公開日: 2021/08/26
更新日: 2022/09/06
ここ数年、集中豪雨による被害が相次いでいる。これに伴い、ニュースなどで「線状降水帯」という気象用語をよく耳にするようになった。これは、大雨による災害リスク上昇を知らせる言葉として社会に浸透しつつあるが、どのような現象なのだろうか。
線状降水帯について気象庁のホームページでは、
「次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300km程度、幅20~50km程度の強い降水をともなう雨域」と説明している。
線状降水帯という言葉が使われるようになったのは、2014年8月以降。集中豪雨により、甚大な被害をもたらした広島土砂災害をキッカケにメディアで取り上げられるようになり、一気に知られるようになった。それ以前も線状の降水域としては認識されていたが、気象衛星やレーダーなどの技術の発達によって雨雲の様子を「見える化」したことで、2014年に名付けられ、使われるようになった。
積乱雲が発生してから消滅するまでの時間は、30分~1時間程度。そのため、ゲリラ豪雨や夕立は数十分間、局地的に大雨を降らせる。けれども、線状降水帯はこの雲が次々に発生してライン上に連なるため、数時間に渡って広範囲かつ同じ場所に、激しい雨をもたらす。その結果、今年に入ってからも静岡県や島根県などで、河川の氾濫や土砂崩れなどの二次災害を引き起こしている。
気象庁は6月17日より、線状降水帯による豪雨が確認された場合、洪水や土砂災害のリスクが急激に高まったことを知らせる「顕著な大雨に関する情報」の運用を開始した。これは、線状降水帯が発生した場合は知らせて欲しい、との要望を受けてのもの。気を付けなければならないのが、この情報が発表された際は、線状降水帯が予測された時ではなく、確認された時であるということ。警戒レベルは4以上の「避難指示」もしくは「緊急安全確保」に相当し、すでにかなり危険な状況であることを意味している。そのため、すぐに命を守る行動が求められるのだ。
では、なぜ確認された時に情報が発表されるのだろうか。これには、線状降水帯の発生構造が関係している。この現象は、ちょっとした風のぶつかり合いで突発的に生じるため、現在の技術ではいつ、どこで発生するのかといった正確な予測が難しいのだ。
気象庁ではホームページ上に、土砂災害や洪水、浸水のリスクがひと目で分かる「キキクル(危険度分布)」を公開。豪雨の際、自分のいる場所がどのような状況なのかを知ることができる。線状降水帯はただの大雨ではなく、非常に危険で災害に直結する現象である。そのうち止むだろう、という考えでは済まない可能性も大いにあるのだ。
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