公開日: 2025/08/13
更新日: 2025/08/19
日本自動車輸入組合は2025年上半期の輸入小型二輪車新規登録台数を発表。海外ブランド全体で1万2469(前年同期1万3930台 / 10.5%マイナス)となっていることが分かった。6月末時点で登録台数が1000台を超えているのは、ハーレーダビッドソン、BMW Motorrad、トライアンフ、ドゥカティの4ブランド。それに956台のロイヤルエンフィールドが続き、上位5ブランドのシェア合計は実に90.5%となっている。
2025年に入ってから、輸入小型二輪の新車市場で昨年までとは様子の違う変化が起きている。今までは、ハーレーダビッドソンがトップを独走し、それをBMW Motorrad(以下、BMW)やトライアンフなどが追いかける…のが、いつもの光景だった。
今年もハーレーがトップを走っているというのは同じなのだが、表2のグラフを見ると分かるように、2位以下との差が前年同期比で縮まっている。三つ巴の状況と言っても過言ではないほど、3ブランドが接近している。そこから少し離れてドゥカティとロイヤルエンフィールドが続く。この2ブランドも月によっては順位を入れ替えながら順調に登録台数を伸ばしてきている。この5ブランドのシェアを合計すると全体の9割を超え、90.5%にもなることから、5強時代とも言える様相だ。
この5ブランドからまずピックアップするのは、ハーレーを猛追しているBMW。ハーレーの販売台数が前年から3割強ほど落ちている中、BMWは前年比で7.9%増。6月末時点でその差は197台。台数的にはかなり拮抗してきているのだ。
実際、ツーリングに限らず街なかにおいても、BMWに乗る人を見る頻度が増えてきたように感じている人は決して一人や二人ではないだろう。BMWというと高額なモデルが多いので、お金や時間にそれなりに自由のきく年齢層の高いユーザーを想像しがちになるが、高速のサービスエリアやネットのSNSでは若い人や女性もよく見かけるようになった。サービスエリアで見かけたBMWの『R1250RS』に乗る50代のユーザーは「以前から憧れていた高級ブランドで、一度は乗ってみたかった」と話すが、今や、昔からの『憧れの高級ブランド』というポジションはもちろんだが、年齢層や性別、バイク歴に関係なく幅広い層から支持を得ているブランドとなっている。
では上半期、どのようなモデルがユーザーから選ばれていたのだろうか。「アドベンチャーモデルを含む『R1300GS』シリーズが人気で、ブランド全体を牽引しするモデルの一つとなっています」(BMW Motorrad)
今のところ、BMWが前年同月比でマイナスとなったのは5月のみ。昨年、BMWは国内において6208台を販売し、初めて6000台を突破した。このまま上半期の調子が続けば、新たな記録が生まれる可能性は非常に高いだろう。それだけではなく、日本で最も売れている海外ブランドの一つとなる可能性も見えてきている。
BMWと同様に、国内販売の新記録を達成する勢いを見せているのがトライアンフ。上半期の新規登録台数は2871台。前年同期比では0.8%マイナスと、惜しくもプラスにはならなかったが、5月末までは前年同期比プラスとなっており、下半期の状況によっては、年間初の5000台も夢ではない。昨年3月から今年2月にかけての1年間でトライアンフは累計販売台数が5008台となり、トライアンフモーターサイクルズジャパン初の年間5000台を達成したが、1月から12月までの1年間の販売台数では、昨年の4898台が最高となっている。
しかし、ここ数年におけるトライアンフの成長はめざましく、コロナ禍前の2019年の累計販売台数は1958台。それが、2020年には2389台、2021年には3183台、2022年には3397台、2023年には4108台と飛躍的な伸びを見せており、昨年は4898台と2019年の2.5倍強にまで伸長。もし、今年5000台に到達しなくても、大台達成は時間の問題だろう。
現在人気となっているモデルや、ユーザーから広く高く支持されている理由について、トライアンフモーターサイクルズジャパンに話を聞いた。
