公開日: 2025/12/02
更新日: 2025/12/08
1893年に発表された、動く映像が見られる装置「キネトスコープ」や、1895年に開発された、スクリーンに映像を映写できる「シネマトグラフ」から歴史が始まった「映画」。1990年代からはデジタル技術やCGが導入されるなど、技術の発展と共に様々な作品が生み出されてきた。そんな映画は現在、AIで生成する時代へと突入している。
一般社団法人AI日本国際映画祭は11月2日~3日の2日間、Tokyo Innovation Base(東京都有楽町)でAI技術と映像表現の融合をテーマとした「第1回 AI日本国際映画祭2025」を開催した。同イベントは日本初、アジア最大級のAIを活用した映像作品に特化した映画祭。長編や短編を含む70作品以上の映画を上映した。
AI映画はすでに世界で注目されており、4月にはフランスのカンヌで世界初のAI映画専門国際映画祭「WORLD AI FILM FESTIVAL」を開催。2026年3月には日本での開催も決定している。
AIを活用した映画だが、パソコン1台でも作れてしまうという。通常、映画を作るのであれば、撮影したい現場へと向かい、役者をカメラで撮るという工程が必要。AIの場合は、登場人物や舞台などの情報をキーワードとして入力することで、自動で動画を生成することができる。5秒程度の動画であれば、約1分で生成することが可能であり、ストーリーの着想さえあれば、だれでも映画を作ることができるのだ。
現在、映像だけでなく音声や音楽なども生成できるほど、飛躍的な進歩を遂げているAI。しかし、多くの俳優たちからは仕事が奪われる可能性が懸念されている。今年9月にスイスで開催された「チューリッヒ映画祭」では、世界初のAI女優「ティリー・ノーウッド」が正式に発表された。これに対し、ハリウッドスターや米映画俳優組合からは、多くの俳優たちの演技を学習したAIが仕事を奪う恐れがあるとして、抗議の声が挙がっている。
これまでにも、米映画俳優組合ではAIの活用に対する抗議が行われている。2023年にはAIの活用制限などを求め、組合で過去最長となる約4カ月間の大規模なストライキを実施した。
日本でも生成AIの活用については、様々な問題がある。AIに人気俳優や声優の声を学習させ、朗読や歌唱を行わせた動画が投稿されているほか、生成AIの無断販売も行われているというのだ。日本俳優連合が2023年12月~2024年2月かけて行った調査によると、少なくとも267人の俳優や声優の声がAIの学習に利用されていることが判明した。
問題を重く見た声優や芸能プロダクションなど3つの業界団体は、2024年11月に記者会見を実施。今後、国や制作会社などの業界に対し、生成AIに関するルールの整備などを求めるとしている。
技術が進化し続け、リアリティが高まっていく生成AI。だからこそ、人とAIが共生していくためにも早急な法律の整備が求められる。また、これを当事者だけの問題にはせず、我々自身も生成AIとの付き合い方を考えていかなければならないだろう。
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