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コロナ禍で変わった、ユーザーニーズとバイクに対する向き合い方。2023年はどう動く?

公開日: 2023/01/06

更新日: 2023/01/09

コロナが世界を襲ってから丸3年が経つ。良きにつけ悪しきにつけ、この間に二輪業界は大きく変わった。二輪需要や二輪ユーザーが増えたのは間違いないが、彼らが求めるものや二輪に対する考え方、楽しみ方も変化している。昭和から平成にかけて最もバイクを楽しんだ世代の“バロメーター”では、最近のユーザーニーズを計ることはできなくなっているのだ。

2022年を中心に、過去3年間におけるユーザーの趣向の変化や販売状況の変化、2023年にやるべきことについて取材した。

売上は減ったけど、経常利益は増えています

ZX-25R
ZX-25R

販売店A(新車販売/埼玉県)

「2020年以降、新車の生産遅延により台数が減りました。コロナ以前の2019年の販売台数を100%とすると、2020年は90%、2021年が70%、そして2022年は50%です。ウチはカワサキの専門店なのですが、大型を扱えなくなったので、1台あたりの利幅は小さくなりました。でも、経常利益は前年実績を上回っています。修理依頼が急増したからです」

その理由は、いわゆる”修理難民”の増加にある。修理を頼みたくても、どこも予約がいっぱいで、すぐに対応してもらえない、という人が増えているが、そのような電話を受けた時、同店ではまず断らない。

「片っ端から電話を掛けているんだろうな、というのが電話の感じで分かるんです。修理需要の伸びは、2020年が前年比130%、2021年は140%、2022年はやや下回りますが、1カ月少ない11月末日現在で120%となっています」

2022年1年間で見るとどうなのだろうか。

「2022年はZX-25Rやニンジャ系が普通に在庫できるようになってきました。250TRやバリオスからの乗り換えが多いかな。だいぶ売りやすくなりましたね。最近は、普通二輪免許を持っているのに原付二種を買う、という人が増加しているのも特徴です。この先、サプライチェーンがさらに改善されるだろうし、整備需要も一定数あることが想像できるので、来年は今年よりも、もう少し上向くと見ています」

重要なのはWEBプロモーションです

販売店B(新車販売/東京都)

「ウチはCT125やDAX125、レブル、ロイヤルエンフィールドなどのカスタムを行っていますが、2020年以降はパーツ販売が増えました。よく出るのはPCX125とDAX125のシートです。車両に関しては、代替えや新規購入よりも、いまあるバイクをカスタムして楽しもうという方が増えた印象です」

問い合わせも頻繁にくるというが、面白いのは年齢層によってその方法がハッキリと分かれてしまうところ。40代までのユーザーは、直接的な電話を敬遠する傾向にあり、質問はすべてメールやメッセージなどで済ます。販売は通販。でも、50代を超えると、電話も掛けてくるし来店もする。

「これからの時代、ウチのようなスタイルの商売だと店の立地の良し悪しは関係なくなってくると思います。その分、重要となるのはWEBプロモーション。どれだけ影響力のある人が製品を使ってくれているのかがポイントになると思います」

販売については、こんな話をしてくれた。

「カスタム視点での話ですが、いま、バイクはクルマと同じくダウンサイジングしています。フルスケールは敬遠されるようになってきたので、今年はそれを意識したラインアップにしていきます」

B店の社長は分冊百科と呼ばれる人気雑誌の監修(企画立案)も行っている。とてもシビアで一定期間のテスト販売で売れ行きが低ければ、即刻販売打ち切りだという。つまり何が売れるか、何が求められているのか、という高い情報感度が必要となる。それが販売面においても役に立っているという。

バイクに乗った姿を窓に映してほほ笑む。そんな感じです

YZF-R25
YZF-R25

販売店C(新車・中古車販売/群馬県)

「2022年は販売・整備ともに忙しかったですね。感覚的には2021年の1.5倍ほど仕事が増えたと思います。これにはガソリン価格の高騰も影響しています。通勤でクルマを使っている人でも、5キロ前後の距離なら、ガソリン代を抑えるため原付に変えるよう家族に言われたという人が急激に増えたのです。元々、この辺りはクルマが生活の足。どこに行くにもクルマで、クリーニング屋や病院にもドライブスルーがあるんです。だからクルマを使わずバイクに乗ることが、燃料費の抑制につながるというわけです」

この1年で痛感しているのは、10~20代のユーザーの増加。なかには、店から100キロ以上離れた東京都三鷹市に住んでいるユーザーも顧客だという。

「キャンプツーリングでこっちに来るから、という理由でクロスカブ110を買って頂きました。自宅の近くのバイクショップには行かず、キャンプ帰りには必ずといっていいほど店に来てくれます」

レーサーレプリカも変わらぬ人気が続いている。YZF-R25やCBR250Rが人気だというが、若い世代は40代以上のライダーとはバイクに対する感覚は全く異なる。

「第一はデザインです。カッコいいバイクに乗っている自分がカッコいい。そういった感覚を持っています。ショーウィンドーに映っている自分を眺めてほほ笑む、そんな感じです。バイクは、インスタ映えする写真を撮影したり、美味しい店に行ったりするための道具ですね。でも、カッコいい道具でないとダメなんです。そういう感覚だから、バイクにはおとなしく乗る。刷り抜けもしません」

カッコよさを重視するだけあってか、こだわりは強い。スマホに入っている写真を見せて、この年式のこの色、と細かく指定をしてくるという。

「バイクを探し始めた時、今の若い子をつなぎとめておくには、最低でも週に1回、状況報告をしないとダメです。だからウチでは毎週水曜日に連絡します。でも、それも急ぎでない限りはメッセージです。今後もここはキッチリと守ってやっていくつもりです」

女性ユーザーが3年間で15名増加

CBR250R
CBR250R

販売店D(新車・中古車販売/神奈川県)

「この3年間で女性のお客さんが増えました。コロナ以前は、なぜかほとんどいなかったんです。でもいまは、管理顧客と呼べる女性は15名になりました。彼女たちが乗り始めたキッカケは、ほとんどがYouTubeか職場の同僚や先輩の影響のどっちかですね。選ぶバイクもCBR250RかCT125の二択といっていいほどの人気です」

今年、力を入れようと考えているのは、GEV600というグッドデザイン賞受賞の電動スクーターだ。

「主に年配の女性に勧めています。ガソリン代も掛からないし、価格的にもリーズナブルなので、好評なんです。2023年は従来のラインアップに加え、販路を広げようと考えています」




限られた販売店へのリサーチではあるが、2022年は2021年実績を上回ったという意見が多く聞かれた。販売台数増や修理需要の大幅伸長、商圏やユーザー層の拡大など、店によって内容は異なるものの、マイナスはない様子。

問題は、この先、ウィズコロナ生活が常態化し、かつての日常が完全に戻った時だ。三密を避けて見直された二輪に対する集中が分散することは十分に考えられる。

少し戻したとはいえ、いまだ続く円安、ガソリン高、物価高...。様々な阻害要因がある。今年も細かな変化を見逃がさないよう情報収集を怠らない。これが最大の防御策なのだろう。



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