公開日: 2020/06/25
更新日: 2022/08/26
第1回目の鈴鹿から、早くも7回目を数えたBLF(BIKE LOVEFORUM)。今年の開催は山梨県。9月27日、甲府市内のベルクラシック甲府で「第7回 BIKE LOVEFORUMinやまなし」が開催された。テーマは『セーフティーライディングで自然を楽しもう』。
今年はBLF関連企画として、山梨県内をバイクでツーリングすることで山梨の魅力・バイクの魅力を体感できる 「セーフティーライディング やまなし ツーリングキャンペーン」を開催。BLFの盛り上げや認知度向上に大きく寄与した。 BLFへの参加者は例年同様、経済産業省、自工会をはじめとする開催実行委員会の他、一般参加者、マスメディアなど総勢300名が集まった。
フォーラム開始時間の13 時、最初に経済産業省自動車課の河野太志課長が挨拶に立った。
「2014年に二輪車の産業政策ロードマップを作ったが、国際環境に目を転じると、二輪も四輪も足元では米中、日米関係が不透明さ、不確実性を増している。国内ではサプライチェーンや販売体制をどう維持していくのか、という課題もある。電動化・自動化など大きな技術変革の波が押し寄せるなか、この10年間は市場が直結していなかった。産業政策の全体像については、新時代戦略会議という会を立ち上げ、4月に政策戦略を打ち出した。そこでは電動化や「MaaS」(マース=自動走行)について議論している。会議には二輪業界関係者だけではなく、社会システムを設計する側の人など様々なプレーヤーが加わり、システムとしての競争力をどう高めていくのか、という議論をスタートしている。なかでも二輪問題は重要な要素の一つ。5年先、10年先も、日本が世界のバイク産業をけん引していくためには、しっかりとした国内産業を作ることが求められる。そのために知恵を絞っていく」
次に二輪車産業政策ロードマップの取り組み状況の進捗について、経済産業省自動車課の高橋一幸課長補佐が説明を行った。主な項目は以下の通り。
①「安全・安心な二輪車の醸成
②社会との共生実現
③社会基盤の整備
④免許制度の見直し
⑤快適・楽しさの訴求
ロードマップ進捗状況説明の後は、日本大学稲垣具志助教の進行のもと、パネルディスカッション1部「やまなしを楽しくセーフティーライディング」が行われた。まず山梨県の交通安全対策の事例を紹介。その中で、国道413号線(道志みち)では、ツーリングライダーに重点的な安全啓発を実施しており、高校生の原付保有率が全国トップクラスであること、安全運転教育の充実が重要であることを指摘した。
伊豆スカイラインで10年前から行われているという安全啓発活動に関する説明では、ツーリング中、最も多いのは40〜50代のライダーの事故。周囲への気配りによる自制心が大切、との主張を展開した。
続いて「三ない運動」を撤廃した埼玉県の事例を紹介。結果的に隠れてオートバイに乗る生徒がいなくなり、オープンな形で安全講習が実施できるようになった、という事実を紹介した。 最後に来年、道志みちでオリンピック・パラリンピックの自転車競技が行われることを紹介したうえで、開催地での事故を撲滅し、山梨から世界に向けてライダーの高いモラルを示したい、と意欲を語った。
続いてトーク対談「新時代令和 これからのバイクデザイン」が行われた。参加者はモーターマガジン『オートバイ&RIDE』編集長の松下尚さん、フィギュア原型師の美環さん、川崎重工業モーターサイクル&エンジンカンパニー技術本部デザイン部 部長の福本圭さん、本田技研工業二輪事業本部ものづくりセンター 技術主事 デザイナーの澤田琢磨さん。松下さんの軽妙洒脱な司会によりトーク対談は進行した。
中心となったのは、両名のデザイナー。「ヨーロッパの二輪メーカーには高いブランド力があり、クォリティの高いデザインにこだわっている。今後は国内の二輪メーカーも、さらに自社のブランドを強く意識したデザインが求められるようになる」と福本さん。
