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【AJ理事長インタビュー】AJ大阪 池淵香次 理事長

公開日: 2023/10/16

更新日: 2023/10/18

2019年、吉田純一前理事長からの後継者指名を受け、2代目理事長に就任した池淵香次理事長。就任当時、前理事長とは違うカラーを打ち出していく、との目標を掲げた。あれから4年、AJ大阪はどのような変化を遂げたのか。課題や問題点について話を聞いた。

吉田前理事長とは違うカラーを出し、いままで以上に組合員に喜ばれる組織を目指していきたい

2019年、第35回通常総会を経て2代目理事長に就任。吉田純一前理事長、大村直幸会長とのワンショット
2019年、第35回通常総会を経て2代目理事長に就任。吉田純一前理事長、大村直幸会長とのワンショット

――― 池淵理事長体制となり、4年が経過しました。これまでのAJ大阪での取り組み内容についてお聞きする前に、池淵理事長の経歴ついてお伺いしたいと思います。まず、二輪業界に入ったキッカケについて教えて下さい。

池淵
 大学卒業後、一般企業に入社しサラリーマンとして働いていました。けれども、父が大病を患ってしまったため1993年、25歳の時に急遽、家業「バイクショップ池(1979年に父の和男さんが創業/現在の屋号はバイクショップIKE)」に就くことになったのです。後継者は私しかいなかったので、いつかは店を継ぐのだろうなと思ってはいました。けれども、父から「後を継いで欲しい」と言われたことはなく、好きなことをさせてもらっていたので、バイクにあまり興味がなく、二輪業界に関する知識もありませんでした。

――― ゼロからのスタートだったわけですね。

池淵
 父と一緒に働いたのは半年で、その1年後に亡くなってしまいました。一緒に仕事をしていた時、父は自分がすぐに働けなくなると思っていなかったためか、経営のノウハウやバイクの整備に関することなどを教えてくれませんでした。そのため、父がいなくなってからは、従業員にサポートしてもらいながら、右も左も分からないまま営業をしていました。その頃から私の面倒を見てくれたのが、吉田前理事長(現・名誉相談役)だったのです。

――― 吉田前理事長とは、どのような経緯でお付き合いされるようになったのでしょうか。

池淵
 私が中学生の頃からなので、40年以上お付き合いさせていただいています。父と仲が良く、よく家に遊びに来ていたので、私にとっては、“吉田のおっちゃん”みたいな存在でした。ただ、私が家業を継いでからは、毎週のように店に足を運んで下さり、「香次、ちゃんとやっとるか。もっとキレイにしたほうがええぞ」とか、うるさいぐらい心配してくれました(笑)。また、商売に関する様々なアドバイスもいただいたので、感謝の気持ちしかありません。

吉田純一前理事長からの後継指名を受諾して理事長に就任

左から5番目が池淵理事長。理事となり、初めて通常総会に出席した時の1枚
左から5番目が池淵理事長。理事となり、初めて通常総会に出席した時の1枚

――― AJ大阪の活動に参加されるようになったのはいつから。

池淵
 元々、私の店は1984年のAJ大阪設立当時から加盟していました。ただ、家業に就いた当初は、組合活動にあまり参加していませんでした。けれども2002年、私が34歳の時に、吉田前理事長から「二輪業界のことを学べるから、組合に勉強をしに来てはどうか」と誘っていただき、参加するようになったのです。

――― 当時の活動内容は。

池淵
 組合活動に参画した当初のAJ大阪には、オークションを担当する「流通委員会」、共同購買を担当する「事業委員会」、経費管理を担当する「総務財務委員会」の3つの委員会があり、私は最初、「事業委員会」のメンバーに入りました。3年後の2005年には、理事に就任。その後、各委員会をすべて担当したのち、2013年に副理事長に就任しました。また、同年には、新たにイベントを担当する「組織広報委員会」が開設。各委員会は毎月1回、話し合いを行っています。

――― 理事長になった経緯は。(ここで、福井二朗専務理事が話に加わる)。

池淵
 AJ大阪は70歳定年制を実施しているので、任期満了となることを踏まえ、2016年頃から吉田前理事長より、「次の理事長はお前やで」と何度も言われていました。そして、吉田さんが理事長を退任され、名誉相談役となった2019年、後継指名を受諾致しました。その後、第35回通常総会を経て、理事長に就任したのです。

