公開日: 2020/06/23
更新日: 2022/08/26
CBR1000RR-R Fire Blade /SP(以下、RR-R)は、「“TOTAL CONTROL” for the Track(トラックで本領発揮するマシン)」を目標に開発され、MotoGP ワークスのマシンであるRC213V で培われた技術が注ぎ込まれたスーパースポーツモデル。プロダクションレースのベースマシンとしての使用を前提に、様々なレギュレーションへの対応が行われている。
RR-Rは、新設計の水冷4ストロークDOHC4バルブ直列4気筒999㏄エンジンを搭載。吸排気システムを併せて、最高出力160kW/14500 rpmを発揮する。等間隔爆発を起こす同エンジンは、高出力かつコントローラブルな出力特性と、完成車パッケージングの自由度確保のために採用されたもの。クランク軸からメイン、カウンターとの各軸間を詰め、エンジン前後長の短縮を図ったことで、トラック走行をメインに想定した高い運動性能を実現した。
車体は、トラックにおける操縦性を追求した車体パッケージングとなっている。高い制動性能とリアトラクション性能を提供するために、安定感を与える車体諸元や完成車部品の構成変更などが行われている。また、全面投影面積の拡大を抑え突起物とならない形態に、ダウンフォースを効果的に発生させるウイングレットを装備。これにより、加速時のフロントリフト抑制とブレーキング時の安定感を向上させている。
制御・電装は、マシンの持つ性能を引き出しやすくするために、トラックでの使用を考慮し、より意思に沿った車体挙動と車体情報を提供することでライダーをサポートする。また、パワー、エンジンブレーキ、Hondaセレクタブルコントロール、ウイリー挙動緩和制御、加えてSPでは電子制御サスペンションの制御レベルを一括で切り替えられるライディングモードを搭載。トラックに合わせたセッティングを容易にするため、各パラメーターの制御レベルの組み合わせにより構成される3種類のライディングモードすべてが個別設定できる。ライディングモードは5段階のパワーモード切替、3段階のエンジンブレーキモード切替が採用されている。
2020年モデルより名称にRが追加され、Rが3つとなった。この3つ目のRは、なぜ付けられたのだろうか。また、何を意味するのだろうか。これらについて、RR-Rの開発責任者である、ホンダ二輪事業本部ものづくりセンター完成車開発部完成車統括課の石川譲さんは、次のように説明する。
「今回、走る主軸をライディングからトラック(サーキット)に移したことで、クルマの性格が少し変わりました。これを受け、コンセプトチェンジを名前で表現するために、いままでのRRに『レース』を意味する『R』を付加したのです」
なお、ユーザーの多くが気になっている呼称についてだが、正式には私たちが連呼していた「トリプルアール」ではないという。このことについて、同氏は、「正式な呼称は、CBR1000RR-R(アールアールアール) Fire Bladeです。“TOTAL CONTROL”という、いままでのFire Bladeの持っていたコンセプトは変わっていません。ただ、レースに特化しているので、RRはレースに使うという意味でそのまま残して、あと一個付加したというのが意味合いです」と述べる。
レースに勝てるポテンシャルが注ぎ込まれたRR-Rの魅力について、石川さんと二輪事業本部ものづくりセンターパワーユニット開発部動力研究課の出口寿明さんは、「出力にはかなりこだわっています。218馬力くらいの高い出力を発揮するので、公道ではなく、是非トラックで走行して、楽しんで頂きたいです」と語る。
日本への導入時期や販売価格について、RR-Rに関する情報が徐々に公開されており、1月14日にはHRC(株式会社ホンダ・レーシング)が、ロードレース競技およびサーキット走行専用モデルのCBR 1000RR-R/SPレースベース車(欧州仕様)を発売すると発表。第1次ロットは35台限定で販売されることとなった。「レースに勝つ」というホンダの本気具合が窺えるマシンの登場により、来年以降のレースの展望が面白くなることは間違いないだろう。
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