JAMA自工会

電車・バイク・自転車で、それぞれの通勤所要時間を自工会が検証

公開日: 2020/11/17

更新日: 2022/09/06

 会社への通勤手段は、電車やバスなどの公共交通機関をはじめ、クルマ、バイク、自転車などが一般的だが、こうした現状を受け政府は民間企業に呼びかけを行い、自転車通勤を推進する取り組みを始めた。

 自転車は環境にやさしく、災害時に役立つうえ、交通渋滞を緩和し、国民の健康増進につながるといった理由に基づくものだ。だが、これは自転車のみならずバイクにも言えること。政府が後押しする自転車通勤のメリットに照らし合わせつつ、バイク通勤のメリットについて検証した。

国や自治体が自転車通勤を推進

<center>左から「優良企業」のロゴマーク、「宣言企業」のロゴマーク</center>
左から「優良企業」のロゴマーク、「宣言企業」のロゴマーク

 国土交通省・自転車活用推進本部は4月、「『自転車通勤推進企業』宣言プロジェクト」をスタートした。

 自転車通勤を奨励する企業・団体を認定することで、自転車通勤の普及拡大を図るのが目的。認定の要件は、①「従業員用の駐輪場の確保」 ②「交通安全教育の実施」 ③「自転車損害賠償責任保険等への加入義務化」の3つ。認定されると、「宣言企業ロゴマーク」の使用が認められ、ホームページや名刺にロゴを表示し会社のPRに活用できる。また、宣言企業のなかから、自転車通勤者の多さや独自の取り組みなどにより「優良企業」の認定も行う。今年度内には「優良企業」が選出される見通し。

 このプロジェクトは、2016年に制定された『自転車活用推進法』の施策として行われている。同年、自転車活用推進本部が設置され、翌17年6月には「自転車活用推進計画」が立案されている。これにより、「自転車月間」(毎年5月)、「自転車の日」(毎年5月5日)における活動や、自転車専用道路および駐輪場の整備促進、シェアサイクル施設の拡大、災害時活用など、自転車を活用するための総合的な取り組みを展開している。

 また、地方自治体にも自転車通勤を推進するところが出てきている。愛媛県の「自転車ツーキニスト推進事業所登録制度」、栃木県宇都宮市の出前講座「自転車通勤のススメ」、警視庁の「自転車安全利用モデル企業制度」などだ。今後、同様の施策が増えることが予測される。

自転車通勤制度導入の手引きを作成

 自転車活用推進本部の政策連携機関「自転車活用推進官民連携協議会」は2019年5月、『自転車通勤導入に関する手引き』という冊子を発行した。

 内容は、自転車通勤のメリットを紹介し、企業が自転車通勤制度を導入するに際し検討すべき事柄を解説したもの。自転車通勤の対象者、対象自転車、通勤経路と距離、目的外使用、通勤手当、安全とマナー、事故時の対応、保険加入、駐輪場等の設備など、社内制度のルール作りについて記している。基本的な考えは、バイク通勤制度を導入する場合にも参考にできる内容。新しい時代に対応した通勤制度について考え、見直しをする際の資料だ。

自転車通勤のメリットをバイクに当てはめてみると

『自転車通勤導入に関する手引き』では、会社が自転車通勤を導入することにより得られる事業者のメリットと従業員のメリットとを整理して紹介している。

 事業者のメリットについては、電車通勤や自動車通勤から自転車に転換することで生じる「費用の削減」を第一に挙げている。次に、自転車に乗って気分よく通勤することで、心身ともに健康維持・増進がなされ、仕事の「生産性の向上」が期待できる、としている。さらに、環境にやさしい健康的な企業としての「イメージアップ」を図ることができ、「雇用の拡大」にもつながるとアピールしている。

 では、これがバイクだったらどうだろうか。自工会では自転車をバイクに置き換えて考察を行った。まず「経費の削減」について。場合によってはバイク通勤による効果も期待できるだろう。自動車通勤が主流となっている企業なら、通勤手当や駐車場費用の削減が図れるだろう。 「生産性の向上」については、バイクも自転車と同様に期待できる。バイクは走行すること自体に爽快感が得られる乗物。混雑した電車やバスのストレスから解放されるうえ、バイクを運転することで気持ちの切り替えができ、集中力の向上にもつながる。事業者がバイク通勤を導入する大きなメリットと言えそうだ。

