公開日: 2025/11/25
更新日: 2025/12/01
日本自動車工業会が主催する『Japan Mobility Show 2025』が10月29日(水)から11月9日(日)までの12日間(プレスデー含む)、東京都江東区にある東京ビッグサイトの西棟・東棟・南棟を使って行われた。同イベントのコンセプトは「ワクワクする未来を、探しに行こう!」で、500社以上の企業・団体が出展。二輪を含む各種モビリティが多数展示され、会期中に101万人が会場を訪れた。
ざっくり言えば、国内において、二輪関連には2つのビッグイベントがある。
1つは毎年春に開催される『モーターサイクルショー(以下、MCS)』。これは、近い未来を含めた「今」を中心に、コンセプトモデルなどで未来も見せるイベント。もうひとつは2年に一度、秋に開催される『Japan Mobility Show(ジャパンモビリティショー、以下、JMS)』(一般向けとビジネス向けのショーを1年おきに開催)。これはモビリティの「未来」を中心に見せていくイベント。モビリティという名称からも分かるように、二輪に特化したイベントではなく、二輪も四輪もその他も含めた乗り物全般が出展される。
その『JMS2025』が、10月29日(水)から11月9日(日)まで東京ビッグサイトで開催された。出展した企業・団体は前回(2023年)を上回る500社以上。二輪の国内4メーカーが、どのようなモデルや“未来”を展示・提示していたのかについて、各社が考える方向性と合わせて紹介する。
まずはホンダ。JMS開幕直前、発売がアナウンスされた『CB1000F』(10月14日)と『CB1000F SE』(2026年1月16日)。今年春の『大阪MCS』で『CB1000コンセプト』がワールドプレミア(世界初公開)。もともとCBは注目度が高かったこともあり、ホンダブースの二輪コーナーにおいてもこの2機種の人気はかなり高かった。SEは一段高いステージに展示されていたが、グラファイトブラックカラーのFにはまたがることもできたため、多くの来場者が次々にシート高やポジションなどの感触を確かめていた。
また、CBほどではなかったが、しっかりと注目を集めていたのが新基準原付の『スーパーカブ110Lite』。12月に発売予定なので、まだ現車を見たことがないという人がほとんど。そうしたこともあり、人気はかなり高かった。
CBも新基準原付のスーパーカブも、まだ発売はされていないが、もう“現実的”なモデル。未来の一端を見せてくれたのが、今回ワールドプレミアとなった電動二輪車『EV OUTLIER CONCEPT(EVアウトライアーコンセプト)』。
同モデルは、昨年の『EICMA』で発表された『EV FUN CONCEPT』や『EV URBAN CONCEPT』の流れを汲む電動二輪車。デザインのテーマとなったのは、ホンダの電動二輪で共通の「研ぎ澄まされた本質的なデザイン」。前後のホイールにインホイールモーターを採用し、ダイナミックで流麗なプロポーションを実現している。ホンダのユーチューブチャンネルでは動画も公開されており、そこには「2030年以降の二輪車の新しいあり方を提案するコンセプトモデル」と記されている。2030年は遠い未来ではないが、すぐそこの未来でもない。ちょっと先の未来にはどのようなモビリティが待ち受けているのか、ワクワクする。そんな印象を来場者に提供できたように思う。
また、ホンダはバイクやクルマだけの企業ではない。それを再認識させてくれた展示が、『Honda Jet EliteⅡ』(モックアップ)や『サステナブルロケット』。JMSの来場者は全くモビリティに興味がないという人はいないだろうし、ジェットやロケットはニュースにもなっていたので知っている人も多かっただろう。やはり実際に目にして「ホンダはさまざまなことをやっている」と実感したのではないだろうか。
ヤマハブースで来場者が足を止めてみていたのが、ワールドプレミアの『MOTOROiD:λ(モトロイド・ラムダ)』。ブースでは同モデルのデモンストレーションを実施。小刻みに震えながら動く姿を見た来場者からは「子鹿みたい」という声も上がるなど、通路ギリギリまで見学者で溢れていた。
