公開日: 2025/10/15
更新日: 2025/10/16
今回は「ローライダーST 2025」の試乗インプレッションを、バイクジャーナリストの小林ゆきさんが担当。竹川由華さんと二人で足つきインプレも行いました。「ブレイクアウト」との乗り味の違いは必見です!
小林―――ハーレーダビッドソンの担当者様によると、このローライダーSTとブレイクアウトは、現在「人気二大巨頭」として、購入を検討される方が皆さん迷われる車種だそうです。ローライダーSTはご覧の通り、大型のフロントフェアリングを装備しており、その分、一見すると非常に大柄に見えます。しかし、実際に乗ってみると足元がだいぶコンパクトに感じます。その理由は、ステップの位置が「ミッドコントロール」にあるためです。スポーツバイクのように真下や後方ではありませんが、ブレイクアウトのような「フォワードコントロール」、足を前方に投げ出すポジションと比べて、腰掛けて少しだけ足を前に出すぐらいの位置にあります。私のように身長160cmと小柄で手足短めであっても、膝が燃料タンクの横に来るほどです。
以前ブレイクアウトに乗った際はフロントブレーキの操作にやや苦戦しましたが、このバイクではそうしたストレスがなく、格段に運転しやすいです。特に、小回りの際などに重要となるリアブレーキのコントロールが容易に行えるため、予想していた通り、ブレイクアウトと比較して運転が非常に楽だと感じました。
試しに一度、車体を深く傾けてUターン路を走ってみましたが、このローライダーSTもハンドリングを素直に感じます。フロントからススッと舵角をつけて曲がっていきます。「意外と寝るんだな」という印象があり、今はステップを擦っていませんが、もう一段階寝かせ込めばステップを擦り始めるような、そんな楽しみも秘めていると感じました。
こちらのローライダーSTは、ハンドル周りが一新されています。ハンドルポストはトップブリッジより高く、かつ手前に引かれた位置まで上がっており、バーハンドルが装着されています。このバーハンドルは、ブラックアウトとクロームの2種類があり、車体のカラーリングによって使い分けられています。特筆すべきはメーターで、バーハンドルのポストの上にはアナログのスピードメーターが搭載されています。メーカーの方との話でも出ましたが、最近のカスタムの傾向としてクラシック回帰の動きが見られます。やはりアナログメーターは視認性が高く、非常に見やすいですね。
エンジンはミルウォーキーエイト117(排気量約2000cc)を搭載。優雅なクルージングを可能にする排気量でありながら、非常に素直でコントローラブルです。インジェクションの反応が非常に穏やかで、細かいところまで丁寧に反応してくれる感じがします。前のモデルと比べて、サスペンションが非常によく動いているように感じます。ただピッチングが出るわけではなく、エンジンのドコドコとした鼓動感を心地よく残しつつ、路面からの細かな凹凸をピタッと、そして優しく吸収してくれます。初期の動きが柔らかく、細かく路面を拾ってくれる、非常に高級感のあるサスペンションに進化したと私には感じられました。
シートはブレイクアウトと比べて後方に下がる感覚は控えめです。シート高自体はブレイクアウトよりも高いのですが、ミッドコントロールのおかげで足付きに不安はありません。スポーツバイクに乗り慣れている方であれば、特に高いとは感じないと思います。
車重は300kgを少し超えます。強風時の挙動は未確認ですが、これだけの足付きが私の身長でできるのであれば、同程度の体格の方はこの重さも十分に制御できるのではないでしょうか。もう一度Uターンを試みますが、やはり操作が非常に楽です。これ攻め込んでも楽しいですね。最近話題の「バガーレース」を連想するほど、ローライダーSTは、本当にコーナリングが楽しいバイクです。
小林―――ハーレーダビッドソンのローライダーSTとブレイクアウト、人気車種を試乗しました。エンジンなど共通のベースを持ちながらも、両車の持つ性格は全く異なります。ローライダーSTは、フロントフェアリングとサイドバッグを装備した、典型的なバガースタイルです。本来、長距離ツーリングを想定したクルーザーモデルですが、実際に乗ってみると、スポーツモデルに近い性格を持っていると私は感じました。
特にホイールのサイズがだいぶ違います。ブレイクアウトは大径ホイールに対し、ローライダーSTはホイールサイズが比較的小さいです。1速から強大なトルクとパワーを持ちますが、2速、3速以上でのコントローラブルさが際立っていました。最新のフューエルインジェクションや電子制御のおかげで、スロットル操作に対してライダーが欲しいと思っただけちゃんと反応してくれるものになっていました。