 従業員のメリットについては「通勤時間の短縮」が挙げられる。500m〜5㎞ほどの距離なら、自転車の所用時間は他の交通機関よりも短い。

 また、「身体面の健康増進」、「精神面の健康増進」もメリットとして挙がっている。 「通勤時間の短縮」については、バイクにも優れた効果が期待できる。この点は自工会が過去に実測調査を行っており、東京都内の渋滞した道路(都内三原橋交差点〜上野駅前交差点3・4㎞)と、渋滞していない道路(都内等々力不動前交差点〜武蔵新田駅前交差点5・8㎞)について、交通機関別に移動時間を実測している。バイク(特に原付二種)が最も迅速な乗り物という結果となった。バイク通勤は、わずかではあるが、他の通勤手段よりも所要時間が短く、通勤距離によっては自転車以上の効果が期待できそうだ。

 次に「身体面の健康増進」について。バイクの運転が通勤シーンで「適度な運動」になるとは考えにくい。むしろ肉体的な運動量が小さいことで、疲労や発汗量も比較的少なくて済むなど、バイクならではの大きなメリットと捉えることもできるだろう。

 最後の「精神面の健康増進」については、先に述べた通りバイク好きな人であれば、仕事の行き帰りにバイクに乗ることで高揚感が得られ、気分をリフレッシュできるものと考えられる。精神面の健康にはよい影響が得られそうだ。

自転車・バイクで〝模擬通勤〞を実施

 ここまでの考察を検証するため、都内で仮の通勤区間を設定。被験者に電車、自転車、バイクそれぞれで移動してもらい、走行距離と所用時間を計測し、交通手段ごとのメリットとデメリットについて聞いた。

 被験者は東京都豊島区の27歳男性。所有する400㏄バイクを実験に使用。自転車は24インチのシェアリングサイクルを使った。起点は豊島区池袋3‐3‐10の駐輪場で終点は新宿区西新宿2‐8‐1の東京都庁第一庁舎。平日朝8時に「模擬通勤」を実施した。

 電車は東京メトロ副都心線要町駅から都営大江戸線都庁前駅までを利用。自転車とバイクはネットのルート検索を使い、最適ルートを通行した。どの交通手段も、徒歩で移動した区間も含めて所用時間を計測。バイク・自転車は、遵法走行に徹した。

 結果は表の通り。所用時間が最も短かったのはバイクの29分、電車は30分、自転車は33分だった。バイク・自転車は、道路の混雑状況や赤信号の数に影響を受け、電車は乗り継ぎのタイミングによるタイムロスもあった。1回だけの実験では参考データでしかないが、現実的な結果の一つであることは間違いない。実験結果について、被験者は次のように語った。

【電車通勤の感想】
「電車通勤は乗り換えに7分かかりましたが、乗車時間は短く、わりと早く着きました。電車には日常的に乗っており、移動中は仕事のことをボーっと考えたりしています。ただ、混雑した電車内ではウイルス感染が気になるので、ストレスを感じます。会社が自転車通勤かバイク通勤を認めてくれるなら、電車通勤をやめて、どちらか都合のいい方を選択しようと思います」

【自転車通勤の感想】
「自転車通勤のメリットは、移動費用がかからないということに尽きると思います。都庁周辺の駐輪場も1日100円程度なので、毎日でも負担になりません。6㎞近く走りかなりの運動になったので、体力づくりをしたい人にはおススメです。ただ、私の場合は、坂がきつくて3㎞が限界かなと思いました。夏場は汗だくになるので、着替えが必須です。あと、普段はあまり意識しませんでしたが、スマホに示されたルートが自転車で走っていい道なのかが不明な区間があり、違法走行でないか不安でした。歩道での走行も、人や自転車の飛び出しが気になりサイクリング気分というわけにはいかないと思います」

【バイク通勤の感想】
「ストレスなくラクに移動できたという点では、バイクが一番です。安全運転に集中できて、仕事のことを考えたりすることもなくなりました。これは私にとって大きなメリットです。ただ、渋滞のため爽快感は得られませんでした。赤信号の多さも気になりました。この日は雨予報だったので、レインウェアを着たのですが、にわか雨にも困りませんでした。さすがに雨だと自転車では出かけたくないですね。会社に駐車できるスペースがあればいいのですが、自分で確保するとなると費用がかかります。そのあたりが気になったところです」

 バイク通勤のメリットとデメリット、引き続き検証していく必要がありそうだ。



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