業界トピック

【飯村武志】元インダストリアル・デザイナーのアーティストが描く、モーターサイクルの新世界

公開日: 2026/04/09

更新日: 2026/04/13

GKダイナミックスでヤマハのオートバイをデザインしていた、アーティストの飯村武志。金属版に美しく描かれるのは新しくも懐かしい、精密なエンジン造形である。

機構やメカニズムを可視化したイメージを表現したい

アーティストの飯村武志さんは、2025年3月まで、ヤマハのオートバイデザインで知られるGKダイナミックスに在籍していた。1990年に入社してから34年、プロジェクトに関わった機種は20以上に上る。代表モデルは普通免許で乗れるクルーザーとして女性にも支持されたXVS400ドラッグスター、4気筒の本格ツアラーとして欧米でも活躍したFJR1300、そして2007年の東京モーターショーでハイブリッドエンジンを搭載した四輪モーターサイクルTesseract(テッセラクト)である。傾斜しながら旋回するこのコンセプトモデルは、ヤマハブースの中で最も人気を集めた。

これらの機種にも見られるように、飯村さんの担当はオン・オフ等のジャンルを問わない。GKダイナミックス、つまり美しいヤマハ製品の屋台骨を支えてきた、第一線のインダストリアル・デザイナーであった。

そんな飯村さんが2025年3月にGKダイナミックスを退社。アーティストの道を歩み始めた。「コンピューターにより、様々なものがブラックボックス化したこの時代。機構やメカニズムを可視化したイメージを表現したい。様々なパーツのエンジンはメカニズムの魅力に溢れている」と自己紹介文で述べている。

主なる作品は金属版にエンジンを描いたものが多い。金属にあえて金属部品の集合体を描くという手法…。描かれたエンジンは古き良き時代の4サイクルエンジン。しかし何処か意思を持つ生き物のような、有機的な雰囲気を漂わせている。

「精密なエンジンイラスト」を描き込むには、緻密さと、内燃機に対する造詣がなければ不可能である。図面としての正確さと美の融合。これは言葉にすれば「機能美」と呼ばれるものであるが、オートバイを問わず現在の工業製品全てが「使い捨て文化」の濁流で失いつつあるのだ。

機能美に溢れ、機械としての繊細さと永遠の命を授けられたかのような、飯村さんの描くエンジン。それはまるで我々への「原点回帰」のメッセージのようだ。飯村作品が今なおライダーに支持されるのは、デザイナー時代からのオートバイへの変わらぬ愛情が創作の源泉にあるからに違いない。

インダストリアル・デザイナーからアーティストへ。販売目標もコストも排ガス&音量規制もコンピューター制御も介在しない、「自由なモーターサイクル」が、飯村武志のアートの世界で育まれようとしている。

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