コラム

「3回目ワクチン接種」の必要性について、現時点の情報をもとに考察

公開日: 2021/09/29

更新日: 2022/09/06

 現在、日本では新型コロナウイルスのワクチン接種が急ピッチで進められている。そのような中、加藤勝信官房長官は8月19日の記者会見で、3回目の接種が必要になると発言。以降、日本では、これを巡る議論が活発に行われている。欧米を中心にすでに始まりつつある「3回目接種」について、現時点での情報をもとに、その必要性について調べてみた。

 3回目のワクチン接種はブースター接種とも言われ、時間経過によって低下した免疫力を一気に高める狙いがある。アメリカやイギリス、ドイツなどの一部の国では追加接種に向けた動きが加速しているが、この背景には、感染力の強い変異ウイルス「デルタ株」の流行が大きく関係している。

 アメリカの製薬会社モデルナは8月5日、新型コロナウイルスワクチンの効果や、変異ウイルスに対応した新たなワクチンの開発状況についての資料を公表。これによると、同社ワクチンの効力は接種から6ヵ月後でも約93%と、高い水準を維持していることが確認されたとしている。けれども、感染力の強いデルタ株など変異したウイルスが拡大する中「今後ワクチンの有効性は低下していくだろう」として、2回目を終えた人にも今年の秋以降、3回目の接種が必要になるとの見解を示している。

 ワクチン先進国のイスラエルでは、すでに3回目接種が行われている。同国では5月中旬までに、16歳以上の国民の6割超が2回目の接種を完了。その結果、6月に入り1日の新規感染者数は10人以下にまで低下した。けれども、その後デルタ株の影響もあり、再び感染者が増加。この状況を受けイスラエル政府は8月より、3回目の接種を開始した。この成果について、同国でワクチン接種を担当する保健機関「マッカビ」は8月18日、60歳以上で3回目接種を受けた人に86%の効果があったと発表している。

 日本での3回目接種については、河野太郎規制改革担当相が8月29日「日曜報道THE PRIME」で言及。アメリカが8ヵ月の間隔を設定していることに触れ、一番早い想定として医療従事者は10月の終わりから11月、高齢者は来年1月から2月と説明した。また、同月31日の記者会見では、「3回目の接種の前に、希望される国民に2回の接種が行われる。そこはご心配なくお願いしたい」と述べ、必要量のワクチンを確保していることを強調した。

 厚労省は9月7日、米ノババックス社製のワクチン1億5000万回分の供給を受ける契約を、国内で生産・流通を行う武田薬品工業との間で締結したと発表。この他、1・2回目と別会社の製品を3回目に投与する「交差接種」についての検討を行うなど、日本でも追加接種に向けた準備が着々と進められている。けれども、3回目接種を巡っては効果や安全性の科学的根拠が乏しいことや、世界的な供給の偏りがあることなどを理由に、様々な意見が飛び交ってもいる。

 ワクチンは普及し始めているが、懸念材料も多いだけに不安視する声も後を絶たない。「コロナ禍との共生」の実現には、まだまだ時間がかかりそうだ。

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