公開日: 2021/11/29
更新日: 2022/09/06
ガソリンの値上がりが止まらない。「石油情報センター」が11月17日に発表した、同月15日時点のレギュラー1ℓ当たりの全国平均は168・9円。2021年1月4日時点の価格が136・4円であったため、今年に入ってから32・5円も上昇していることになる。なぜ、ガソリン価格は長期間、値上がりし続けているのだろうか。2014年以来、約7年振りに高値水準となっているガソリン価格。ここで、過去2年間における小売価格の変動を簡単に振り返ってみよう。
2019年末には147~8円であったが、年始にかけて値上がりし、2020年1月6日時点の全国平均は150・1円を記録。けれども、そこから価格は軟調化し、同年5月11日には124・8円にまで下落した。その後、再び価格は上昇するものの、年内は133~135円台にとどまっていた。だが今年に入ってからは、ほぼ毎週1~2円の値上がりが続き、現在は170円目前にまで上昇している。
この要因は、コロナ禍によって原油の需要環境が大きく変化したところにある。新型コロナウイルスの感染が拡大した昨年4月頃より経済活動がストップし、需要は急激に減少。原油が余ってしまったことで原油価格は急落し、産油国は大打撃を受けた。その後、ワクチン接種が進んだことから世界経済は再び回り始め、石油需要が急増したことにより、小売価格が大幅に上昇した。
長期間供給不足が続いているため、日本やアメリカは産油国に対し、大幅な増産を行うように要望している。けれども、サウジアラビアやイランなどのOPEC(石油輸出国機構)加盟国と、ロシアやメキシコなどの非加盟国で構成され、原油の生産量について話し合う「OPECプラス」は10月4日、今後の計画を発表。現行の日量40万バレルペースで産出量を増やすことに同意したものの、原油需要の先行きは不透明だとして、大規模な増産要請には応じなかった。
産油国の多くは原油販売が国家収入の大半を占めているため、先物価格が下がれば下がるほど利益を出すことができない。そのため、コロナ禍の急落を踏まえ、慎重な姿勢を取り続けているのだ。
この他、11月中旬時点で1ドル114円台という円安もガソリン価格の値上がりに追い討ちをかけている。なぜなら、原油の決済はドルで行われるためだ。
こうした状況を受け政府は11月16日、ガソリンの値上がりを防ぐために、石油元売り業者への補助金を検討していると表明。全国平均が170円を超えた場合、元売りに対し1ℓ当たり最大で5円支給するというものだ。
原油価格の上昇はガソリンだけでなく灯油や重油、さらにペットボトルやプラスチック製品などの価格にも影響を及ぼしている。そのため、日常生活への懸念も高まりつつある。
コロナ禍による影響とはいえ、ガソリン価格の高騰は、輸入に依存しきっている日本の脆弱な一面を図らずも露呈したカタチと言える。
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