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【自工会】「モノ消費」「コト消費」に加え、その時、その場でしか味わえない「トキ消費」に焦点

公開日: 2024/03/01

更新日: 2024/03/07

日本自動車工業会二輪車委員会(日髙祥博委員⻑)は1月16日、報道関係者を対象に「第8回メディアミーティング」を開催した。今回のテーマは「2024年国内二輪市場の展望を語る」。二輪車委員会の事業紹介に始まり、2023年の総括および2024年の展望について説明があり、その後、委員会メンバーとメディアとのディスカッションが行われ、多角的な議論が展開された。

2024年の国内二輪市場はどのように変化していくのかを説明

2024年の国内二輪市場はどのように変化していくのかを説明
2024年の国内二輪市場はどのように変化していくのかを説明

まず2023年の総括として、二輪車の登録・出荷実績については、原付二種が前年比50%増、軽二輪は前年並み、原付一種と小型二輪は前年を下回ったが、全体では前年比100%となったことを発表。この背景にはコロナ感染症の第5類への移行に伴う行動規制の緩和に加え、国内二輪メーカーによる原付二種ラインアップの拡充など、いくつかの要因があるだろう。

では、2024年の国内二輪市場はどのように変化していくのか。これについて日髙委員長は、自工会の片山会長が掲げた7つの課題を例示し説明した。

◉物流・商用・移動の高付加価値化/効率化
◉電動車普及のための社会基盤整備
◉国産電池・半導体の国際競争力確保
◉重要資源の安定調達。強靭な供給網の構築
◉国内投資が不利にならない通商政策
◉競争力あるクリーンエネルギー
◉業界を跨いだデータ連携や部品トレーサビリティの基礎構築


これらについて日髙委員長は、二輪車委員会としても、この“7つの課題”を念頭に事業を推進することで新会長を支えていくことを表明。特にマルチパスでのカーボンニュートラル達成としての「電動車普及のための社会基盤整備」ないし、ものづくりの競争力確保に向けた「競争力あるクリーンエネルギー」については、四輪車の動きに遅れないよう実行することを明らかにした。

続いて2023年の国内二輪市場について総括。コロナによる二輪車バブルと揶揄されたが、5類移行後も二輪新規免許取得者は大きな落ち込みなく推移してきた。2024年はこうした傾向の維持拡大が二輪業界関係者の責任、としたうえで、昨年の販売台数についても触れ、「2023年の販売台数をカテゴリ別に見ると、原付一種・小型二輪では前年を下回っているが、原付二種は大幅に伸びており、今後、原付二種ユーザーが軽二輪、小型二輪へとステップアップする流れに繋げていける可能性を秘めている。とても良い傾向と考える」とした。

新規若年層・女性層がバイクに乗り続けるための仕組みづくりが重要

今年一番のテーマは“絆”づくり、と語る日髙委員長
今年一番のテーマは“絆”づくり、と語る日髙委員長

次に二輪車委員会企画部会副部会長の飛田淳司氏より、同様に国内二輪市場における2023年の総括と2024年の展望に関する説明が行われた。

同氏は消費スタイルの変化について触れ、これまでは「モノ消費」⇒「コト消費」という認識が一般的だったが、いまは新たに「トキ消費」が注目されている、と最近の傾向について分析。「モーターサイクルショー」や「ジャパンモビリティショー」「MotoGP日本グランプリ」「鈴鹿8耐」と同様に、自工会が関わる「バイクの日」やBLFの「ツーリングキャンペーン」などのイベントも、その時・その場でしか味わえない「トキ消費」であると説明した。

続いて2024年の二輪市場の展望については、まず国内における二輪新車販売台数の推移は安定傾向にあり、40万台を維持していることを挙げた。さらに、2018年以降、増加傾向にあった新規若年層・女性層がバイクに乗り続けるための仕組みづくりが重要、との認識を示した。

また、コロナの5類への移行に伴うバイクブームの平常化や、行動制限のない現在において、バイク以外の趣味や旅行など、興味の対象やそれに基づく行動が多方面に広がっている傾向を指摘。モノ(=バイク)の魅力を伝えることはもちろん、「コト・トキ提案」によるファンづくりの重要性を強調した。

これらを踏まえ、2024年に二輪車委員会が取り組む具体的な施策として、メディアミーティング、MOTOINFOによる情報発信、自工会の主催イベントである「8月19日はバイクの日 HAVE A BIKEDAY」、二輪車産業政策ロードマップ2023の推進に向けたBLFの関連イベントを挙げた。

最後に、二輪車委員会として2024年の抱負を「絆」という漢字1文字で表した。これについて日髙委員長は、「二輪免許取得者が増え、過去2~3年間においては、新車の販売も好調だった。この時期に育んだユーザー同士の絆、我々二輪業界とユーザーとの絆、そして業界関連団体との絆。これらを深めユーザーが末永く安全で快適なバイクライフを送れるよう取り組む。また、新しく入ってきたユーザーとも関係性を深め、末永く二輪を楽しんでいただくための『絆』づくりを推進する。これが今年一番のテーマだ」

質疑応答 ~BLFの成功指標は来場者数。経産省と議論の真っ最中~

『質疑応答』BLFの成功指標は来場者数。経産省と議論の真っ最中
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Q.電動二輪車のバッテリーシステムについて、海外での“仲間づくり”はどれくらい進んでいるか。