一方、澤田さんは、「平面のスタイリングを描くことだけがバイクデザインではない。何を作るのかを明確にし、そのコンセプトを実現するのがデザイナーの仕事」と持論を展開した。
フィギュア原型師の美環さんは、「私がバイクに乗ったのは、アニメの影響。サブカルチャー的にもカッコいいバイクを、これからも作り続けてほしい」とリクエスト。
最後に進行役の松下さんは、「新しいデザインは新しい価値観やストーリーからしか創造されないが、そうした内容が伝わって来るトークだった」と有意義なディスカッションだったことを強調した。
続いてパネルディスカッション2部「女性ライダー「新時代令和 これからのバイクデザイン」を増やすために」。テーマは「女性ライダーの活躍に期待」。女性ライダーを増やすための施策や女性ライダーが業界に求めることを中心に意見交換した。
まず、パワーポイントで1970年代から現在に至るまでの女性ライダーの歩みを紹介。アパレルの変遷、遊び方の変化などについて紹介した。続いて、女性ライダーを増やすためにはどうすれば良いのか、にポイントを絞り意見交換。
二輪業界で働く女性の労働環境が整えば、女性ライダー自体が増える、といった意見や、ビギナーライダーの方からは、足付き性を重視するので、シート高のオーダーが出来るといい、といった意見。さらには、ドライブレコーダーの装備の必要性に関する意見も出された。また、バイクには安全に乗れる、という納得性があれば、女性ユーザーはさらに増えると思う、と非ユーザーとしての視点での意見も出た。
今回のBLFについて、自工会二輪車特別委員会の日髙祥博委員長(ヤマハ発動機 代表取締役社長)が総評を述べた。
「ロードマップの進捗説明では、パブリックに発信していく我々の力が十分ではないと感じた。日本には四大メーカーがあり素晴らしい文化が根付いている。それを活性化する努力を行っているということについて、様々な角度からもっと発信すべきだ。『山梨を楽しくセーフティーライディング』で思ったのは、バイクの事故を起こすのは、主に40〜50代の中年男性である、ということ。若いユーザーは、渋滞路でも車列をキッチリ守るなどマナーがいい。スーッとすり抜けていくのは年配者。我々がセーフティーライディングを示し、それこそがカッコいいライダーなのだということを啓蒙していくべきだと感じた」
「一つ嬉しいことがあった。埼玉の三ない運動撤廃の後、高校生を対象に安全運転教育が開催されだが、講習終了後、受講者のうち十数名が夏休みを利用し原付免許を取得した。こういうところからすそ野を広げていきたい。『新時代令和、これからのバイクデザイン』については、バイクの品質や性能での差別化が難しくなっているなかで、大切なのは、各々のブランドの「らしさ」をどう表現するか。今後はモノ作りの背景やブランドの持つストーリーを反映することが大切。『女性ライダーの活躍に期待』については、足付き性の重要度を再認識した。ドライブレコーダーに関しては、二輪は四輪以上に必要。交通事故で被害者になりやすいのは二輪。自分を守るためにも必要だ。今回は全体を通してポジティブな気付きが多かった。様々な視点から意見を貰い、業界全体が発展していく。そのためにBLFは存在しているのだと思う」
最後に全国オートバイ協同組合連合会の大村直幸会長が閉会の辞を述べた。
「BLFは経済産業省が音頭を取り、二輪業界団体と地方自治体が一体となり進めてきたもの。活動成果の報告がなされたが、駐輪場問題については、残念ながら大きな進展は見られなかった。100万台という新車販売台数については、過去の台数を見ても、大きく増える可能性があるのは50㏄しかない。125㏄は微増だが、アジアの排気量水準が上がると(125㏄は世界標準でなくなり)125㏄は日本だけの商品、という時代が迫ってくることも考えられる。50㏄は保有台数の多い国民の足。これに乗ってもらう環境をどう作るか。電動にシフトしても、おそらく状況は同じ。意見交換を重ねていきたい」
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