自工会業界トピック

【自工会記者会見】原付一種の区分追加に伴い迎えた変革期

公開日: 2025/11/03

更新日: 2025/11/06

自工会は9月18日、日本自動車会館で記者会見を開催した。出席者は片山正則会長をはじめとする正副会長7名。片山会長は、日米通商問題や令和8年度税制改正要望について説明を行い、また、10月30日に開幕の「Japan Mobility Show(ジャパンモビリティショー)2025」について、それぞれ抱負を語った。

消費財としてのモーターサイクルと共に、日本の文化に根差すよう活性化に注力

まず片山会長は日米の通商問題について、合意後の税率15%が適用されない状況が続いたが、最終的に米国政府は9月、自動車および自動車部品関税に関する官報を公表し、9月16日より新たな関税率が適用となったことを改めて報告。自動車および自動車部品関税として適用される税率15%は、米国が他国に課す税率と比較しても劣後していないことを強調した。

また、この合意により、サプライチェーン全体を含めた日本の自動車産業への壊滅的な打撃は緩和されたが、関税がもたらす自動車産業へのインパクトは依然大きい。自動車メーカーのみならず、サプライチェーン全体にもその影響が及んでいるのが現状。こうした状況を鑑み、日本政府に対し引き続き米国政府と開かれた自由貿易に基づくビジネス環境に向けた議論の継続を要請した。

続いて令和8年度税制改正要望に関して、同日開催された理事会において審議を行い決議したことを報告した。内容については会見後に公表する、としたうえで、重要要望について述べた。

「日本の自動車産業の競争力や雇用が失われないようにするためには、国内での生産をいかに維持し強化していくかが、喫緊の課題。不確実性が増す世界、グローバル市場において、最も信頼でき、確固たる軸となるのは、日本の市場、国内の需要だ。だが、日本の自動車ユーザーにとって車体課税は依然大きな負担。国内の健全な需要環境への妨げとなっている。これを軽減し恒久的な国内需要の維持・拡大に繋げることにより、国内の生産基盤、サプライチェーンを引き続き支え、産業全体の基盤を確固たるものにしたい。本年の最重点要望として、取得時の『環境性能割』は、単純廃止するよう強く求める」

また現在、ガソリン税暫定税率廃止と、それに伴う代替財源を巡る議論についても言及。代替財源を車体課税の引き上げにより穴埋めするという声について、「ガソリンなどの暫定税率の代替財源を車体課税に求めるのは本末転倒。自工会としては、ユーザー負担増に繋がることは断固反対する」と力説。車体課税の抜本見直し議論において、積年の車体課税の課題に結論を出し、自動車関係諸税の簡素化・軽減を実現し、ユーザーにとって納得感のある税制を構築していただきたい、とした。

続いてテーマは「7つの課題」に移った。正副会長自らが各テーマのリーダーとなり取り組んできた結果、「7つの課題」という言葉は世の中に浸透し、自動車産業以外の方にも注目されている。多くの方と幅広い議論を重ねることができている。その進捗について今秋、経団連モビリティ委員会で各種産業関係者に説明できるよう、準備を進めていることを明かした。

さらに、サプライチェーンを含む自動車業界全体での「賃上げの好循環」を加速させるため、労務費の価格転嫁や、型取引などの過去の商慣習の見直しに取り組んでいることを説明した。取引の適正化について、自工会と部工会は深い議論を隔週で実施し信頼関係を築き上げてきた、と強調。その取り組みの一つとして、部工会と連名で、自動車産業の競争力強化に向けた適正取引の更なる推進を要請するメッセージレターを400社以上の自工会および部工会の会員各社に届けたという。

サプライチェーン全体における適正な取引は、日本の経済全体の好循環につながる活動であり、自工会と部工会が連携して賃上げを含む経済循環をさらにリードしていくという想いを一つにし、責務を果たす、とした。

最後に自工会が主催する最も大規模なイベントである「Japan Mobility Show( ジャパンモビリティショー)2025」について片山会長は次のように説明した。

「モビリティは単なる移動手段ではない。人々の心を震わせ、暮らしの記憶や価値観さえも形づくってきた。モビリティが持つ力を信じ、不確実な時代だからこそ、未来への希望を届けたいと考えている。今回はクルマ愛、バイク愛にもスポットを当て、これらをこよなく愛する方にワクワクしてもらえるコンテンツを用意する」と強調した。

この後、副委員長がそれぞれコメントを発表したが、ここでは二輪車委員会の設楽委員長のコメントを紹介する。

「今春、原付一種の新区分が追加され変革期を迎えている。国民生活に密着したこの領域は、消費財としてのモーターサイクルと共に、日本の文化として根ざすよう業界全体で活性化に取り組む。今回のモビリティショーでは、国内二輪4社合同で、その一端を理解してもらえるような企画を準備している。個社の話だが、ヤマハは今年創立70周年を迎えた。モビリティショーでは、ワクワクする未来を探しに行こう、というコンセプトのもと、弊社の価値創造の礎である人間研究に基づいた研究開発中のプロットモデルなど、多彩な出展を計画している。人間中心のものづくりで、人々の楽しむ意欲、挑戦する心の背中を押すヤマハ発動機の一端を、ヤマハ株式会社ミュージックと共に、ボーカロイド・『初音ミク』さんなどを起用して、若い世代にも訴求できるショーを展開する」と表明した。

質疑応答

Q. モビリティショーでの合同展示の内容について教えてほしい。
A. 合同展示は二輪の活性化がポイント。新基準原付の展示はない。需要活性化のために新しいアプローチとして4社合同の展示を行う。ここは二輪文化の原点。レースシーンに焦点を当て、五感に訴えるような展示とする。展示は屋外で行う。いま、アウトドアを含め野球、サッカー、アクティビティは動員数が非常に増えている。バーチャルではなくリアルの世界の重要性は、我々二輪メーカーも重要視している。その原点であるレースシーンを、従来のレースファンだけではなくこれからレースを見てみたいという層にも訴求するべく準備を行っている。

Q. 新基準原付の交通法規等に関する一般への周知についてはどうか。
A. ルール改正に基づき様々なサイトやサイネージなどで告知を行っている段階。警視庁からの報告では、間違った乗り方による摘発例はないとのこと。告知効果は出ていると思うが、気を抜かず継続して新基準原付に関するアプローチを行う。



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