――― 福井専務理事にお聞きします。後任に池淵理事長を指名した理由は何でしょうか。

福井
 2代目には、組合員と上手く関係を築くことができ、バランスよく場を回せる人がいい、というのが吉田前理事長の考えです。池淵理事長は、俗に言う“敵がいない人”。池淵さんが副理事長になった頃より、「後任は池淵にしようと思っているんだけどどう思う?」と吉田前理事長から相談を受けていました。前理事長は、かなり早い段階から考えていて、池淵理事長を委員会に参加するように誘ったのも、それが関係しています。

また、もう1つ吉田前理事長が考えていたのは、一気に若返りを図らないといけない、ということです。AJ大阪には多くの事業があるので、短い期間で辞めてしまうと、組合が迷走してしまいます。そのため、最低でも10年は担当してもらわないと困る、と考えていました。

――― 理事長のポストを受けるかどうかについては、かなり悩んだことと思います。

池淵
 正直、自分が選ばれるとも、なりたいとも思っていなかったので、最初は断っていました。ただ、私は現職の理事の中で、福井専務理事を除くと最も理事歴が長く、他の方よりもAJ大阪の歴史を長期にわたり見てきました。その中で、組合員さんが喜んでくれる組合を目指していきたいと、強く思うようになっていったのです。また、父の代から二輪業界で食べさせてもらっているので、この業界のためにできることをしたい、との思いから決断しました。

事業開拓委員会を新設し、レンタルバイク事業をスタート

『バイクの神様 茶ミーティング」で記念撮影
『バイクの神様 茶ミーティング」で記念撮影

――― 理事長になってまず取り組んだことは。

池淵
 理事長に就任した際の挨拶で、「組合員数を300社に増やしていきたい」と話しました。そこで、非組合員の勧誘に力を入れるため、委員会の体制を見直したのです。就任以前は、先ほどお話したように、「流通」「事業」「総務財務」「組織広報」の4つの委員会がありましたが、流通委員会と事業委員会を合併し「事業収益委員会」を開設。そして、新たに「事業開拓委員会」を組織しました。これは、新規組合員の勧誘をはじめ、新たな事業について考えていく委員会です。

――― 現在、組合員数は何社で、就任当時からどれくらい増えたのでしょうか。

池淵
 組合員数は212社(9月現在)、また、オークションだけに参加する「オークション会員」というのがあり、こちらは240社ほどです。就任以降、50店以上訪問しましたが、コロナ禍で思うような活動ができませんでした。また、廃業される方もいたので、現状は微増にとどまっています。非組合員へのアプローチは、これからも力を入れていきます。

――― 池淵理事長自ら、訪問をしているのですね。その際、どのようにAJ大阪の事業について説明を行っていますか。

池淵
 去年からですが、オークションや共同購買をはじめ、共済や労働保険事務代行、レンタルトラックなど、AJ大阪の事業についてまとめた、25ページからなるパンフレットを作成し、説明の際に使用しています。元々、組合の概要を記載したチラシはありましたが、AJ大阪の活動について詳細に記されていたわけではありませんでした。このパンフレットは毎年更新しており、非組合員勧誘の際に使うだけでなく、既存の組合員にも配布することで、組合事業への理解を深めてもらっています。

――― 他に取り組んだことは。

池淵
 先ほどお話しした事業開拓委員会で話し合い、レンタルバイク事業を2021年からスタートしました。組合員であれば、入会金と会費が無料です。例えば、50ccをレンタルバイクとして登録してくれれば、1ヶ月、任意保険込みのシステム利用料3000円のみで利用できます。しかも、1台から登録でき、AJ大阪のホームページ内に自店専用のページを持つことが可能です。また、レンタル事業者扱いになるので、事故で保険会社に請求する際、交渉しやすくなり、値切られる可能性も少なくなります。販売や修理以外の新たな収益源となり、使っていない代車を有効活用できるので、組合員には喜んでいただいています。

