公開日: 2025/10/07
更新日: 2025/10/10
二輪専門の整備士養成講習を行うBDSテクニカルスクールの井田講師が、ブリヂストンよりモニター提供いただいた「T33ツーリングタイヤ」で約7300km走行。今回はサーキットで試乗した感想を中心にインプレします!
皆さん、こんにちは。私、二輪専門の整備士養成講師をしております、BDSテクニカルスクールの井田と申します。今回は、ブリヂストンのツーリングタイヤ、T33の第2弾の動画になります。T33がどんなタイヤなのかというと、ツーリングタイヤでありながら、反応が良くて、ハンリングも変な癖がなく、ライフが長いだろうということを、前回の動画で語りました。
トータルで約7300km走行しました。その中でサーキットへも行きましたので、本日はサーキット走行時の感想をメインにお伝えします。場所は宮城県にある「SUGOサーキット」です。ちょうど、BDSテクニカルスクールのOBの方が主催で走行会があったため、参加しました。
前回サーキットを走行した際は、ミシュランのツーリングタイヤを履いて行って、結構楽しかったんですよ。今回はブリヂストンのT33です。スポーツ走行の面でT33の特性が活かされるのかどうかという点が非常に気になっていました。で、実際走ったら新しい発見がありました。前回の動画では「低速での反応の良さ」について触れましたが、今回のサーキット走行ではグリップに不足はありませんでした。しかし、100km/hを超えるスラロームや切り返しの際、意図的にハンドルをクイックに入力し、機敏な動きを試みたところ、安定感がかなり強く出ました。
実は、タイヤ単体で組み換えた際にも、ブリヂストンのタイヤには「重さ」を感じていました。この重量は強固なタイヤ骨格に由来し、結果として高い剛性をもたらしていることを示しています。そのため、空気圧が多少変動してもハンドリングが大きく変わることはありません。高速域での強い安定感は、このタイヤの重量が影響しているのではないかと個人的には分析しています。というのも、重いものが高速で回転すると、ジャイロ効果が強く出るんですね。この強いジャイロ効果により、意図的にクイックな入力や余計な操作を加えたとしても、車体はビシッと安定し、高い安定感を維持しました。なので、軽快さや切り返しの軽さを望んでいる方は、正直あまり向かないかもしれません。
実はSUGOサーキットまで自走で行きました。その移動中、強風による車体のふらつきを感じにくく、疲労感も少なかったんですよね。このことから、高速道路を使った長距離移動において、このタイヤの安定志向は非常に適していると再認識しました。ただ、サーキット走行時には、軽快さがもう少し欲しいなと正直感じました。では、楽しくなかったのかと問われると、めっちゃ楽しかったですね。
その中で、1点驚いたことがあります。スポーツ走行やサーキット走行後、タイヤの端の部分に消しゴムのカスみたいなのが溜まったりしますが、今回それがほとんど出ませんでした。頻繁にサーキットを走行される方であれば、タイヤカスが付着していると「なんか結構イケイケの走りのだな」という印象を持つと思います。個人的には走行した証としてタイヤカスが少し付着する方が好みなのですが、今回は驚くほど全く出ませんでした。物足りなさを感じるほどです。これは、タイヤの表面が全く荒れていないので、T33がサーキット走行の負荷に性能的に全く負けていないことを示しています。もちろん、「コンパウンドが硬いためにグリップしないのではないか」という懸念も生じますが、グリップ性能に問題はありませんでした。
本動画を撮影しているのは8月4日、鈴鹿8時間耐久ロードレースの直後ですが、今年の優勝チームをはじめ、上位を独占したのはブリヂストンを装着したチームでした。この結果はタイヤの性能が大きく影響していると推測されます。酷暑のなか8時間走行し、約1時間ごとにタイヤ交換を行うという過酷なレースを支える技術が、今回のT33にも活かされているのだろうと感じました。
モーターサイクルショーなどのイベントで、ブリヂストンのブースではサーキット走行後のタイヤが展示されていることがあります。それを見ると「サーキット走行後なのに、こんなにタイヤがきれいなんですか?」というものが意外とあるんですよね。今回の私の走行結果も、まさにそのような状態でした。したがって、T33はサーキット走行に持ち込んだとしても、すぐに寿命が尽きるようなことはなく、ロングライフが期待できるタイヤです。一方で、グリップが不足しているとは感じませんでした。ただし、私の車両はハイパワーなスーパースポーツではなく、ミドルクラスのバイクであり、ブレーキ性能も標準的です。そのため、スーパースポーツや大排気量車で走行した場合の挙動は断言できません。しかし、ミドルクラスの車両であれば、サーキットも十分に楽しめます。
フロントタイヤはどのメーカーの製品でも見られる傾向ですが、センターから少しずれた位置に、偏摩耗の傾向が若干現れています。そのため、タイヤの中央表面を触ると、へこんでおりますね。私の走行用途は通勤がメインであり、基本的にはタイヤのセンターばかりを使います。そのため、中央表面が特に摩耗しているのは使用環境によるものと言えます。
