公開日: 2026/08/10
更新日: 2026/08/13
川崎重工業が開発を進める4本足新型モビリティ「CORLEO(コルレオ)」の進捗発表会が7月28日に開催されました。会場では、大阪・関西万博で展示された実体モデルと同サイズのモックアップが初公開され、バイクジャーナリストの小林ゆきさんが足つき(またがり)インプレを行いました!
こんにちは。バイクジャーナリストの小林ゆきです! 今日は川崎重工が手がけております、4足歩行・走行ができる新しい乗り物「CORLEO(コルレオ)」の進捗状況の発表会に出席させていただいております。コルレオというもの、先の大阪万博で展示・発表され話題になりました。そして、なんと今日はコルレオにまたがれちゃうとのことですので、いつものように、足つきインプレを行っていきたいと思います。
私は身長160cm、手足短めでございます。シート高は1mくらいあるのではないでしょうか。私の股下は70cmないくらいですが、身長160cmに対してこのくらいの高さ感です。本物の馬よりは2回りほど小さい印象ですね。では、いよいよ、またがっていきます。そもそも足をつけて乗る乗り物ではないので、説明にあった「あぶみ」というステップを使って乗っていきます。ハンドルはハンドルというよりレバーのような感じ。左のあぶみに足を乗せて……またがります!
すごい! 壇上に上がっている分を差し引いても、かなり見通しが良いです。トラックのシートより高い目線ではないでしょうか。またがった感じはハンドルとシッティングポジションがだいぶ楽です。ご覧のように、殿様乗りのような感じですね。馬にスタイルがかなり近いんじゃないかなと思います。足元も馬に近いスタイルかもしれません。オートバイよりシートが少し広く、それに対して足元がすぼまっている印象です。
また、山を駆け回るイメージで開発されたというシートは幅が広く、前後にかなり余裕があります。スウェードっぽい素材なので、滑り止めが効いている感じがしますね。
左右にバンクするイメージはありませんが、片足ずつ体重をかけるとこんな感じ。かなり自由度があります。丸みを帯びたシートなので、さまざまなスタイルで運転操作をすることができると思います。現時点ではハンドルは固定されていますが、しっかりと握り込める形状になっています。
ということで「足つきインプレ」ですが、もちろん両足を伸ばしてもつきません(笑)。片足でも当然つきません。ただ、足をついて乗るタイプではない「新しい乗り物」ということで、今回はコルレオのまたがり体験をさせていただきました。
私の顔と同じくらいの高さにハンドルがありますが、ちょっと細かく見ていきましょう。
まず、前脚の付け根の上に「CORLEO」のロゴがありますね。そして、随所にちょいちょいバイクを思わせるような雰囲気のあるパーツがあります。あぶみに「Kawasaki」のロゴがあるのは当然として、あぶみの根元部分のデザインなどにも、いちいちバイクっぽいニュアンスを感じます。
さらに、後ろ脚の付け根の上には「H2」のマークがあります! H2といえば、私が乗っているスーパーチャージドエンジンかと思いきや……実はそちらではなく、「水素エンジン」を発電用の動力源としてここに搭載する構想なのだそうです。
その発電用水素エンジンですが、大阪万博の段階では150ccのターボエンジンを想定していたものの、開発が進んで排気量がアップする予定とのこと。しかも、スーパーチャージャーを装着する予定だそうです!
バイク乗りとしては「今後はオートバイにもこの水素エンジンとスーパーチャージャーが応用されるのでは?」と期待してしまいますよね。しかし、本日の発表会の質疑応答によると、これはオートバイ用ではなく「発電用に特化したもの」とのこと。高い出力を維持しつつ低燃費を実現する設計で、将来的には一般的な発電機などに応用されてお披露目されるかもしれない、というお話まで伺えました。
そしてカワサキらしい要素といえば、このグリーンの円形の関節パーツがすごく気になります! シルバーにグリーンの組み合わせは、最近のカワサキに多いカラーリングですよね。一方で、後ろ姿は少し動物ライクな造形になっています。
脚部には関節がたくさんあり、足首もしっかり作られています。足で地面を蹴って走行するスタイルは、オフロード走行を想定しているからとのこと。タイヤの方が開発は簡単そうに思えますが、タイヤだと、オフロードって横に滑ったりとか、その辺の制御が、まぁ難しいといえば難しい。そのため、今回の「4足歩行」という構造が大きなミソかなと思います。
もう一個見つけちゃった。フロント周りのデザインもやっぱりオートバイ風味で、まるでラジエターの風の取り込み口のようにも見えるデザインになっております。
小林―――ということで、今回はデザイナーさんの福本さんにお越しいただきました! 肩書きがすごいですよ、社長直轄プロジェクト本部 SAFE ADVENTURE 事業総括部 プロダクトデザイン部 機構デザインチーム スタイリングデザイナー。福本さんといえば、カワサキの名だたるオートバイを手掛けてきたデザイナーさんですよね。
福本―――はい、長いことやってきましたね。
小林―――業界に君臨されている福本さんですが、今回の「コルレオ」にも一丁噛んでいるということで。
福本―――一丁というか、頭までしっかり埋もれるくらい噛んでいます(笑) 。
小林―――本日は羽田イノベーションシティで進捗発表会があったわけですが、お話を聞いて驚いたのが開発手法です。大阪万博で発表された際、モックアップを作る段階でオートバイの形から削ったり足したりして進めたと伺って意外でした。
福本―――そうですか?
