コラム

近年、増加傾向にあるという食中毒「アニサキス症」。 増加の背景にあるものとは?

公開日: 2022/08/29

更新日: 2022/09/06

6月末、元AKB48の板野友美さんが自身のYouTubeチャンネルでアニサキス症を発症したことを発表し、話題となった。アニサキス症は近年、増加傾向にあるというが、その背景には何があるのだろうか。

アニサキスとは寄生虫(線虫)の一種。長さは2~3cmで、白い糸くずのような見た目をしており、サバやサンマ、カツオなど魚介類の内臓周辺や腹腔内に寄生している。

主な症状は、「急性胃アニサキス症」と「急性腸アニサキス症」の2つ。胃については、食後数時間~十数時間後にみぞおちの激しい痛みをはじめ吐き気や嘔吐の症状が現れる。また腸については、胃から腸に到達してから発症するため、食後十数時間~数日後に激しい下腹部痛や腹膜炎症状が起こる。アニサキスは体内に入ってから1週間程度で死滅するが、胃や腸を太い針で刺されたような痛みに襲われるため、前述の板野さんは動画の中で「出産より痛かった」と語っている。

アニサキス症予防は、適切な冷凍と加熱

冒頭でも述べたが、実はこのアニサキス症、近年増加傾向にあるという。厚労省が毎年公開している『食中毒統計資料』の「病因物質別発生状況」という項目によると、アニサキス症の発生件数は、データが公開されている2013 年が88件。以降、増減を繰り返し、昨年は3倍以上となる344 件も確認されている。

ちなみに、同じく厚労省が公開している『食中毒発生状況』によると、食中毒の発生件数は最多となる1998年に3010 件を記録しているが、令和になってから減少傾向にあり、2021 年は717 件にまで減っている。これらのデータから分かるように、昨年の食中毒の発生件数の病因のうち、アニサキス症は約48%(344/717件)を占めており、カンピロバクターやノロウイルスを上回り1位となっている。

アニサキス症が増加している背景には、輸送技術の発達がある。アニサキスはマイナス20度以下で24時間以上冷凍すると死滅するため、1日以上冷凍したまま配送される分には、大きな問題になっていなかった。けれども、今日は配送網の拡大や空送の普及、保冷容器の性能改善などが急速に進んでいる。この結果、より新鮮な魚介類を手に入れられるようになった反面、アニサキスが生きたまま運ばれるケースが増えているのだ。

アニサキス症の冷凍以外の予防方法としては、60度以上の熱による1分以上の加熱がある。また、目視できる大きさであるため、調理中や食卓に並んでいる際に見かけた場合は、キチンと取り除くことが必須となる。なお、アニサキスは醤油や酢、塩などでは死滅しないため、注意が必要だ。

アニサキス症は世界中で確認されているが、その大半は刺身や寿司など、生食文化が根付いている日本で起きているとも言われている。生の魚介類を美味しく味わうため、今日の日本ではアニサキスに対する適切な対応が不可欠となっている。

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