コラム

日常生活において広く普及する「リチウムイオン電池」。衝撃や熱に弱いことから、今年に入り火災事故相次ぐ

公開日: 2025/08/28

更新日: 2025/09/04

「外出中にスマホの充電が切れてしまった」。そんな経験をしたことがある人は多いのではないだろうか。そのような時に重宝されるのが、コンパクトでいつでも充電することができるモバイルバッテリーだ。内蔵する電池に電力を蓄えて使用する仕組みとなっており、そのほとんどに「リチウムイオン電池」が採用されている。

リチウムイオン電池は、正極と負極、その間を分けるセパレータ、電解質、電解液が主な構成材料。正極と負極の間をリチウムイオンが移動することで、充放電できる仕組みだ。身近なところでは、スマホやPC、電動モビリティのバッテリーとして利用されており、日常生活において広く普及している。

そんな利便性に優れるリチウムイオン電池だが、管理方法を間違えれば、火災を引き起こすリスクをはらむ。今年7月、神奈川県寒川市にある郵便局で、充電中だった電動バイクを含む28台が燃える火災が発生。出火の原因は、電動バイクに使用されているリチウムイオン電池だと考えられている。また、山手線の電車内でモバイルバッテリーが発火し、乗客5人が怪我をする火事が起きるなど、7月の1カ月間だけでもリチウムイオン電池を使用した製品の火災が相次いだ。

年々増加する火災事故、5年間で1587件発生

リチウムイオン電池による事故は、年々増加している。製品評価技術基盤機構(NITE) が今年6月に公開した、2020年~2024年までの5年間に報告された製品事故情報を見ると、リチウムイオン電池搭載製品の事故は1860件。そのうち1587件が火災事故に発展している。

リチウムイオン電池が原因となり相次いで発生する火災事故。発火の理由としては、衝撃や熱に弱い点が挙げられる。もし外部から電池に衝撃が加わった場合、内部のセパレータが破損する可能性があり、その状態で正極と負極が直接接触してしまうと発火する恐れがある。また、高温下に置くと、電解液から可燃性ガスが発生し、最悪の場合、引火する可能性がある。

一例を挙げてみよう。近年、暑さ対策グッズが注目される中、携帯型扇風機は手軽に使用できる点から若者を中心に人気だ。だが、その動力源にはリチウムイオン電池が使用されているため衝撃に弱く、手元から落ちた時の衝撃だけでも、十分に発火するリスクがあるという。

また、暑い日の車内も危険だ。CBCテレビが放送した、炎天下の車内でのモバイルバッテリー放置実験によると、温度が60度まで上昇した車内にモバイルバッテリーを約3時間放置した場合、リチウムイオン電池が膨張。その後、煙と炎を噴き上げる結果となった。この事からも、熱のこもりやすい環境には放置しないなど、保管場所に気を付けなければならない。

今年も暑い日が続く。気象庁が7月に発表した3カ月予報では、平年以上の暑さが10月まで続くという。だからこそ、火災事故を未然に防ぐため、身の回りにあるリチウムイオン電池搭載製品を確認し、適切な環境で保管するなど、意識して使用することが重要となる。

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