ビジネス注目

国内4メーカー、水素小型モビリティの基礎研究に着手

公開日: 2023/06/29

更新日: 2023/07/03

ヤマハ、ホンダ、カワサキ、スズキの国内4メーカーは5月17日、二酸化炭素を発しない小型モビリティ向け水素エンジンの研究開発に取り組むことを発表した。研究は協業で協調領域。製品化は個社の競争領域となる。

協業に向けてHySE(水素小型モビリティ・エンジン技術研究組合)を設立

ヤマハ、ホンダ、カワサキ、スズキの国内4メーカーは5月17日、二酸化炭素を発しない小型モビリティ向け水素エンジンを4メーカーで協業し研究開発に取り組むことを発表した。

協業に向けてはHySE(水素小型モビリティ・エンジン技術研究組合)を設立。研究開発期間は5年に設定した。4メーカーは、それぞれ担当を持ち、個社の技術や知見をベースに取り組む。主な研究開発の内容および役割分担は以下の通り。

①水素エンジンの研究
●水素エンジンのモデルベース開発の研究(Honda)
●機能・性能・信頼性に関する要素研究(スズキ)
●機能・性能・信頼性に関する実機研究(ヤマハ発動機、カワサキモータース)

②水素充填システム検討
水素充填系統および水素タンクの小型モビリティ向け要求検討(ヤマハ)

③燃料供給系統システム検討
燃料供給システムおよびタンクに付随する機器、タンクからインジェクタ間に配置する機器の検討(カワサキモータース)

研究には4メーカーの他、すでに水素エンジンの開発を行っているトヨタ自動車、そして川崎重工も特別会員として参画する。

脱炭素社会の実現に向けたモビリティの分野では、バッテリーEV、水素、ハイブリッドなど技術の多様性が国内メーカーの強み。単一エネルギーだけではなく、マルチパスウェイでの取組みが求められているが、今回の動きはそうした潮流に基づくもの。

水素には燃焼速度の速さや着火領域の広さから燃焼が不安定になり易い。また、小型モビリティでの利用にあたっては、燃料スペース確保の課題もある。一方で、水素エンジンの基本構造は、ガソリンエンジンと同様の内燃機関であるため、従来のエンジン構造を大幅に改良しなくても、開発できるのが大きなメリットとなる。

HySEは小型モビリティの分野において、利用者にとってさまざまな選択肢を提案することで異なるニーズに応えると同時に、脱炭素社会に向けて貢献することを目指す、としている。

質疑応答

――― Q HySEはいつまでに何をやるのか。また、その実現性は。

A
 組合が正式に設立でき次第、マイルストーンを掲げる。活動期間は5年だが、その過程において新しい課題が出てきたら、変更になる可能性もある。組合は基礎的な部分を研究するのであり、それを製品に落とし込むのは各社の競争領域。そこには言及できない。

――― Q 水素エンジン開発の課題は何か。

A
 「ガソリン以上の燃焼速度の速さと着火性の良さに起因する水素特有の異常燃焼」「燃焼生成物として発生する水の問題(サビ、オイルへの混入)」「燃料タンクの搭載スペースに起因する航続距離の問題」の3つが課題。これらは基礎技術であるため協調領域。いまの時代は1社あるいは1部門で担うべきではない。

――― Q 世界における4社の販売比率は50%を超えている。グローバルスタンダードになるのでは。

A
 いまは、それ以前の問題。ただ、サステナビリティや今後の地球環境など様々なことを考えると、協調領域は大きくなると思う。水素燃焼を考えても標準化して規格を作るべき。可能であればグローバルなモノとし、インフラシステムも標準化したい。水素燃焼についてはHySEが最初。海外メーカーが入るのはウェルカム。ベンチャー企業にも門戸は開いている。

――― Q 利用者のメリットは何か。バッテリーEVを上回る強みは。

A
 水素エンジンは内燃機関をそのまま利用できるため、スロットルに比例してパワーが出せるので、FANの要素が強い。

人気記事ランキング

50cc時代に幕。2025年4月1日、『新基準原付』スタート!

道路交通法施行規則が改正され、4月1日より適用される。これにより、原付一種にしか乗れないユーザーで...


【Blast Clean】バイクヘルメットケミカル剤携帯セット

二輪用品の企画・開発・販売を手掛ける埼玉県川口市の株式会社MLSは同社が展開するブランド『Run Wind(...


2024年キャッシュレス決済比率は42.8%。導入の課題は決済手数料分のコストをいかに確保するか

かつて“現金大国”と呼ばれた日本だが、いまや財布を持たなくても不自由なく生活できる時代となりつつあ...


2024年新車国内出荷台数、約32万台でコロナ禍以前の水準に

2024年の新車国内出荷台数は32万0300台(二輪車新聞調べ・推定値)となり、コロナ禍以前の水準となった...


2024年二輪国内保有台数。全体はマイナスだが、原付二種以上の合計では過去最多を記録!

2024年の二輪国内保有台数が約1028万台となっていることが、経済産業省『二輪車産業の概況』によって分...


新型「GOAN CLASSIC350/CLASSIC650」、9月より受注開始!

ロイヤルエンフィールド(以下、RE)は8月26日、ヒルサイドクラブ迎賓館八王子(東京都八王子市)で、20...


二輪免許取得者数33万6943人でコロナ前の水準に戻る。年齢別ボリュームゾーンは20~24歳

二輪免許の取得。これは免許区分に関わらず、バイクに乗る、という意志の表れである。つまり、この数字...


日常生活において広く普及する「リチウムイオン電池」。衝撃や熱に弱いことから、今年に入り火災事故相次ぐ

利便性に優れるリチウムイオン電池だが、管理方法を間違えれば、火災を引き起こすリスクをはらむ。今年7...


125ccクラス最新スクーター“11台”足つき比較インプレ! <ホンダ・ヤマハ編>

大好評の足つき比較企画“第3弾”「125cc最新スクーター11台足つき比較」! 今回もユーメディアの横浜新山...


「W230」「MEGURO S1」足つき比較インプレ! 250ccレトロスポーツ遂に発売!

11月20日に発売が決まったカワサキ「W230」「MEGURO S1」! 今回はBDSテクニカルスクールの井田講師とBD...