公開日: 2021/04/05
更新日: 2022/09/06
数年前から街中でのバイク駐車場不足が問題となっているが、ここ最近「予約制駐車場」と呼ばれる駐車場が急速に増加し、注目を集めている。
この予約制駐車場は、まさにアイデアビジネスと呼べるもの。従来の駐車場とは全く異なる仕組みなのだ。中でも最近、特に大きく業績を伸ばしている「akippa」「特P」の2社について紹介する。
予約制駐車場を運営する会社はここ数年で急増している。ベンチャービジネスとして起業したケースや、駐車場事業者が取り組み始めたケース、携帯電話大手が参画したケースなど、多種多様で市場はどんどん開拓されている。
一般社団法人シェアリングエコノミー協会の試算によると、予約制駐車場を含むスペースシェアリング・ビジネスの国内市場規模は、2018年度が5039億円、2025年度には1兆922億円に拡大すると推計されるなど、急成長のビジネスなのだ。
基本的な仕組みはこうだ。まず、地主(企業・個人)が土地活用の目的でスペースを提供し、駐車場運営会社が駐車希望者(利用登録者)の予約を受けて、そのスペースを時間貸しもしくは日貸しするというもの。利用者は、駐車の予約も料金の決済もスマホやパソコンの画面操作で行うため、駐車場で管理者に会うことも精算機で支払いをする必要もない。
多くの場合、月極め駐車場や事業所の敷地の空きスペースを一時的に予約制駐車場として貸し出すことがほとんどだが、なかには個人宅の敷地に駐車を受け入れるケースや、家主が出かけている間に空きガレージとして貸し出すケースなどもある。ただし、そうしたケースの場合、看板などの表示がないことも多いため、利用者は予めどんな駐車スペースなのかをサイトで確認したうえで予約する必要がある。
業界大手の「akippa」は、予約制駐車場ビジネスの黎明期とされる2014年4月に事業を開始し、急成長を続けている。利用登録者は、2020年10月現在で累計200万人に達し、取り扱い駐車場数は全国で約4万ヵ所を越えている。このうちバイクの駐車が可能なところは、全体の7割ほどだ。
akippa株式会社 広報グループの石川絢子さんは、貸し出し状況について次のように説明する。
「当社の予約制駐車場はスペースを貸すという考えなので、基本的にはクルマの駐車枠にバイクもとめられます。料金は原則的にクルマもバイクも同一。土地のオーナーによっては、バイクはNGということもありますが、逆に、狭い土地を活用したい場合など、バイク専用で貸し出しているオーナーもいます」
駐車料金はオーナーが決めており、日によって変動することもあるという。
akippaで豊島区の「池袋駅」周辺でバイク駐車場を検索すると、akippaの駐車場は駅付近に点在するだけではなく、全体に広がっているのが分かる。
「駅付近など、駐車場があるエリアならその施設を利用すれば良いワケですが、その場に行ってみたら満車ということもある。でも駐車場が確保されていると安心ですよね。これが予約制駐車場のいちばんのメリットです」(前出・石川さん)
akippaの場合、都内での利用件数のうちバイクでの利用は全体の2割ほどだという。
「バイクで駐車場を利用する方は、通勤目的が多いですね。休みの日や雨の日は駐車場を使わないため、月極め駐車場を契約するよりも安く済むといった話を聞きます。メリットを見極めて、有効に利用されているようです」
「特P」は、カーシェアリング事業を展開する株式会社アース・カーが、2017年9月に開始した予約制駐車場サービス。カーシェアリング事業には駐車場の確保が不可欠なため、独自に駐車場シェアリングを事業化することで、ビジネスに相乗効果を持たせている。
同社運営推進部マーケティンググループの鈴木就亮さんは、次のように説明する。
「目的地付近でコインパーキングを探して駐車する場合、必ずしも満足して利用しているわけではありません。看板の表示が分かりにくく、思った以上に料金が掛かったりすることもあります。特Pは、検索した地図上に駐車場ごとの料金が表示されるので、周辺を比較してより安価な駐車場を予約できるのがです」
バイクの利用状況については、全体の利用数のうち1割程度という。
「基本的にクルマの駐車枠にバイクもとめられるのですが、料金がクルマと同じなので、今後はクルマとバイクを区分できるようにシステムを改良する計画です。料金はそのままで、クルマの駐車枠にはバイクを2台駐車してもOKというようにルールを変更します」(前出・鈴木さん)
特Pのホームページ上には「特Pバイク練習場」というコンテンツがある。これは広い駐車場や空き地を借りてバイクの練習ができるサービス。昨今のライディングスクール人気を受け展開しているものだ。初心者やリターンライダーなど、運転技術を向上させたくても、自由に練習できる場所がないと考えている人が多いところに着眼。特Pで場所を提供すれば需要があるのではないか、と考え開始したという。
「バイクに関して言えば駐車場、練習場といったスペースシェアだけでなく、車両そのもののシェアリングも事業化していくなど、様々な可能性を探っていきます」(同)
では、予約制駐車場は、どの程度のメリットがあるのか。実際に確認してみた。まず、新宿区の四ツ谷駅周辺と文京区の江戸川橋駅周辺で、予約制駐車場の有無について検索。この二つの区域は、いずれもライダー泣かせのバイク駐車場ゼロエリアとされている地域だ。
四ッ谷に関しては、akippaによる検索で、駅から直線距離で270m離れた住宅地に、バイクの受け入れ可能な駐車場が見つかった。細い路地に面した瀟洒な住宅のクルマ駐車スペース。バイクならゆったり駐車できる。料金は1日1980円とバイク駐車場としては高いが、15分単位(132円)で借りられるので、必要な時間だけ利用することもできる。
江戸川橋では、特Pの駐車場がヒットした。駅から少々遠いが、直線距離で460mの場所。スマホで事前に検索し場所は確認していたが、民家の玄関前のスペースが駐車場所。料金は曜日によって変動するが、半日で390〜690円とリーズナブルな価格設定となっている。
予約制駐車場は、土地オーナーにとっては駐車機材などの初期投資がいらず、気軽に始めていつでもやめられるメリットがある。また、街なかに駐車場が少ないバイクユーザーにとって、あらかじめ駐車場を確保できる安心感はことのほか大きい。いまのところバイクをとめるにはやや料金が高いが、利用者が増加することで内容が充実し、これからのバイク駐車場のスタンダードになる可能性は十分にあるだろう。
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