公開日: 2025/08/21
更新日: 2025/08/27
オーナーが修理を諦めていたスーパーカブ50カスタム(2002年式)を、BDSテクニカルスクール井田講師が修理します! 第一話は不動の原因究明ため、まずはキャブレターを分解・清掃・解説編から!
こんにちは! 二輪専門の整備士、BDSテクニカルスクールの井田と申します。この動画では、メカニックの少しマニアックな目線でさまざまな情報を発信していきたいと思います。今回のタイトルは『「もう廃車だ」オーナーが諦めたスーパーカブ50 執念の復活計画!』です。
これはオーナーが3年ほど放置していた車両で、「なんとか乗れるようにしたい」という話が持ち上がり、今回の計画がスタートしました。私もこの車両は全く見ていないので、まずは明るい場所で、そもそもどんな状態なのかを皆さんと一緒に見ていきたいと思います。
最初にこの車両のベースについてお話しします。これはスーパーカブ50の中でも、「カスタム」という純正グレードです。通常のカブと何が違うかというと、まず灯火類が四角いこと。そしてスターターボタンが付いていて、キックでなくてもセルで始動が可能です。さらに、4速ミッションになっているのも特徴です。
この車両は、いろいろと壊れている部分が多いですね。ハーネスはだめですし、ヘッドライトは固定されておらず、ハンドルも私の好みではないものが付いています。ブレーキも効かず、チェーンは外れ、フェンダーはカットされているなど、課題は山積みです。
まずはエンジンがかかるか確認するために、ガソリンタンクの中を見てみましょう。意外とキレイかも。そんなにサビていないですね。ガソリンは交換する必要がありますが、状態は悪くないです。これならガソリンタンクは使えそうですね。
この状態でエンジンがかかるか試してみます。お、クランキングはちゃんとしましたね。意外とすんなり、キャブさえ直せばエンジンがかかるかもしれません。
これがガソリンコックです。この先が燃料タンクにつながっているので、これを外すと……。ちょっと燃料ホースが硬くなっていますね。これを外した瞬間、ガソリンがブワッと出るかもしれないので注意が必要です。
ガソリンを抜くと、これは汚いですね。通常はピンク色ですが、黄色い液体が出てきました。カブはシンプルなバイクなので、奥がめちゃくちゃ深いです。4サイクルエンジンの基礎が詰まっていて、余計なものがないから壊れにくい。私は、シンプルなものほど壊れにくいと考えています。
ゴムが超硬くなって、プラスチックみたいになっていますね。レストアしている人の中には、これを廃油につけ込んで柔らかくする人もいます。なかなか取れないな……あ、取れた! 中は意外とキレイかもしれません。作業台の上で中身を開けてみましょう。
こちらがキャブレターです。状態をチェックしていきましょう。まず外観ですが、ここについているのはチョークバルブです。チョークを引くと動くはずですが、全く反応していません。おそらくチョークが効いていなかった状態だったのでしょう。
そしてこれが先ほど言っていた燃料コックです。文字がだいぶ汚れて見づらくなっていますね。キャブレターの中には小さい穴がたくさんあり、その穴のサイズでガソリンの流量をコントロールしています。ガソリンはフロートチャンバーという場所に入るので、中を見ていきます。ボルト2本で止まっていますね。固着しているな……あ、いった!
わかりますか? これ、ガソリンが腐っているというのか、油と混ざっているのかな。触ってみましょう。サビというか、もうガソリンが完全に劣化していますね。ちなみに、さっきガソリンが漏れてきたじゃないですか。このストローのようなチューブはオーバーフローパイプといいます。ガソリンの油面がこれを超えると、ホースを伝って外にガソリンが漏れるんです。先ほどここからガソリンが漏れてきたということは、どこかに問題があるのかもしれませんね。
これがジェットと呼ばれる小さな穴です。このジェットは、ガソリンの油面の高さで調整するのですが、これがカタカタと動きます。ガソリンがフロートチャンバーに入ると、このフロート(浮き)が浮力で持ち上がり、中心にあるバルブでガソリンを止める仕組みです。この受けの部分が汚れているのかもしれませんね。
この辺りにジャリジャリしたものがたくさん付いています。このフロートバルブの先端の黒い部分が、穴の縁に当たってガソリンを止める役割をしています。これが汚れていると、フロートが上がっても隙間ができてガソリンが止まらず、オーバーフローの原因になります。
ジェットを外しましょう。これがメインジェットで、こっちがスロージェットです。これをキレイにしていきます。ほら、わかりますか? 詰まっているのが。光が通りませんよね。真ん中が詰まっているんです。
これを清掃して穴をキレイにします。もう一つのジェットも見てみましょう。これもダメですね、穴が。脇の穴は開いていますが、真ん中の穴はやっぱり光が通りません。詰まっています。これも外しましょう。固着していますね。汚れがすごく溜まっています。中にはニードルジェットが入っているのですが、この状態ですぐに外すのは難しそうです。
私たちがよくやるのが、汚れた部品をこのフロートチャンバーに入れて……はい、キャブレタークリーナーです! これをピューっと吹き付けて、このまましばらく放置します。
キャブレターのボディも汚いので、これも洗浄しましょう。穴という穴にキャブレタークリーナーを突っ込んで放置します。これは素手でやっていますが、皆さんは手が荒れるので手袋をしてくださいね。これも放置です。
汚れ具合が……いや、まだ渋いですね。白い泡が……もうちょっと放置しておきましょう。本体側を見てください。さっき動かなかったチョークの動きが、ほら、スムーズになりましたよね! 軸の部分にキャブレタークリーナーをかけた後、グリグリ動かしていたら、劣化したガソリンの詰まりが取れて動きがよくなったんです。もう少し劣化したガソリンを落とす必要があります。まだガリガリした部分が残っているので、真鍮のワイヤーブラシなどを使ってきれいにしようと思います。
というわけで、今日はキャブレターを分解し、車両の状態を見てみました。キャブレターはしばらく放置して、組み立てるときにまた動画を回します。おそらく次回は、エンジンがかかるぐらいまではなんとかいけると思います。あとはプラグの状態ですね。最初のキックをかけた感触からすると、ちゃんと点火はしていそうです。こちらもチェックするときにまた動画を回しますので、気長に進捗をお待ちいただければ幸いです。すぐに乗れるようにはならないと思いますが、エンジンは意外とすぐにかかるような気がしますね。
それでは、また次回の動画でお会いしましょう。ありがとうございました!
【BDSテクニカルスクール講師 井田安彦】 BDSテクニカルスクール講師
保有資格
2級二輪自動車整備士、2級ガソリン自動車整備士、2級ジーゼル自動車整備士、自動車検査員、二輪車安全運転指導員
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BDSテクニカルスクールHPhttps://www.bds.co.jp/technicalschool/
穴という穴にキャブレタークリーナーを突っ込んで放置!
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