「ここ数年、力を入れてきた販売網の拡充、ブランドが持つ歴史、個々のプロダクトの性能、走りの確かさとフィーリング。それらが、お客様から高評価をいただいている理由だと捉えています。製品では、昨年末に生まれ変わった『スピードツイン900』、トライアンフ初の400ccシリーズの『スピード400』『スクランブラー400X』が、特に高い支持をいただいています」
このほか、製品面では7月1日にモダンクラシック、ロードスター、アドベンチャー、ロケットのモデルに新たな12色のカラーを追加。個々のモデルの魅力だけではなく、次にどんなモデルが出てくるのだろうか、そんなワクワク感を与えてくれるところも、トライアンフがユーザーから支持されている理由の一つかもしれない。
もう一つ、取り上げておきたいブランドがロイヤルエンフィールド(以下、RE)。上位5ブランドの中で最も高い伸び率で、上半期は前同期比で44.6%のプラス。約1.5倍に成長しているのだ。SNSを見ていると、とにかく女性人気が高い。REが愛車という女性のバイク系インフルエンサーが何人もおり、ユーザーの中にはインフルエンサーに影響されて「○○さんが乗っているから」という理由でREを購入する人もいるほど。もちろん、インフルエンサーの影響力だけでは販売数はここまで伸びない。製品や価格面の魅力との相乗効果によるものだ。モノが良くなければ、そもそもインフルエンサーに愛車として選ばれることはないからだ。
さて、下半期はどのような展開を見せるのだろうか。ハーレーは復調するのか、BMWやトライアンフはどこまで台数を伸ばすのか。ドゥカティとREは上位3ブランドにどこまで近づくことができるのか。上位5ブランド以外のブランドがどこまで販売数を伸ばしてくるのか、新たな注目ブランドが出てくるのかなどなど、下半期の結果を楽しみに待ちたい。
輸入のことを書いてきたが、少しだけ中古二輪の輸出についても触れておきたい。表3は財務省の発表している、2021年からの中古二輪車の輸出状況をまとめたもの(7月11日現在の発表データは5月までのため、各年とも同一期間での対比)。
2021年に比べて2025年は、50cc以下が2万台以上減少。この傾向は2024年から始まっており、2024年のデータと比較しても、今年は1万5000台以上のマイナスと、減少傾向がかなり大きく加速している。反面、平均単価は2021年と比較して1万円以上高くなっている。
平均単価で見ていくと、全クラスとも2021年から年々上がっており、中でも50〜125ccクラスは、台数は2021年から6000台ほどの増加だが、2021年の平均単価が9万3000円ほどだったのに対して2025年は17万5000円ほどと倍近くになっている。また、50〜125ccクラスほどではないが、250〜500ccクラスも2021年の平均単価が19万5000円ほど(台数は2237台)だったが、2025年は34万4000円ほど(同2408台)になっている。同様に、500〜800ccクラスは約69万円(2021年は36万4000円ほど)、800cc以上のクラスは約87万円(同44万8000円ほど)となっている。
この500cc以上の2クラスは、平均単価だけではなく、台数の増加も著しい。500〜800ccクラスは1620台(2021年)が4050台と2.5倍。800cc以上のクラスは2448台(同)が5202台と2倍強。平均単価も台数も年々増加している(800以上のクラスは2024年から台数が減少しているが、傾向としては増加傾向にある)。
台数としては250ccまでの2クラスは万単位なので他クラスとは桁が違うが、伸びで見てみると500cc以上の2クラスが頭一つ他クラスから抜けている。
全体の金額面では、2021年が約65億円だったが、2025年は153億円超と2倍以上になっている。排気量の大きなクラスの台数も単価も上がっているのはニーズがあるからこそ。国内市場だけを見るのではなく、輸出に目を向けておくのも、やはり重要だ。
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