公開日: 2021/07/29
更新日: 2022/09/06
警察庁は6月28日、「『車両区分を変化させることができるモビリティ』について」という通達を発出し、7月1日に公表した。これまで、原付一種の電動モビリティは、電源をオフにしてペダルを漕いで進んでも、電源オンにしてスロットル操作で進んでも、道交法上の扱いがどちらも原動機付自転車だった。しかし、この通達以降、特殊な機構を取り付けた車両は、自転車と原動機付自転車、相互の車両区分切り替えが可能となった。その機構を持つ装置が、glafit株式会社の「モビリティ・カテゴリー・チェンジャー」だ。
原付一種相当の、ペダルのついた電動バイクに乗っていたとする。この電源をオフにして、ペダルで進めば『自転車』になるかというと、そうではない。道交法上では、原動機付自転車のままだ。
その理由は、『車体の構造が原動機付自転車から自転車に切り替わるわけではなく、原動機付自転車という属性は変化していない』からである。
現在、スロットル操作で走れる電動バイクとして、電源を切りペダルを漕いで自転車のようにも使えるという電動モビリティは数多い。しかし、そのほとんどは『自転車のようにも使える』にとどまる。ペダルを漕いで進む時も、扱いは原動機付自転車なので車道を走らなければならず、自転車専用道路や自転車レーンを走ることはできない。それでも自転車のように使うことはもちろんできるので、2ウェイ(電動バイクモード、自転車モードのほか、電動アシストモードを加えれば3ウェイ)で使えるのである。また、2ウェイ・3ウェイの使い方ができるということだけでも、十分に便利な乗り物だと言える。
それをさらに一歩進める機構が、電動モビリティの開発から製造・販売を手掛ける、和歌山県和歌山市のglafit株式会社(以下、グラフィット)が開発した「モビリティ・カテゴリー・チェンジャー(以下、モビチェン)」だ。先ほど、『そのほとんどは』と書いたが、このモビチェンを装着することで、原動機付自転車から自転車へ、あるいは自転車から原動機付自転車へと、道交法上の車両区分を切り替えることが可能になる。このような機構は、モビチェンが初めて。電動モビリティの新たな一歩が記されたことになる。
車両区分を切り替えられるモビチェン自体は、昨年10月に発表されており、その後の動向が注目されていた。そして、この6月に新しい動きがあった。6月28日付で警察庁から警視庁交通部長や各道府県警察本部長宛に、「『車両区分を変化させることができるモビリティ』について」という通達が発出され、7月1日に公表されたのだ。
グラフィットはこれを受け翌7月2日、東京都千代田区内のオフィスビルで記者会見を開催。モビチェンの開発にあたり、『新技術等実証制度(規制のサンドボックス制度)』に和歌山市と共同申請し、同市内で実証実験を行った。このことから、記者会見には、グラフィット代表取締役の鳴海禎造氏のほか、和歌山市長の尾花正啓氏、内閣官房・成長戦略会議事務局・規制のサンドボックス制度・政府一元窓口・参事官補佐の萩原成氏も出席。
この席上、尾花市長は次のように語った。
「自転車と原動機付自転車、1つの車両で2つのモードが実行できるというのは大きな変革だと思います。自転車と原動機付自転車には、法的に大きな壁がありますが、2つのモードが使えることによって、今まで走れなかった空間が走れるようになり、行けなかったところに行けるようにもなる。自転車モードなら、公共施設等にも自転車として駐輪できる。極限のシームレスだと思っています」
モビチェンの販売はまだだが、いつ頃になるかをグラフィットに聞いた。
「今、量産の準備をしておりますので、秋頃にはお届けできると思います。最初はGFR‐02のオプションとして販売します」
GFR‐01については、モビチェンをつける前提で開発されていないため、GFR‐02用の発売後、装着用の追加パーツとともに発売する予定だという。価格についてはまだ未定だが、鳴海社長によると、「オプションとして多くの方に選んでいただける価格になる」とのこと。また、今後はモビチェンを標準装備したモデルの開発も視野に入れている。
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