公開日: 2023/07/31
更新日: 2023/08/08
警察庁が毎月発表している『交通事故統計月報』によると、今年5月末までの交通事故死者数は、1006人(対前年同期比で39人増加)。このうち、二輪車乗車中の死亡者は170人(同11人増加)で、2年連続して増加していることが分かった。これを食い止める方策の一つが、プロテクターなど防具装備の着用に関する啓蒙活動の推進である。今回、胸部プロテクター装備の現状とともに、ユーザーに推奨できるユニークな胸部プロテクター製品を紹介する。
コロナ禍以降、二輪ユーザーは大きく増加した。コロナ禍によって苦境に立たされた業界がいくつもあるなか、二輪業界は、活況を呈した業界として報道でも大きく取り上げられた。中には、「過去最高の売上や販売台数を記録した」という販売店も多い。
SNSをチェックしていても、一例を挙げれば『バイク女子』などのバイクに関連したキーワードを目にすることが増え、20代の若い層にもバイクに乗る人が増えたという印象がある。
バイク人気の高まりや若いユーザーの増加というのは良い傾向ではあるものの、その裏側も目立つようになってきている。裏側というのは、人が増えれば事故も増えるということ。警察庁では毎月、『交通事故統計月報』を発表しているが、今年1月から5月末までの交通事故死者数を見ると、前年同期比で39人多い1006人。同月報には2013年からのデータが載っているが、前年を上回るのは初めてのことである。2021年同期は996人と1000人を割り、昨年同期は967人まで下がっていたのだが、今年は1000人を上回った。
この39人増えたうちの11人が二輪乗車中。自動二輪乗車中の死者数は132人で前年同期比8人増加。原付乗車中が38人で同3人増加。2年連続して前年同期比プラスという結果となっている。バイクを一つの趣味としてユーザーに今後も楽しんでもらうには、この状況を改善していく必要がある。
3月に開催された自工会の二輪車委員会メディアミーティングで、二輪車の死亡事故における損傷主部位は『頭部』と『胸部』で約7割を占めていることが発表された。まずは、ここをどうするかが重要なポイントだ。言うまでもないが、頭部に関してはヘルメットの着用が義務付けられている。しかし、胸部の防具に関してはユーザーの自主性に委ねられている。
胸部の防具と言えば、胸部プロテクターがすぐに思い浮かぶだろう。グラフ①のデータを見ると、胸部プロテクターの着用率は全排気量平均で9.26%しかない。だが、グラフ②の認知・保有・着用に関するデータを見れば分かるように、75%の人が認知しており、所有しているのは現在と過去を含めて21.7%。そして、所有している場合、着用率は92.1%にもなる。つまり、所有している人は何かしらのシーンで着用しているのだ。胸部を守るには、まずは所有してもらうことが重要ということが分かる。
胸部プロテクターをざっくり分けると、ウェアにプロテクターを装備したモノ、プロテクターそのままのモノの2種類がある。その両方の『いいとこ取り』したような商品が『WALL'TINCT(ウォール・ティンクト)』の『PROTECT RIG(プロテクト・リグ)』である。同製品は今年の大阪モーターサイクルショーに出展したので見た人もいるかもしれないが、見た目はプロテクター。しかし、ポケットが付いているなどカバン機能があり、プロテクター部分と切り離して使うことも可能というものだ。
「以前、海上保安庁に勤めておりまして、その時の防弾装備をヒントにしました。命に関わるものなので、これはバイクにも応用可能なのではないかと感じ、作ったのがプロテクト・リグです」(ウォール・ティンクト代表取締役/水谷友哉氏)
胸部プロテクター部分は、安全基準であるCE規格のレベル2と同等の基準をクリアしており、安全性にこだわった作り。価格は税別2万3200円で、現在は同社のECサイトからの販売のみとなっている。
グラフ②にもあるように、所有さえしてもらえば、装着率は9割以上になる。それだけに、プロテクターに様々なスタイルが生まれ、ユーザーの選択肢が増えていけば、きっと所有率も上がるだろう。
これから秋に向かい、バイクで走るのが気持ち良い季節になる。また、今年だけの話ではなく、ユーザーに末長く楽しいバイクライフを送っていただくため、このような情報もチェックし、時には提案していくのも重要なことの一つだ。
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