といえる。そして万一の時にもすぐに対応できるよう、コース内では青木3兄弟が前後を走行した。
走行前は、やや緊張した面持ちだった参加者が、走行後に見せた満面の笑みが印象的だった。走行を終えた参加者に感想を聞いた。
「クラッチを繋いで走り出した瞬間、本当に懐かしい感じでした」(野口忠さん)
「違和感はあまりなくて、ある程度車速を出した方が不安感が無いかな、と。やっぱりバイクはいいなぁと思いました」(生方潤一さん)
パラモトライダーは、それぞれの症状により体幹への力の入り具合が異なりバランスを取るのが難しいという。そして、麻痺した部分がマフラーに当たったり捻ったりしても気づけない場合があったり、自律神経の麻痺がある場合には汗を出せなかったりといったリスクもあるという。そのため、SSPでは理学療法士も参加して状況を確認。万全の体制を取っていた。
青木治親代表理事は、障害を負っていても一緒にバイクを楽しんでもらえる環境作りを今後も進めて行きたいという。
「様々な人に乗ってもらう機会を提供するには、たとえ同業者でも色々な人に協力してもらうのが業界にとってもメリットだと思うんです。次は一般公募して開催したいですね。乗りたいけどちょっと怖いという場合は、見に来てくれるだけでもいい。パラモトライダーと健常者が一緒に走行を楽しめる環境を作って行きたいと考えています」
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