公開日: 2021/10/27
更新日: 2022/09/06
第6波が懸念される新型コロナウイルス。現在も様々な産業に甚大な被害をもたらしている。ダメージが大きいのは自動車業界。トヨタは全世界における11月の生産台数を100万台で計画していたが、85〜90万台にとどまることを10月15日に発表した。この主な原因となっているのが、「半導体不足」。そこで今回は、なぜ半導体が不足しているのかについて見ていく。
半導体とは、人間でいう「脳」のような機能があり、スマホやパソコン、洗濯機といったあらゆる電子機器の動作を制御するための部品。インターネットや電車運行システム、銀行ATMなどといった社会インフラに至るまで、様々な分野で活用されている。ちなみに、バイクではABSやトラクションコントロールなどの制御のために搭載されている。
このように、私たちの生活に欠かせない半導体だが、世界中で不足している背景には、コロナウイルスの蔓延が大きく関係している。半導体メーカーは、コロナ禍の影響によって経済が停滞すると予想。それに伴い需要が少なくなると考え、生産や設備投資を抑制した。けれども、昨年の4月頃からテレワークや巣ごもり生活によってパソコンやテレビ、冷蔵庫といった電子機器の需要が急激に増加。9月以降には自動車産業の急速な回復もあり、あらゆる業界からのニーズが拡大し、仕入競争が生じたのだ。
また、運の悪いことに、昨年から今年にかけて日本の半導体メーカー大手の「旭化成エレクトロニクス」と「ルネサスエレクトロニクス」の工場で火災が発生。供給不足に拍車をかけることとなった。
これらの結果、発注から納品までにかかる時間(リードタイム)が延長。半導体を製造するまでには400~600にもおよぶ作業工程があり、リードタイムは通常でも6~9週間と言われている。ところが、アメリカのサスケハナ・フィナンシャル・グループが9月22日に発表した調査によると、8月は約21週間にまで長引いているという。このようなコロナによる需要の急拡大と供給体制のひっ迫が、半導体不足の主な原因となっているのだ。
ちなみに、現在も減産が発表されている自動車産業については、生産拠点である東南アジアでコロナウイルスの感染が急拡大したことにより取引工場の稼働率が低下。半導体不足と合わせて部品の調達難が続き、モデルによっては納車まで半年待ちという状況が発生している。
現在、日本の半導体生産シェアは世界の10%程度で、最先端の製品は大半を海外に依存している。この状況を踏まえ経済産業省は6月4日、「半導体戦略」を発表。海外の企業と連携して、国内に工場を増やす考えなどを打ち出した。けれども、新設には約2年、費用は数億から数百億円以上かかるとも言われている。需要があるからといって、供給をすぐに上げることは難しいのだ。
不足状況がいつ回復するのかといった見通しは立っていない。けれども、いかに半導体が重要な存在であるかを多くの人が実感しているはず。この部品がなければ自動車を運転することも、写真を共有することもできないのだ。半導体はデジタル社会の原動力となっている。
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