販売店取材考現学トーヨーオートサービス

トーヨーオートサービス 小藤 大輔 代表取締役(東京都府中市)【販売店取材】

公開日: 2021/11/29

更新日: 2022/01/13

トーヨーオートサービス 小藤 大輔 代表取締役


幼少期の体験から、バイクに対し恐怖を覚えるようになった小藤大輔代表。しかし、一時期、車椅子生活を送ることとなった父・東洋氏を介助したことをキッカケに、過去の出来事を乗り越え家業を継ぐことを決意。現在、顧客本位の姿勢を貫きながら、アフターまで意識した経営を心掛けている。

1台いち台にキチンと向き合いながら、ユーザーに“命”の大切さを伝えていきたい

トーヨーオートサービスは1階が整備・メンテナンススペース、2階が商談スペースとなっている

「バイクを通じて社会の仕組みを教えていきたい、何よりも“命”の大切さを一番に伝えていきたい」

こう語るのは、1975年創業のトーヨーオートサービス(東京都府中市)の二代目、小藤大輔氏。先代は、同店の会長職を務める小藤東洋氏。AJ東京の理事長を5年務め上げた功労者だ。

小藤代表が“命”の大切さについて語る背景には、同氏が小学3年生の時に経験した出来事がある。父の東洋氏が運転するバイクの後ろに跨り、東洋氏の友人達とツーリングに出かけた時、同氏の前を走る1人が転倒。生死の境をさまよう程の重傷を負ったのだ。この状況を目の当たりにしたことで、楽しい乗り物と思っていたバイクに対し、恐怖を覚えるようになってしまったという。その時を境に小藤代表の頭の中からは、家業を継ぐという選択肢はなくなり、大学卒業後はIT企業に就職した。

だが、26歳の時に人生のターニングポイントとなる出来事が起こる。東洋氏が体調を崩し一時期、車椅子生活を送ることとなったのだ。介助のために車椅子を押した小藤代表。その時、同氏の胸に去来したのは、「自分はこのままでいいのか」という強い思いだった。大黒柱を欠いた状態での経営はとても不安定だった。そしてネット上では「接客に不満を感じる」「整備が雑」など、風当たりの強い書き込みが目に付くようになった。こうした状況に直面したことで、自分を見つめ直し、そして、店を継ぐ決心をするキッカケになったという。

「父のことで自身を振り返った際に、ようやくバイクから逃げていることに気付きました。それからは小さな頃に見ていた、常にお客さんとスタッフの笑顔が溢れて活気のある、アットホームな雰囲気を取り戻したい。また、幼少期に感じたバイクの楽しさや怖さ、命の大切さを伝えられるようなお店を自分が作りたいと思うようになりました」

その後、27歳の時に東京工科専門学校に入学し、整備士の国家資格を取得。在学中には、二輪車整備のアルバイトを経験した。そして卒業後、家業に就いた。小藤代表は当時の状況について、次のように語る。

「まず着手したのは、スタッフの教育体制を見直すことでした。ただ、二代目とはいえ一番下の立場だったので、口だけでは上手くいかなかった。そこで、私の考えは間違っていないと証明するため、販売台数やお客さんのリピート率などでスタッフの数字を上回る実績を上げ続けました」

小藤代表が家業に就いてから5年後には、その成果が認められ、それまでは接客や整備に関する質問をしてこなかったスタッフが、相談するようになったという。そして、スタッフから信頼を勝ち取った同氏は41歳の時、代表に就任した。

何度でも無料で受けられる独自のサービス「愛車クイック無料点検サポート」

2階の商談スペースでは、ヘルメットやトップケースなども販売。またキッズスペースを設けているため、子ども連れのユーザーでも安心して来店することができる

トーヨーオートサービスはホンダ、ヤマハ、スズキの正規ディーラー。展示スペースも隣接しており、店舗を合わせて約100台の展示が可能となっている。

同店の特長として、車両を購入した際、独自のサービスである「愛車クイック無料点検サポート」を付帯している。これは、ブレーキパットやチェーンなど車体全体を点検し、消耗パーツやオイル残量、交換時期、費用などをユーザーに報告。その後、作業を行うかを確認し、必要に応じて整備を実施する、といったサービスだ。

