公開日: 2025/11/24
更新日: 2025/11/24
コロナ禍において需要が拡大した二輪業界だが、その動きも落ち着いてきており、今後どう推移するかを見極める上でも、今年は重要な1年とされている。9月までの出荷台数を日本自動車工業会の統計データで確認することができるので、それを表にまとめた。現在のところ、原付二種以外は前年同期比でプラスとなっており、全体でも1割以上の増加。まだ残り4分の1あるが、出荷台数が前年比プラスとなる気配が濃厚だ。
2025年も11月と12月の2か月を残すだけとなった。二輪業界はコロナ禍でバイクが注目されて出荷台数や販売台数を伸ばしたが、それも2023年あたりから落ち着きを見せ始め、コロナ以前の状況に戻りつつある。そのような中、今年はどのように推移してきたのか。
表1と2は、自工会のデータをまとめたもの(前年同期比は小数点第2位まで表示)。まずは、表1。これは、今年1月から9月までの排気量別でまとめた二輪出荷統計。前年同期比で原付二種(以下、原二)以外はプラスとなっている。
原付一種(以下、原一)は9万1112台(前年同期比16.49%増)。2022年以来の9万台以上となった。原二は7万7660台(同7.68%減)。8万台を割るのは2022年以来となる。
原一は長らく出荷台数のトップシェアを保持してきたが、2023年と2024年は原二がトップとなっていた。しかし、今年は原一が首位に返り咲きそうな勢いだ。
原一の勢いをさらに加速させそうなのが、新基準原付の市場投入。もう、説明の必要はないとは思うが、新基準原付について軽く触れておくと、交通ルールは原一と同じで、排気量は50cc超125cc以下、最高出力4.0kW以下というもの。
今年4月に新しい区分基準として追加されたが、なかなか車両が登場しなかった新基準原付。そのような中、ホンダが10月16日、『スーパーカブ110 Lite』『スーパーカブ110 プロ Lite』『クロスカブ110 Lite』『Dio110 Lite』、4モデルの新基準原付を発表。ディオは11月20日、カブシリーズは12月11日にそれぞれ発売されることもアナウンスされた。
カブシリーズのベースとなっているのは『スーパーカブ110』。最高出力3.5kWで前輪にはディスクブレーキを標準装備するほか、メーター内に速度警告灯やギアポジションなどを表示。価格は最も高いのがクロスカブ110 Liteで40万1500円。50ccではないが、原一が40万円台の時代に突入した。
ディオのシート高は『Dio110』よりも15mm低い745mm、シート下に17リットルのラゲッジスペースを確保など、新基準原付に適合させるだけではなく、使い勝手や扱いやすさなどの面においても、これまで原一が担ってきた部分をカバーするよう各部が最適化されている。価格は税込23万9800円。ただ、発売が11月20日と12月11日なので、どれだけ今年の出荷台数に反映されるのかは不明。
この他のメーカーについては、ヤマハも来年には新基準原付を発売するという報道があった。具体的にどのようなバイクでいつ発売となるかは不明だが、新基準原付市場にヤマハも参入となれば、来年における原一クラスの動きが活発になることは間違いなさそうだ。
表1と表2に戻るが、軽二輪と小型二輪も原一同様に前年同期比でプラス。軽二輪は4万8470台(同50.58%増)。前年同期は3万2187台とコロナ前である2019年の出荷台数と比べても1万台強も下回り、今年はどうなるのか、そのまま右肩下がりになるのか、あるいは回復基調になるのか、その動きが注目されていた。9月までのところ、50%以上もの増加と非常に好調だ。
自工会のデータでは、どのメーカーが特に好調なのかは分からないが、SNSでよく名前を見る軽二輪クラスのバイクは、やはりホンダの『レブル250』。2017年の登場以来、トップを走り続けているロングセラーモデル。今年は新機構の『E-クラッチ』搭載モデルも発売されている。SNSでは操作に多少の慣れは必要といったコメントを見かけたりもするが、それは決して高いハードルというわけではなく、ちょっと気を付けておけば良い程度のことのようだ。しかし、もともと人気の高いレブルに話題の新機構搭載モデルが追加されたといっても、それだけで50%強の伸びを望むのには無理がある。どのような車種が人気となっているのか、それは本誌で改めてお知らせする。
次に小型二輪。出荷台数は4万2961台(同10.28%増)。2022年、2023年と5万台以上を記録し、昨年は1万台以上の大幅マイナスで4万台を割り込んだが、今年は4万台以上に復帰した。
このクラスで話題といえば、これもホンダだが電動二輪車の『EV Fun Concept(イーヴィー・ファン・コンセプト)』。中型排気量相当のモデルと発表されており、初公開は昨年のミラノショー(EICMA2024=エイクマ)。当時、2025年に発売予定とされており、動向が注視されていたが、9月に新しい動きがあった。ユーチューブのホンダ・モーターサイクル・ヨーロッパのチャンネルにおいて9月2日、『Be the Wind | Honda's First Electric Motorcycle』というタイトルで電動二輪車の動画が投稿されたのだ。
その動画内で「ホンダならではの電動ファンバイクが間もなくやってきます。その楽しさを是非体感してください」と言っており、発売はそう遠いものではないことが感じられたのだが、動画公開から2週間ほど経った9月16日、イーヴィー・ファン・コンセプトの量産モデルである新型電動モーターサイクル『Honda WN1』を欧州で発表。いつ発売というアナウンスはなかったが、発売された時に、ユーザーがどう反応していくのかが楽しみな1台だ。また、今後は電動二輪車を楽しむためのインフラ整備をどうするのかなど、車両本体だけあればいいということでは済まない問題の解決、その進展にも期待したい。
表3は、全国軽自動車協会連合会(全軽自協)が毎月発表している軽二輪と小型二輪の新車販売台数データ。軽二輪は4万8313台(同6.9%増)。出荷台数同様にプラスとなったが、中でもカワサキは7717台と前年同期の約3倍もの伸びを示している。2019年からのデータを見ても、飛び抜けた数字となっている。昨年11月以降、『W230』『MEGURO S1』をはじめとした数々のモデルが発売されており、それらが販売台数に貢献したものと思われる。
特にWやS1はSNSでも女性からの人気が高く、扱いやすいパワーや車格が支持を得ているようだ。カワサキの大幅な伸びが全体にも大きく寄与してプラスとなり、コロナ前である2019年の実績を上回ることとなった。
小型二輪は、出荷台数とは逆にマイナスで、6万3438台(同6.3%減)。軽二輪とは反対で、このクラスではカワサキの減少が響いた様子だ。
さて、全排気量の出荷台数と軽二輪・小型二輪の販売台数だが、コロナ禍で見られた台数の伸びはないものの、コロナ前よりも明らかに落ちているということはなく、同水準、あるいはやや上といった感じだ。前述した新基準原付や電動二輪車に対するユーザーの反応はどうか、それによって、来年の出荷台数や販売台数は大きく違ってくるだろう。それを占う意味でも、二輪だけのイベントではないが10月29日からスタートする(一般公開は10月31日から)、『Japan Mobility Show2025(ジャパンモビリティショー2025)』の二輪展示に期待がかかる。
9月18日に行われた自工会の記者会見において、同イベントで国内二輪4社合同での企画が催されることを自工会副会長の設楽元文氏(ヤマハ発動機代表取締役社長)が発表している。現時点(10月上旬)では、それがどのような企画になるかは不明だが、本誌が発行される頃には、その全貌が明らかになっている。どのようなモデルが展示され、どのような人たちが何に興味を示していたのかについては、月号をあらためてお伝えする。
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