公開日: 2025/10/27
更新日: 2025/10/27
宅配便業界では現在、深刻なドライバー不足による過重労働や運送コストの増加などが問題となっている。コロナウイルスの感染が拡大した2020年以降、家から買い物ができるネット通販の需要が高まり、宅配便の利用者が急増。国土交通省の調査によると、2019年度は43億2349万個だったが、それ以降配達物の数は増え続け、2024年度は50億3147万個となっている。
このように利用者が増加している宅配便だが、再配達件数も多い。今年4月に実施された調査では、大手3社の合計宅配数の再配達率は9.5%と、荷物全体の約1割を占めており、配達員の負担はかなり大きいことが判明。また、オートロック付きマンションへの配送は、指定場所に荷物を届ける「置き配」ができず、再配達が多くなってしまっていた。
そこで、ヤマト運輸や佐川急便などは、荷物の伝票番号を機器に入力することでオートロックを解錠できるシステムを開発。現在は各管理組合の同意のもと、2万棟以上のマンションで活用されており、実際にヤマト運輸での再配達は減少しているという。
すでに一部のマンションで導入されているオートロック解錠システムだが、国交省は9月16日、配達の効率化を図るため同システムの共通化を支援することを発表した。今後、共通システムの開発費用を補助していき、遅くとも2026年度には同システムを導入したい、との考えを示している。
国交省がオートロック解錠システムの共通化を支援するなか、SNSでは防犯面に対する不安の声が挙がっている。オートロック付きマンションは、入居者以外の出入りが難しいというセキュリティの観点から人気の物件。そのため、配達員の出入りが増加することにより、不審者の侵入リスクを高めてしまうとの懸念から、導入後の防犯面を不安視する声が後を絶たない。
これほど国民がシステム導入を危惧するのは、8月20日に起きた殺人事件が関係している。これは、神戸市のオートロック付きマンションに住む女性が殺害されるという痛ましい事件。犯人は、入居者の後を付けてオートロックを通過する「共連れ」という手口でマンション内に侵入しており、過去にも同様の手口で犯罪行為に及んでいたことが判明。このような事件があったことから、オートロック付きマンションに対する防犯意識が高まっている。
国民の不安が募る中、中野洋昌国土交通相は9月16日の閣議後記者会見で、SNSに投稿されている、ある内容について真っ向から否定した。それは、配達員が配達時以外でも自由にオートロックを解錠できる仕組みを導入する、というもの。これについて事実無根であると言明した。あくまで、セキュリティの確保や、宅配企業間での連携促進を検討しているもの。今後は、各企業で異なるシステムの共通化を支援して、利便性の向上を目指すとしている。
再配達削減のためには、政府だけでなく国民自身が理解を深めることが重要だ。もし荷物の受け取りが難しい場合は時間を指定するなど、再配達を減らすという一人ひとりの意識が求められる。
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