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今村雅弘氏による「二輪車業界の明日を考える講演会」開催

公開日: 2025/07/28

更新日: 2025/07/30

オートバイ政治連盟(吉田純一会長)は6月10日、日本自動車会館において元衆議院議員で農林水産副大臣、復興大臣を歴任し現在はAJ顧問を務める今村雅弘氏を講師に迎え、「二輪車業界の明日を考える講演会」を開催した。当日は各単組の役員をはじめとする関係者が多数、出席した。

女性ライダーを増やすためにも免許の制度改革が必要

オートバイ政治連盟・吉田純一会長
オートバイ政治連盟・吉田純一会長

まず、主催者である吉田会長が挨拶。今村氏について長年、オートバイ議連の幹事長として二輪ユーザーのための改革に尽力いただいた、と紹介。自民党の重鎮として様々な問題に取り組んでいただいたが、中でも最も印象的なのは税制問題。今村氏の存在がなければ押し切られていた、と当時を振り返り功績を称えた。その後、今村氏が登壇し講演会がスタート。以下、ポイントを絞り内容について紹介する。

同氏は佐賀県出身。大学入学のため上京し、卒業後は国鉄に入社した。民営化の時は、労組との対抗もあったというが、それを経てJR九州へ。当時はかなり厳しい状況にも直面していたが、のちに経営の立て直しに成功した。

「新しい事業を始めるなど苦難はありましたけど、株式上場も果たしました。これは、まさか、と思われるほど大きなことなのです」

嬉しかったこととして挙げたのは、コロナ禍での黒字化。加えて近況についても触れた。JR各社とも赤字に転落するなか、JR九州だけが唯一黒字となったのだ。

「関連事業の収入が運輸収入を上回ったことが良かった。オートバイの販売はやらなかったけど、クルマの販売・整備は手掛けました。業界はどのように成り立っているのか、そういうことも学んだので、皆さんのお仕事の内容も少しは分かるつもりでいます」

今村雅弘元衆議員議員
今村雅弘元衆議員議員

話は今村氏とオートバイの出逢いに移った。初めて取得した免許は普通自動二輪免許。自宅にあったという新明和工業のポインターやカブに乗っていた。当時は自動二輪免許があれば、軽自動車にも乗れたため、スバル360も運転していたという。30年以上前に手に入れたという側車付のSR400は、いまでも現役。車検も取れる状態にし、レストアしながら乗り続けている。セルなしなので、交差点の真ん中で止まってしまったこともあるというが、それもいい想い出、と語る。

話は子供の教育に関する問題に移った。

「私は、今の日本の教育に関する大きな問題は、過保護にあると思います。例えば、危いから川で遊んではいけない、と言ったとします。でも、川で遊んだ経験がないと、足が立つのに溺れたりするわけです。高校生はバイクに乗るべきではない、というのも全く同じ理論。安全な乗り方を指導すればリスクは軽減する。もっと若い人に乗って欲しいと思っています。先ほどSRの話をしましたが、私にとっては“良き友だち”です。そういう意味でも、もっとバイクを体験させることが大切だと思います。これは何もオートバイ産業だけではなく、これからの日本を背負う若者を育てる意味でも重要なことだと思っています」

普通自動二輪免許で軽自動車に乗れた時代も。これが高速料金問題の原点

全国オートバイ協同組合連合会・大村直幸会長
全国オートバイ協同組合連合会・大村直幸会長

日本の二輪産業についても言及した。二輪産業をさらに大きくするためには、どうすればいいか。

ホンダ、ヤマハ、スズキ、カワサキの4社で世界の半分近くを生産している。ホンダに至っては4割ほどのシェア。ホンダもスズキも、二輪ブランドが四輪ブランドと重なるし、ヤマハはボートも製造・販売しており、これも二輪車(技術)がベースとなったイメージがある。これが大きな力になっている、と強調した。

日本は世界に関たる4メーカーを擁する国なので、日本人はもっとプライドを持って二輪を好きになって欲しい、と語気を強める。

「実際に乗り、バイクの素晴らしさを実感してもらう。これが非常に大事なのです。高速道路二人乗りや免許制度の改革、税金問題などに取り組み、実現してはいますが、オートバイを広げていく政策はまだ弱いと思っています。高速道路料金は軽自動車と一緒。軽は4人乗れるが二輪は2人。なのになぜ一緒なのか。これにはある経緯があります。先ほどスバル360の話をしましたが、当時の大きいオートバイは、軽自動車と車格があまり変わらなかった。ここに原点がありました。これを見直し気軽にオートバイに乗れる状況を作り出すことが大切なのです」

また、女性ライダーについても免許取得者数の問題に絡め俎上に載せた。現在、AT小型限定普通二輪免許は、普通自動車免許を持っていると、最短2日で取得できるようになったことを挙げ、これにより取得者が倍増したことを紹介した。一方で、小型限定以上の免許については、二輪免許取得のため、一歩踏み出すところに壁が存在すること、出産等の問題があることなど、男性との違いを指摘。こうした状況に配慮し、もう少し取りやすくすることが求められる。これが今後の大きな課題、と指摘した。

「オートバイは素晴らしい乗り物。ライダーが羨ましいと思わせるほどの宣伝を打ち、それを広めることを本当に考えるべき。もっと多くの人に、喜びを知ってもらいたいと思います。『もっとツーリングに行こうぜ』。そんな思いをさらに広げていく必要がある。きっと、日本を元気にする大きな力になるでしょう」

講演終了後、全国オートバイ協同組合連合会の大村直幸会長が会を締めくくった。

今村氏には、二人乗りやETCの運用、免許の制度改革、税金の問題など色々と対応いただいた、と過去の実績を紹介。政府の要職に就くと、オートバイ議連やPTに出席できなくなる方が多いが、先生は大臣の時も来て下さった、と強調。本当はまだ続けていただきたいが、残念ながら勇退された。これからはAJの顧問として活躍してお力をお借りしたい、と感謝の意を込め語った。

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