「当店でバイクを購入したお客さんだけでなく、他店やネットで手に入れた人も、一度でも定期点検や車検を依頼して頂ければ何度でも無料で受けられ、オイル交換などで入庫した際には必ず実施しています。販売価格に付加価値を付けることで、他の二輪販売店との差別化を図っています」

さらに同店は、あいおいニッセイ同和損保の上級代理店として、保険会社の商品に独自のオプショナルプランを付けた任意保険を扱っている。元々の保険内容では、専門業者がロードサービスを行い、レッカー費(上限15万円)を補償。また、応急作業費は30分までを無料とし、超えた場合は有料。さらに、示談交渉を保険会社が担当することになっている。けれども、同店ではこれをベースに、3つアレンジを加えているのだ。

まず1つ目は、営業時間内は小藤代表やスタッフがロードサービスを担当し、上記の金額以上のレッカー費が発生した場合には割引を行う。顔馴染みの店員が駆け付けることで、動揺しているライダーの安心感につながり、また、ユーザーの負担を最小限にできる、と強調する。

次に2つ目は、応急作業費の超過分を同店が負担。ゆとりのある現場対応を心掛けている。

最後に3つ目は、示談交渉をトーヨーオートサービスのスタッフが担当。相手側の保険会社と直接やり取りをするため、進捗状況や金銭などについて、トコトン交渉できるのだ。ユーザーの半分以上が加入しており、ロードサービスは月に10件ほどあるという。

「過去には、言葉や気遣いが足りず叱られたり、整備に問題があるのではないかと言われたこともありました。けれども、お客さんを怒らせることは店の落ち度、という考えのもと真心あるロードサービスを心掛けることによって、トラブルは減ってきています」

このような、アフターを意識した顧客本位の対応は、同店の大きな強みとなっている。

お店のファンを増やすためには、ユーザーの不安をなくせるよう適切な会話をすることがポイント

トーヨーオートサービスは、店舗とは別に展示スペースもあり、豊富なラインアップを誇る

トーヨーオートサービスではコロナ禍をキッカケに始めた、新たな取り組みがある。それは、先に述べた愛車クイック無料点検サポートに関すること。元々、毎月第一日曜日のみの先着順であったが、2020年より限定日をなくし、事前予約制に変更したのだ。

「以前は月1回ということもあり、スタッフ総動員で作業をしていましたが、正直キャパオーバーでした。予約制にしてからは利用率が約3倍増え、月30件ほど依頼があります」

他にも、地元の飲食店からデリバリーを行いたいとの声に応え、昨年4月よりレンタルバイクを開始。用途別にジャイロキャノピーやベンリーなどのビジネスモデルを用意し、長期貸出も実施。レンタル後、そのまま購入されるケースが多いため、販売実績に結び付いているという。

バイクを整備する際は、乗っているユーザーの顔を思い浮かべられるよう、1台いち台にキチンと向き合うことを心掛けている

小藤代表には店舗経営の中で大切にしている行動指針がある。それは、ユーザーの不安をなくせるように、適切な会話をすることだと語気を強める。

「二輪販売店は整備ができて当たり前です。その中で、お客さんの信頼を得たり、再び作業をお願いしようと思って頂くためには、日々技術の研鑽を積んでいくことはもちろん、当店のファンになって頂く必要があります。そこで重要なのが、会話なのです。加えて、トラブルをなくすためにも、スタッフにはお客さんとコミュニケーションをとることの必要性を何度も説いています」

また、今後のビジョンについて小藤代表は、同店には小金井や東村山などの多摩地区北東部、所沢や入間などの埼玉県南西部のユーザーが多いことから、現在の場所から北方面への新店舗出店を検討している。この構想に際し、いま課題となっているのがスタッフの育成だという。

「バイクを整備している時、もし乗っているお客さんの顔を思い浮かべられないとしたら、それは1台いち台にちゃんと向き合っていないからなのです。私と同じ価値観を共有しているスタッフに、お店を任せたいのです」

小藤代表が家業に就いてから15年以上経った現在、ユーザーへの対応やバイクに対する向き合い方が多くの人に認められ、トーヨーオートサービスの口コミは「親切で丁寧な接客」「信頼できるお店」といった内容の投稿が多く見られるようになった。年間の新規ユーザーは約500人に及ぶ。

今日の盛況ぶりは、同氏が顧客本位の姿勢にこだわり、店づくりをしてきた結果なのだ。

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