現段階で「ハンドリングに違和感があるか」と問われると、正直判断が難しい状況です。新品のタイヤと直接比較すれば違いはあるかもしれませんが、緩やかな変化であるため、現時点では「明らかに異常がある」と感じることはありません。使用限度まで使用し、どのような影響が出るのかを、最終的な動画で皆様にご報告したいと思います。
続いて、タイヤの残り溝についてご報告します。新品時にタイヤデプスゲージで計測したフロントタイヤの残り溝は、センター付近で約4.1mmでした。約7300km走行後の溝深さは、場所により2.7mmから2.5mm程度となっており、この距離で約1.6mm減りました。リアタイヤも同様に計測しました。タイヤ表面は非常にきれいな状態を保っています。センターとエッジ部分のタイヤの荒れ方の違いから、センター部分は硬めのコンパウンドを、エッジ部分はより柔らかいコンパウンドを使用していると推測されます。これは、実際に表面を触った際の質感の違いからも確認できました。
新品時はセンター付近で約6.5mmあった溝深さが、現在では場所によって4.4mmから4.5mm程度残っています。これは、リアタイヤには残り溝に十分な余裕がある感じがします。さらに、タイヤのエッジが非常にきれいに残っている点も特筆すべきです。そのため、排水性をはじめとするタイヤの性能は、これだけの溝が残っていれば低下していないと思います
前回私が使用していたタイヤはミシュランのロード5で、これは約2万kmで寿命を迎えました。T33がどの程度使用できるか、新品時からの摩耗量を基に計算しました。その結果、フロントタイヤは約1万8000km、リアタイヤは約2万3000km程度が推定寿命となります。したがって、このタイヤはロングライフであると推定されます。特にリアはその傾向が顕著です。
ただし、車種や重量配分によって摩耗の進み方は異なります。例えば、フロントが重い車両ではフロントタイヤが、荷物満載や二人乗りが多い場合はリアタイヤに、より大きな負担がかかるでしょう。一概には断言できませんが、T33は他メーカーのツーリングタイヤと比較して、ロングライフと評価して問題ないと考えられます。ただし、「ロングライフ」の定義が「性能を維持できる期間」なのか、それとも「溝が使用限度まで持つ距離」なのかによって、だいぶ解釈が変わることに留意が必要です。
現時点で、このタイヤは溝が長期間持つと予測されます。したがって、今後懸念されるのは、摩耗が進んだ際にハンドリングに癖が出てフィーリングが悪化することです。今のところは使用限度まで問題なく走行できるのではないかと期待しています。
参考までに、スポーツタイヤとのライフを比較します。私が以前使用していたミシュランのパワー5の場合、リアタイヤは約1万kmで交換時期を迎えました。一方で、フロントタイヤは長寿命でした。この結果から、当時は加速時に大きく負担をかけていたことが推測されます。逆にフロントブレーキを多用する方は、フロントの摩耗が早くなる傾向にあります。
総括として、このタイヤは「ロングライフ」であることは間違いないでしょう。また、サーキット走行も「できるかできないか」で言えば可能です。ただし、「タイムを競う」ような目的には向いていません。S22やRS11など色々なタイヤがありますが、そのようなタイヤとは用途が異なります。しかし、「ツーリング性能」と「サーキット走行をそれなりに楽しむ性能」の両方を求める、欲張りなライダーにとっては、現時点で非常に優れた選択肢であると評価できます。
リヂストンからのタイヤ提供を受けておりますが、「忖度なしでやってほしい」という依頼を頂戴しています。そのため、正直に語らせていただきました。次回は、さらに走行距離を重ねた後のタイヤの状況をご報告します。5000km時点では外観上の大きな変化は見られませんでしたが、使用限度に達した時点で再度検証します。その際、実際の走行距離が私の推定値よりも上回るのか、下回るのか。また、タイヤがキレイに摩耗しているのか、それとも偏摩耗で著しく変形しているのかという点も、忖度なしに皆さんにお伝えしたいと思います。
私は普段、二輪専門の整備士養成講習を行っております。もし興味のある方、「資格が取りたいよ」という方いましたら、二輪業界や整備業界で働いている方が対象になりますが、実務経験が半年ある方でしたら受けることできます。もしよろしければ、BDSテクニカルスクールのホームページもちょっと見て、興味があれば応募していただけたらなという風に思っております。それでは、また次回の動画でお会いしましょう。ありがとうございました。
【BDSテクニカルスクール講師 井田安彦】 BDSテクニカルスクール講師
保有資格
2級二輪自動車整備士、2級ガソリン自動車整備士、2級ジーゼル自動車整備士、自動車検査員、二輪車安全運転指導員
★2・3級二輪自動車整備士を目指す方必見!
3年連続、3級二輪整備士国家試験で合格率100%を達成
令和6年度第2回試験の「「3級二輪自動車」では、全国合格者の4人に1人がテクニカルスクール受講生
BDSテクニカルスクールHPhttps://www.bds.co.jp/technicalschool/
「ツーリング性能」と「サーキット走行を楽しむ性能」を両立
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