公開日: 2021/04/30
更新日: 2022/09/06
近年、脱炭素社会の実現に向け、クルマとバイクの電動化の動きが加速している。昨年12月8日には、小池都知事が都議会で「都内で新車販売される乗用車を2030 年までに、二輪車を2035年までに、100%非ガソリン化することを目指す」との方針を表明したことで話題となった。こうした中、日本では自動車メーカーのほか、電池や材料メーカー計23社と15の大学や研究機関が協力して、クルマとバイクの電動化の将来を大きく左右する″あるモノ〟の開発に力を入れている。全固体電池だ。
全固体電池とは、リチウムイオン電池に代わり電気自動車やバイクへの搭載など、実用化に向けた研究が進められている次世代の電池。電流を発生させる「電解質」がリチウムイオン電池は液体なのに対し、全固体電池は固体であるため、こう呼ばれている。
リチウムイオン電池に比べ液漏れや蒸発の可能性が低いため発火の恐れが少なく、また温度・湿度・気圧などの変化による不具合も生じにくい。そのため、劣化しにくく、高い安全性と丈夫さを誇っており、宇宙をはじめとするあらゆる環境での使用も見込まれている。他にも、液体の電解質では不可能な電池本体を折り曲げたり、大きくしたり小さくしたりなど、使用する電化製品に合わせて自在に変形することができる。そのため、デザインに縛りがないことも特長となっている。
注目すべきは、リチウムイオン電池よりもエネルギー密度が高いため高出力を発揮でき、また安全性も高いことから、急速充電による充電時間の大幅な短縮が可能な点。現在、電気自動車に使われているリチウムイオン電池は、航続距離に限界があり、価格が高くなる要因となっている。つまり、上記の特長を持つ全固体電池を搭載することで、これらの課題を解決できるのではないかと見込まれているのだ。
実用化に向けトヨタは、2017年の東京モーターショーで「20年代前半には全固体電池を搭載した自動車の商品化を目指す」と表明。2020年4月1日にはパナソニックとの合弁会社を設立し、積極的に開発を行っている。
現時点では優れた固体電解質が開発されておらず、量産技術も確立されていないため、本格的に使用されるまでには至っていない。けれども、全固体電池がクルマやバイクに搭載されるようになれば、いままで以上にEV・HV・PHV車は普及することになるだろう。また、上記の特長を踏まえれば、スマホやパソコンなど身近にある電子機器の電池が、全固体電池に変わる日が近い将来訪れても不思議な話ではない。
全固体電池が量産可能となった際には、私たちの生活がより快適になることは間違いないだろう。ただ、いくら電池が進化しようとも、それを補う電力供給体制が整っていなければ元も子もない。全固体電池とそれを取り巻く社会のこれからに注目だ。
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