試乗インプレッションでも詳しく述べましたが、サスペンションの進化が本当に素晴らしいです。私の体重50kg未満ではハーレーに乗るには軽すぎる部類ですが、それでも「硬い」と感じる場面は一切ありませんでした。路面の細かなガタガタをしっかりと吸収し、しなやかに動作します。
また、ビッグツインエンジンならではのドコドコとした鼓動感は健在ですが、サスペンションがこれを過剰に伝えることなく、穏やかに調律してくれます。これにより、長距離でも疲れにくい上質な乗り心地を実現しながらも、ライダーはエンジンの鼓動を深く感じることができます。
現在、ハーレーダビッドソンはこのバガースタイルのレースを積極的に展開しており、来年からはMotoGPの併催でシリーズも始まります。ローライダーSTにも少しスポーツ性を高める意図が盛り込まれているのかなという風に思いました。
小林―――以前、発表会で固定された車体にまたがる機会はありましたが、改めて固定されていない状態でまたがりをやってみたいと思いますので、竹川由華ちゃんを呼んでみたいと思います。
竹川―――チャレンジしたいと思います。本当に目の前にすると車体は大きいですね。またがると、左足は膝が少し曲がる程度で地面にべったりついていますが、右足は届いていません。せーのっ! 車体を起こしてみると、やはり私には非常に重く感じます。
あっ! 熱い、マフラー! マフラーが熱いので、ちょっと遠めに足を出すと、親指の母指球がしっかりついている状態で踏ん張れてはいます。ちょっと近めにしたらかかとまでしっかりついてるんですけど。なんせマフラーがめちゃくちゃ熱いです。やばいこの熱さ。ステップの踏み替え……。なんか右に足出すのが怖くなっちゃいますね。一応できます。重いです。
小林―――改めて、身長160cmの私がまたがっていきたいと思います。由華ちゃんは162cmです。またがった感じは、やっぱりハーレーの中では高いとはいえだいぶ低い。ハーレーの中ではシート高が高いとされるモデルですが、それでも全体的にはかなり低いポジションだと感じます。シートの真ん中に座った状態で、ステップに足がしっかりと届くのは、非常に嬉しいポイントです。
このバイク約330kgも重量があります。起こします。せーの! やはり「重い」の一言に尽きます。でも起こしてしまえば安定はするんですよね。スタンドを払うには、車体を少し右側へ傾ける動作が必要です。これは、スタンド自体が地面すれすれの低い位置に設計されているためです。さてサイドスタンドですが、スタンドにはツノのようなプレート状の突起が出ているため、つま先で引っ掛けやすく、バネの抵抗も軽いため、出し入れの操作は楽々です。起こしてしまえばなんてことはないのですが、起こす動作はそれなりに力がいるというのが分かりました。
竹川―――シートの座り心地も全然違いますね。
小林―――全然違ったね、ブレイクアウトと。ということで今日は、ハーレーダビッドソンのローライダーST、私が試乗して、あとは足つきインプレをやってみました。ありがとうございました!
竹川―――ありがとうございました!
【小林ゆきさん略歴】
横浜育ちのバイクブーム世代。バイク雑誌の編集者を経て、現在はフリーランスのライダー&ライター。バイクを社会や文化の側面で語ることを得意としている。愛車は総走行距離25万kmを超えるKawasaki GPz900RやNinja H2など10台。普段から移動はバイクの街乗り派だが、自らレースに参戦したり鈴鹿8耐監督を経験するなど、ロードレースもたしなむ。ライフワークとしてマン島TTレースに1996年から通い続け、モータースポーツ文化をアカデミックな側面からも考察する。
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【竹川由華さん略歴】
滋賀県出身のアイドル。愛称はゆうかりん。第二回サンスポGOGOクイーン審査員特別賞受賞。バイク好きの両親の影響で、自身でもツーリングに行くバイク女子。愛車はGPZ750・CBR250RR。2022年3月「BDSバイクセンサー」のイメージガールに就任。バイク好きアイドルとして活動の幅を広げている。
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シートの真ん中に座った状態で、ステップに足がしっかりと届く!
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