公開日: 2020/06/22
更新日: 2022/08/26
電動バイクの普及に向けて、さいたま市と二輪車メーカーが協力して取り組む第4期の実証実験(利用モニタリング)が昨年10月に終了した。その結果について、さいたま市の担当者に話を聞いた。
この実証実験を行ったのはさいたま市とホンダ、ヤマハが組織する「電動二輪車実証実験推進協議会」。2017年2月に発足し、これまで4期にわたる実験を通じ、電動バイク普及の可能性を探ってきた。具体的には、市民から希望者を募り電動バイクを有料で貸し出し、一定期間利用してもらい、使用頻度やバッテリー交換の回数などをチェック。 車両の実用性や使用感についてヒアリングするなど、普及促進へのヒントをあぶり出そうという試みだ。
さいたま市 未来都市推進部環境未来都市推進担当の神田修さんと嶌田研人さんによると、第1期モニター25人のうち50%が電動バイクを『ほぼ毎日利用』し、32%が『平日のみ利用』、18%が『不定期利用』という状況だったという。そして全体の82%が、「モニターになって便利と感じている」と答えており、電動バイクの導入によって生活の利便性が向上し、満足感を得ているモニターが多いことが判明した。
満足感について詳しくまとめたのがグラフ1で、「移動が楽になった/ 楽しくなった」(62.5%)、「経費の節約になった」( 58.3%)、「自宅〜駅間の移動が楽になった」( 58.3%)などの項目で評価が高かった。 一方、電動バイクの走行性能については全体の55%が、スピードや加速力、1回の充電で航続できる距離(29㎞=30㎞/h定地走行テスト値)などに不足感があると指摘。
嶌田さんは、「バイク(ガソリン車)の利用経験がある人の60%以上が電動バイクの走行性能に物足りなさを感じたようです。しかし、バイクの利用経験がない人については、70%以上が走行性能に不満を感じてないことが分かりました。つまりバイク未経験者は、電動バイクに馴染みやすいようです」と説明する。
そこで実証実験第2期では、過去にバイクの利用歴がない人や女性、学生を中心に募集。16名がモニターとして登録された。実験結果をみると、利用頻度は「ほぼ毎日」が24%、「平日のみ利用」が53%、「不定期利用」が24%。そして「モニターになって便利と感じた」のは全体の88 %と、第1期よりも評価はアップした。
満足感の内容(グラフ2)を見ると、すべての項目で第1期より第2期のほうが肯定的な回答が増え、電動バイクをより好意的に受け止めていることが確認できる。モニター期間を終えた後、実際に電動バイクを購入する人もいた。
「音が静かなところがいいですね。ソフトに走れるという安心感があるので怖くはありません。バッテリーもさほど重くは感じませんでした」
第1期、第2期とも、電動バイクへの評価として、走行性能や航続距離の不足を指摘する声があったため、第3期の実証実験では、2018年11月に発売された原付二種の電動バイク、ホンダ「PCX ELECTRIC」を使ってモニタリングを実施した。バイク利用歴のある30〜50代の男性4人が、3カ月間にわたって利用した。
実験終了後のヒアリングでは、モニターはそれぞれ、「小回りが利いて、使い勝手が良かった」、「交通費の節約になった」と好感触。モニター用電動バイクは1回の充電で41㎞(60㎞/h定地走行テスト値)の走行が可能。自宅から会社までのダイレクト通勤にも問題なく利用することができたという。
嶌田さんは、「原付二種の電動バイクになると、市内の通勤利用であれば航続距離への不安はないようです。外出先で急速充電ができれば、さらに広く使えて便利になるという意見もありました」と話す。
原付一種に加え、電動バイクの原付二種が登場したことは、ユーザーの選択肢を増やす大きな前進になったようだ。
第1期から第3期のモニターテストを通じて、電動バイクの利便性はある程度実証された一方、原付一種には航続距離への不安という課題がまだ残っている。そこで実証実験第4期では、試験車両を再び原付一種のヤマハE‐Vinoに戻し、モニターを10人募集。航続距離への不安をいかに解消するかに焦点を当てて、モニタリングを行った。
新しい取り組みとして、第1期と第2期では指定の駅駐輪場でバッテリー交換サービスを行ったが、第4期では市内に5カ所のバッテリー交換ステーションを設置した。これは、バッテリー切れの不安が緩和され、電動バイクの行動範囲が拡大するかどうかについて検証しするものだ。嶌田さんは次のように語る。
「5カ所のバッテリー交換ステーションは、週に3〜5回利用された場所と、全く利用されなかった場所に分かれました。わずか10人のモニターなので、居住地やバイクの利用用途によって偏りが出たものと思います。ただ、頻繁に使われていたステーションがあるということは、多くの人のニーズに合う場所に設置することで、電動バイクの"息継ぎ"が可能になり、バッテリー切れの不安を払拭できる可能性はありそうです」
神田さんは、全体の成果について次のようにまとめる。
「これまでの実証実験の結果を踏まえると、電動バイクの有用性は認められ、通勤・通学、シェアリングでの利用、配達業務などのビジネスユース等、さまざまな活用が望めそうです。走行性能の不足感など指摘はありましたが、初めてバイクを使う人にとっては、大きな問題ではないものと思います。特に女性や若者には抵抗感が少ないことが分かり、電動バイクを訴求していくヒントになりそうです。最も大きな課題は、電動バイクは価格が高いため、なかなか普及への弾みがつかないこと。バッテリー交換ステーションなどのインフラをどう整えるか、という問題もあります。ここが今後の課題です」
電動二輪車実証実験推進協議会は、実証実験を進める一方、電動バイクを市内の企業に貸し出し、どのような活用が可能かを探る取組みも行っている。
受け入れ企業として挙手したのは、埼玉県さいたま市の自動車教習所「ファインモータースクール」。同校は、経営理念の一つに「クルマと地球環境の共存」を掲げており、エコドライブ教習をはじめ、教習生や地域住民への環境啓発に力を入れている。電動自動車や電動バイクの普及にも積極的に関わりたいと、同協議会への協力を申し出た。
教習所に“配備”されたのは2台のE‐Vinoで、職員が通勤に使用したり、外出の際の足として使用するなど、電動バイクを実際に体験。また、様々なイベントにも車両を活用している。例えば、同教習所で行う一般ライダー向けの走行会や高校生対象の安全講習会でも、積極的に電動バイクを試乗してもらっている。教習所にやってくる地元の小・中学生の社会科見学でもE‐Vinoの人気は高い。
ファインモータースクールの齊藤千絵さんは、
「電動バイクを使ったテレビ番組の影響もあってか、EVinoの認知度・関心度は高いです。小さいうちから電動バイクに触れることで、環境に優しい、という価値感が、広がるでしょう。私自身、E‐Vinoを利用してみましたが、クリーンなイメージがあるので、これなら乗ってみたいと思うし、乗っていても気分がいいですね」
いくつかハードルはあるものの、やはり電動バイクの普及は時間の問題と言えそうだ。
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