――― AJ大阪は2019年から実施している「バイクの神様 茶ミーティング」など、ユーザー向けイベントも開催しています。

池淵
 バイクの神様イベントは、吉田前理事長の頃から組織広報委員会で話し合って決めたものです。昔から組合員より、オークションや共同購買、保険など組合員向けの事業だけでなく、組合員のお客さん向けのイベント等を行って欲しい、という声が多々あり、実現に至りました。また、このようなイベントを開催することで、ユーザーと組合員はもちろん、非組合員にもAJ大阪が様々な取り組みを行っている、というアピールになります。今年は、10月22日に「バイクの神様ミーティング2023 in近江八幡」を開催します。

これからのAJ大阪に必要なのは新規事業を増やすこと

6月に開催された「日本維新の会オートバイ議員連盟総会」に連合会の副会長として出席
6月に開催された「日本維新の会オートバイ議員連盟総会」に連合会の副会長として出席

――― AJ大阪は全国の単組の中で最大の規模を誇り、多くの事業を展開しています。組合をけん引していく上で、最も重要なことは何でしょうか。

池淵
 組合員の声を聞く場を作ることが重要だと思っています。その一環として、組合員が何を求めているのかを知るために、去年より始めたのが「座談会」です。2ヶ月に1回のペースで開催し、私が進行役となり、日頃の商売や二輪業界のことなど、少人数で意見交換を行っています。

――― 2022年には、AJ近畿ブロックの会長、そして連合会の副会長にも就任されました。かなり忙しい日々を送られているのでは。

池淵
 大村会長ほどではないです(笑)。AJ大阪は事務スタッフとして、社員とパート合わせて10人以上を雇っています。これは他の単組にはない特徴です。委員会の準備をはじめ、資料や議事録作成などを行ってくれるので、そこまで負担が掛かりません。本当に助かっています。

――― 池淵理事長体制となり5年目を迎えています。現在のAJ大阪に必要と感じることは何でしょうか。

池淵
 AJ大阪は吉田前理事長が盤石な体制を築いてくれたので、これからは新規事業を増やしていくことが必要だと考えています。そのため、座談会などで組合員から出た意見や要望を事業開拓委員会で話し合っています。実際に検討したテーマは、バイクから出るプラスチック廃材の処理を組合で一括してくれないか、ということ。これは、調べていくうちに、集める際に組合員に費用が掛かったり、金属が少しでも残っていると回収してくれないなど、様々な課題があることが分かり、カタチにはなりませんでした。ただ、このように、新規事業を検討してくことは非常に重要です。吉田前理事長の時には行っていなかった事業をスタートさせ、いままで以上に、組合員に喜んでもらえる組合を目指していきたい。そして、吉田前理事長とは違うカラーを出しいきたいと考えています。

――― 池淵理事長らしさ、ということですね。具体的にはAJ大阪をどういった組織にしたいと考えていますか。

池淵
 AJ大阪では様々な組合事業を展開していますが、それでも組合員になることのメリットを感じ取っていただけない販売店はまだまだ多い。こうした状況を打破していきたいと考えています。そのために、勧誘に力を入れることはもちろん、組合の情報発信力も強化していかなければならないと思っています。今後、メーカーからの情報は少なくなっていくと思うので、セミナーや座談会などを活用して、理事だけでなく組合員に、より多くの情報を伝えていきたいと思います。また、大阪府には1人で経営している店も多いので、組合事業を通じて、そういった販売店をバックアップできる体制構築を目指していきます。

――― これからの二輪業界はどう動くと思いますか。

池淵
 継承問題やメーカー施策などを理由に、廃業される二輪販売店が増えていくと思います。そのため、同じ業界で働く者同士、協力しながら生き残る術を考えるべきなのに、危機感がない販売店が多いとも感じています。ただ、中にはキチンと危機感を持っている人もいる。そういった人達が集まって意見交換をしたり、助け合ったりできる拠り所を提供していきたい、と考えています。

――― 最後に、二輪業界発展のために、AJ大阪にはどのような役割が求められているとお考えでしょうか。

池淵
 二輪業界を良くしていくためには、原付一種の最高出力による車両区分設定やバイク駐車場の建設促進など、全国レベルではないとできないことが多くあります。これらを実現するためには、各単組がいままで以上に力を付け、連合会をより大きな組織にしていく必要があると思うのです。そのためAJ大阪では、今後も非組合員の勧誘や、新規事業の立ち上げを行っていき、“AJ”というブランドの強化を図っていきたい、と考えています。最終的には、組合に入っておかないと、今後二輪業界で食べていくのは大変、と思われるような組織にしていきたいと思います。



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