公開日: 2023/06/29
更新日: 2023/07/04
近年、ドライバー不足が深刻な問題となっている。テレビなどで何度も「2024年問題」が取り上げられているように、物流サービスの供給体制は早急に解決を目指していかなければならない課題となっているが、その対策の1つとして注目されているのが「貨客混載」だ。これは、どのような取り組みなのだろうか。
貨客混載とは、乗客と荷物を一緒に運ぶこと。タクシーや路線バスなどの一部スペースを荷物運搬に利用することができる。また、貨物用ワゴン車に乗客を乗せ、病院などに送ることも可能となるが、この場合は「第二種運転免許」が必要となる。
貨客混載は、自動車運送業の人材を確保すると共に、人流・物流サービスの持続可能性を維持するため、2017年9月より開始した。当時は、「貨物自動車運送事業」「旅客自動車運送事業」、両方の許可を取得すれば、路線バス事業者は全国で荷物を運ぶことが可能。また、トラック、貸切バス、タクシー事業者については、人口が3万人に満たない市町村でのみ運搬ができる、という規制があった。
2020年11月には、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」を改正。貨客混載の手続きがスムーズに行えるようになり、今年2月時点では、14社が取り組んでいる。
このような中、国土交通省は5月30日、過疎地域以外でも需要が一定以上確認できたことを踏まえ、上記の規制を緩和すると発表。貨物・旅客自動車運送事業、両方の許可取得を条件に、6月30日より、トラックや貸切バス、タクシー事業者も全国で、乗客と荷物を一緒に運ぶ“かけもち”ができるようになった。
貨客混載は、公共交通機関の空きスペースを活用するため、人手不足の解消だけでなく、物流コストの削減にも繋がる。実際に、このような取り組みは鉄道でも行われており、JR東日本は6月16日、新幹線を使った荷物の大量輸送サービス実験を実施。青森県内にある車両基地で生鮮食品や生花などを搬入し、大宮駅まで運搬した。
他にも、利用客の少ない日中にタクシードライバーが食品や日用品などを高齢者の自宅に届けるなど、新たな収益の確保も考えることができる。そのため、タクシーや路線バスなど、朝晩の通勤・帰宅ラッシュ以外の時間での活用も見込まれている。
貨客混載には上記のようなメリットがある一方、運搬できる量に限りがあることや、公共交通機関を使用した際に積み替え作業が発生し、到着までに時間が掛かる、といったデメリットも存在する。そのため、どのように活用していくかが今後のポイントとなる。
高齢化や人口減少が進む中、貨客混載が広まっていけば、住民の足を確保することにも繋がる。各地域の公共交通機関事業者には、互いに連携しながらドライバー不足解消への取り組みや、ユーザーの暮らしを支える仕組み作りを行うなど、フレキシブルな対応が求められている。
人気記事ランキング