公開日: 2025/08/29
更新日: 2025/09/02
「通学のため原付免許を取得しようと思い、受講できる場所を探した時に、この講習を見つけました」
こう答えたのは、宮城県内の大学に通う女子大生。移動手段として原付を利用する若者が多い宮城県ではいま、民間企業で初となる原付講習が開催されている。
宮城県仙台市に本店を構える(株)早坂サイクル商会は昨年12月より、宮城県運転免許センターで原付講習を開始。1日あたりの定員数は、午前と午後に各10名ずつとなっており、現在はひと月に2回程度開催している。8月までに実施した講習は計36回。参加人数は250人を超えている。
(株)早坂サイクル商会が原付講習を始めるに至ったキッカケは、来店した学生からの「原付を買いたいけど、免許が取れなくて乗れない」という声だった。ある時期を境に、同様の悩みが複数届くようになった。こうした状況を受け(株)早坂サイクル商会では、原付講習の現状について調査。すると、原付講習の窓口が狭まっていることが分かった。
宮城県では、原付免許試験を受けるのに必要な終了証明書を貰うため、初めに原付講習を受講しなければならない。2022年以前は、宮城県運転免許センターが宮城県交通安全協会に原付講習を委託。1日あたり約60人が受講し、毎日実施されていた。しかし、人材面等の問題により同協会が撤退。その後、県内の教習所に原付講習を委託したものの、各教習所の講習は月に1、2回程度で定員数は3~5名と、以前よりも受け入れ人数が大幅に減少してしまったのだ。
このような状況を危惧した(株)早坂サイクル商会は、宮城県指定自動車教習所協会や宮城県運転免許センターに対し、受講者の上限人数の緩和などについて要望を行ったところ、課題解決の話し合いをすることになった。その結果、同社にて実施せざるを得ない状況でもあり引き受けることになる。そこで、免許センターの指導項目に沿いつつ、社員同士で意見を出し合いながら2カ月ほど時間を費やし、カリキュラムを1から作成。現在の(株)早坂サイクル商会が行う原付講習を作り上げたというわけだ。では、こうした活動は販売面に寄与しているのだろうか。
「原付講習を始めてから、10名以上の受講生に原付を購入していただいています」
こう語るのは、(株)早坂サイクル商会外商部の佐山文隆さん。同氏によると、宮城県では二輪全体の登録台数が年々右肩下がりにあり、下落幅はかなり大きいという。こうしたなか同社は、二輪全体の販売台数の減少を小幅に抑えている。原付についても同様の減少にとどまった。これについて佐山さんは、原付講習の開催により免許取得者が増加していることが大きな要因と分析する。
原付講習実施にあたり、教習バイクや教習指導員、教材テキストや各種保険など出費が多いことから、赤字が続いている、と佐山さん。しかし、「二輪人口の裾野を広げるための投資と考え、今後も講習を続けていく」と語る。現在の受講生の7~8割は高校生や大学生だという。若年層は、二輪業界にとって欠かせない存在。だからこそ、多くの若者が原付講習を受講できるような環境を維持していくことが大切なのだ。
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