ヤマハは同モデル以外にもワールドプレミアモデルが多く、モトロイド・ラムダの他、フルオープンの三輪EV『TRICER Aproto』、スーパースポーツEV『PROTO BEV』、水素エンジンを搭載したトヨタ自動車と共同開発中のコンセプトモデル『H2 Buddy Porter Concept』、電動自転車のコンセプトモデル『T-00B:Base/Bricolage』。
スーパースポーツEV『PROTO BEV』は、ミドルスクーター向けシリーズパラレルハイブリッド『PROTO HEV』、内燃機関の可能性を未来につなげるプラグインハイブリッド『PROTO PHEV』というシステムの違うEVと並べられていた。ブース内には『XSR900GP』や『TRACER9GT+Y-AMT』の他、市販予定のハイブリッドモデル『Fazzio』も展示されていたが、全体的な印象では未来感の溢れるブース展示となっていた。
カーボンニュートラルの実現に向けたマルチパスウェイの取り組みにおいて、さまざまな方向性を見せてくれたのがスズキブース。その一つが、EVになって登場したワールドプレミアの『e-VanVan』。人気を博したレジャーバイクの『VanVan』がモチーフで、ひと目見れば「バンバン」と分かるようなフォルムを持つ。クラスとしては原付二種相当となる。参考出品だが、製品化が待たれる1台だ。
次に『水素エンジンバーグマン』。前回のJMSにも展示されていたが、それからの進化が分かるよう、カットモデルの展示と映像による紹介が行われていた。水素エンジンがEVと最も違うのは、言葉通りエンジンによって動くのでバイクの楽しみのひとつである「排気音を楽しめる」というところ。
そして、『ACCESS CNG/CBG仕様』。CNGは『圧縮天然ガス』で、CBGは『圧縮バイオメタンガス』。スズキでは酪農廃棄物の資源化やインド農村の活性化、社会課題解決の貢献を目指し、2022年からCBG事業に取り組んでおり、実車展示及び映像での紹介が行われていた。
この他、ジャパンプレミア(日本初公開)の市販予定モデル『GSX-8T/GSX-8TT』も展示。『GSX-8S』をベースに、レトロとモダンを融合させたデザインに最新の電子制御をプラス。8Tがネイキッドモデルで、8TTがフロントカウルとアンダーカウルを装着したモデル。現時点では日本での発売日が発表されていないので、次のアナウンスを待ちたい。
プレスデーの29日、カワサキブースでベールに覆われた2台のバイクがあった。プレスカンファレンスで公開されたその2台は、ともにワールドプレミアとなった『Z900RS SE』と『Z900RS CAFE』。
ネイキッドモデルのSEは電子制御スロットルバルブを備えたエンジンを新たに搭載。フロントカウルや段付きシートを装備しているのがCAFEで、カワサキのヒストリーモデルであるマッハシリーズのレインボーラインに着想を得た燃料タンクのグラフィックが特徴のひとつ。すでに発売時期も発表されており、2026年2月に国内販売予定となっている。
ジャパンプレミアとなったのは、2台のZ900RSと同じくステージ上で展示されていた『Z1100 SE』。オーリンズ製リアサスペンション、ブレンボ製ブレーキシステムなどを装備。同モデルもZ900RSの2モデル同様に来年2月に国内販売予定となっている。
また、カワサキもカーボンニュートラル実現に向けた選択肢のひとつとして、水素エンジンモーターサイクル、モーターサイクル用水素エンジン、6気筒水素エンジン(いずれもモックアップ)を展示。
駆け足で4メーカーの紹介をしたが、海外メーカーではBMWが『BMW M1000RR』と『BMW CE02』、2台の二輪車を展示。その他、トヨタやスバルをはじめとした四輪メーカーも特定小型原付モデル『Swake』(トヨタ)などを展示。二輪車はモビリティの主役ではないかもしれないが、未来を担うモビリティのひとつであることは間違いない。2年後の2027年に開催されるJMSで二輪車がどのような進化を見せてくれるのか、今から楽しみだ。
人気記事ランキング