小林―――はい。馬や四輪車からスタートするのではなく、カワサキとしてオートバイのモックから着手されたんですね。ちなみに、どっちかというと足したんでしょうか? 削ったんでしょうか?
福本―――馬の形から入るようなことは全然なくて、最初からオートバイの開発手法をそのまま入れようとしていました。人間がまたがる以上、人間のポジションというのは基本的にそこまで大きく変わらないですからね。であればオートバイからそのまま持ってきた方がいいということで、開発チームも何の疑問も持たずにその手法で進めました。
小林―――先ほどコルレオのまたがり体験をして、真っ先に福本さんの顔が見えたので感想をお伝えしたんですよね。特にステップ、あぶみとライダーの位置関係ですが、意外とあぶみが内側に追い込まれていました。オートバイ乗りの感覚からすると「これはホールドしやすい位置だな」と感じたのですが、実は「機構上、足を動かすため」という技術とデザインが融合した結果だと聞いて納得しました。またがっただけですが、あの形状がホールド感に繋がっているのが実感できました。
福本―――ありがとうございます。おっしゃる通りです。乗馬だとまたがった内側に人間の両脚が来ますが、コルレオは逆なんです。感覚としては四輪バギーに近いですね。メカニズムとしてロボットの脚が動くので、人間の脚はできるだけ内側、ロボットの脚は外側で動かす。そのためのゆとりを確保するためにシートを絞っているんです。
小林―――出来上がった姿は4足歩行なので馬に近い印象ですが、バイク乗りが見ると「カワサキのバイクのエッセンス」がしっかり散りばめられていますよね。そのあたりも見どころですね。
そして今日の発表で、次の「コルレオ X1」では形が変わるとのことですが……。ここだけの話、BDSバイクセンサーの視聴者さんに向けて、どの辺が変わるのか教えていただけますか?
福本―――全部ガラッと変わります!
小林―――カワサキのオートバイのエッセンスが、また新しい形で盛り込まれるわけですね。ちなみに、次の「X1」はいつ頃の発表予定でしょうか?
福本―――さっきの説明では、来年の初頭ぐらいって言ってましたね
小林―――言ってましたね(笑)。結構すぐですよね!
福本―――そうなんです。だから全然時間がないんですよ(笑)
小林―――次回も楽しみにしております。ありがとうございました!
福本―――こちらこそありがとうございました。
今日はコルレオの進捗状況や設計思想についての発表会だったわけですが、皆さんが一番気になるのは「将来的にどう一般にお披露目され、発売されていくのか」という点ですよね。
まず、現時点でカワサキは「一般公道を走らせる(歩かせる)」ということは考えていないようです。そして今日、設計の方が冒頭ではっきり明言されていたのが、「これはロボットではない。乗り物として開発している」ということでした。
乗り物としての次のビジョン、ロードマップとしては、例えば「コルレオパーク」のような専用施設を設けて、まずは「FUN TO RIDE(乗る楽しさ)」を体感してもらう方向性を考えているそうです。オフロード走行ができる4本足の新しい乗り物とはどういうものなのか、まずは自由に乗って楽しんでもらおうとカワサキは今考えているそうです。
このあたりは実にカワサキらしいなと感じました。カワサキは昔から「ATV(四輪バギー)」などのオフロード車を手掛けており、北米市場などを中心にレジャーや競技用として普及させてきた実績があります。
一方で、それらは農場や牧場などの作業用としても深く根付いています。そうした土台があるからこそ、コルレオも単なる「FUN TO RIDE」だけでなく、将来的に災害救助や農場・牧場での活用といった未来が描けるのかなというように思いました。発表会で、「人の可能性を拡張する移動体験の設計思想」ということで、アーキテクチャーや設計思想についてかなり詳しく解説されました。
その中で特に感銘を受けたのが、「ライダーを常に開発に組み込む」という姿勢です。近年のモビリティ開発ではコンピューター上のシミュレーションが当たり前になっていますが、カワサキは人を単なる「評価対象」として見るのではなく、「設計要素」として組み込んでいるんです。この考え方は非常に深いと感じました。
さらに、今回はタイヤではなく「4本足」です。100年以上の歴史を持つ二輪や四輪は「円運動するタイヤ」のデータやテスト結果が膨大に蓄積されていますが、4本足のモビリティにはそれが一切ありません。だからこそ、設計思想そのものをゼロから再構築しているそうです。ここまで内部の深い設計思想を公開してしまっていいのかと思うほど、見ごたえのある発表内容でした。
さて、少し難しいお話をしましたが、このコルレオが今後どうなっていくのか。まずは次のステップとして「コルレオ X1」というものに変わっていくんだそうです。そして、2030年のサウジアラビア万博に向けて、大阪万博では立ち上がることしかできなかったコルレオを「実際に歩かせる」ことを目標に開発を続けているそうです!
4年後の2030年のサウジ万博を楽しみにしたいと思います!
【小林ゆきさん略歴】
横浜育ちのバイクブーム世代。バイク雑誌の編集者を経て、現在はフリーランスのライダー&ライター。バイクを社会や文化の側面で語ることを得意としている。愛車は総走行距離25万kmを超えるKawasaki GPz900RやNinja H2など10台。普段から移動はバイクの街乗り派だが、自らレースに参戦したり鈴鹿8耐監督を経験するなど、ロードレースもたしなむ。ライフワークとしてマン島TTレースに1996年から通い続け、モータースポーツ文化をアカデミックな側面からも考察する。
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2030年のサウジアラビア万博で実際に歩かせることが目標
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