A.国内では交換式バッテリーの共通利用を目指し、共通の仕様を仕組みとして作った。現在、自治体と共にそれを国際規格として海外でも流用できるようにするための活動を行っている。その規格がJASO(日本自動車技術会規格)だ。ベトナムの科学技術省が日本のJASOを安全基準面で利用したい、との意向を表し昨年6月に関係者が来日し、試験設備を見学した。今年の5月、6月くらいには、規格として発布するとのこと。こうした活動も行っている。

Q.電動二輪車のバッテリーコンソーシアムについて、2019年の結成後、様々な国と規格化について進めていると理解しているが。これは二輪車に使うバッテリーという理解でいいのか。例えば、卓上コンロとか家庭用途にも広めたほうが数の原理としては効果的じゃないかなと思う。

A.二輪車用の標準として作る際に重視するのは二輪の使用環境に合わせること。家庭用バッテリーは、振動やショックに対する要求は低くてもいい。けれども二輪車の場合は、例えば交換用バッテリーを1mの高さから落とした時の耐久性や、非常に暑い環境や寒い環境、雨天などの環境下での使用に耐えられるというところを標準として担保する。つまり、家庭用の電池とラップする部分はあるが、基本的にはそこに注目せず、二輪車として必要な部分だけを標準化していくという作業だ。

Q.ロードマップ2030に事故死者数ゼロという話があったが、若い人のなかには運転が未熟な人もいるためか、SNSで、「事故りました」などと平気で投稿している。また、50~60代の人が自分の技量を過信し、伊豆スカイラインや奥多摩あたりで事故を起こすケースもある。この辺りに関する安全啓蒙は、どうするのか。ライディングテクニックになるのか、あるいは大まかな部分での安全啓蒙になるのか。

A.二輪の事故については注視している。最近は通勤時の事故も増えており、対策が必要であることは認識している。二輪は自立できないため、それを乗りこなすだけの技量を理解しその範囲で楽しむことが求められる。昔は乗れたけど今はそうではないというところの自覚だ。そうした取り組みや情報発信が必要。それと、オートバイ事故については、亡くなった人のうち約3割にヘルメット離脱が確認できている。これは20年近く変わってない。ヘルメット離脱のメカニズムについて、JAFに協力いただき実験を行い、原因を突き詰めた上で、対策を講じていく必要がある。ここから取り組む。

Q.若いユーザーが増加傾向にある。理由は父親が乗っていた、SNSを見てカッコいいと思ったなど様々。だが、市場ではまだまだ50~60代の人が中心だ。この層はあと5~6年すると、どんどん減少する。つまりマーケットが狭くなっていく可能性があるわけで、こうした人たちにできるだけ長く乗ってもらうための施策が必要。ツーリングの走行距離も3割ほど短くなっているというアンケート結果もある。最近はツーリングも走りを楽しむというよりは「体験型」が増えている。バイクに長く乗ってもらうための施策はあるか。

A.長くオートバイを楽しんで貰うための仕組みづくりだが、昨年もBLFを開催し、静岡をバイクでまわるツーリングキャンペーンを実施した。ユーザーにとっては『トキ消費』だ。今しか楽しめないオートバイの楽しみ、これを感じて貰える仕組みをつくり、それを提供していく。これはメーカー、用品メーカー、中古流通業界などの垣根を越えて取り組む必要がある。

Q.販売台数や免許取得者数をどのように維持拡大していくのか。また、好調な原付二種からのステップアップについてはどう取り組むのか。

A.欠かせないのはSNSのなかでの繋がり。ライダーが大挙して訪れるバイク神社がどこそこにある、などといった楽しそうな情報について、モトインフォを通じて発信する。各メーカーも取り組んでいるところだ。また、リターンライダーに対しては、安全運転教室の開催やトレーニングなど各社とも力を入れているが、これを地道に継続開催することが大切。原付二種からのステップアップに関しては、慣れてくると、「もう少しパワーのあるバイクに乗りたい」「楽に高速道路を走れる大きいバイクが欲しい」といった気持ちが必ず出てくる。彼らがステップアップできるような価格、性能のバイクを軽二輪で用意する。こうした対応が重要だ。

Q.BLFは、初回の鈴鹿から認知度はどう変化しているのか。また、成功指標はあるのか。何をもって成功とするのか。

A.BLFについては、国と二輪に関係する業界団体が集まって真摯に議論しよう、というところから始まった。その議論の過程において、ユーザーにも参加して貰えるのであれば、ユーザーも含めて議論を深めようということで開催してきた経緯がある。正直に言うと、過去には密室の議論と批判されたこともあった。BLFの認知度を高めるということよりは、関係者の議論を深めるというところに注力をしてきたからだ。経産省が音頭を取り業界が一丸となって二輪車産業政策に取り組むという試みは、国内に数多くの産業が存在するなかでは非常に珍しいケース。二輪車の社会的地位の向上という観点からも、BLFの認知度を高めることは非常に重要であるため、そこに向けまさに舵を切りつつあるところ。BLFのオフィシャルホームページなどを通じてこれまで以上に積極的に情報発信し、フォーラムのプログラムも一般ユーザーに関心を持ってもらえるようなプログラム構成にしようと議論しているところ。成功指標としては、フォーラムに来ていただいた一般の方の人数、そしてもう一つは、BLFの関連イベントの参加者だ。先般も経産省と今年の開催について議論したところ。経産省からは関連イベントに関する非常に高い動員目標の提示を受けたところ。ぜひメディアの力をお借りし周知の協力をいただきたい。



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