AJ法改正

東京都江東区、条例改正で自転車駐車場への原付二種受け入れ始まる

公開日: 2021/06/25

更新日: 2022/09/06

足掛け3年で実現した、区立自転車駐車場への自動二輪車受け入れ

 昨年、日本自動車工業会が発表した「2019年度二輪車市場動向調査」。この中に、「乗っていて気になること」という質問があるが、これに対して29%の人が「外出先での駐車に困る」と回答した。また、「解決されたら乗車機会が増える」と回答した人のうち20%が「外出先での駐車に困る」としている。

 二輪の駐車場は依然として不足しており、解消の目途がなかなか立たないのが現状。なかでも人口が多くスペースの確保も難しい都市部では、大きな問題となっている。

 そのような中、4月1日に東京都江東区で改正江東区条例が施行された。自転車駐車場には、これまでは50㏄の二輪車しか停められ なかったが、条例の改正によって、自動二輪車(50㏄超の二輪車)も利用が可能となった。

「東京オートバイ協同組合(以下、AJ東京)では2017年から、江東区に自転車駐車場への自動二輪車受け入れを要望していました。改正条例が可決されたのが2020年12月。満場一致で可決したようです。足掛け3年でようやく実現しました」

 こう話すのは、江東区にあるハーレーダビッドソン亀戸を運営する株式会社マップランの代表取締役社長であり、AJ東京の理事長を務める野間健児氏。

「当時、原付二種が急増していました。原付一種と車格はほとんど変わらないにもかかわらず、原付二種は自転車駐車場を利用できない。これはなぜか、という疑問が要望の発端です。それ以前からも、停める場所がないという状況は大きな問題になっていまして、もともとスーパーカブなどに乗って現場に行っていた水道工事の方や大工さんから『停める場所がない』という声が相次ぎ、次々と二輪車から軽トラに乗り換えてしまった。軽トラなら停める場所があるから、というのがその理由です。その頃から何とかしなければならない、と感じていました」

<center>株式会社マップラン代表取締役社長・AJ東京理事長 野間 健児氏</center>
株式会社マップラン代表取締役社長・AJ東京理事長 野間 健児氏

 条例を改正するのは江東区。区議会でも、駐車場問題はかねてから検討材料の一つだったという。

「自転車駐車場における自動二輪車(特に125㏄以下のもの)の受け入れ推進については、国土交通省からの通知や区議会での要望等を受け、検討してきました。受け入れにあたっては、自動二輪車を駐車するスペースの確保や既存施設の構造的な問題、駐車場法や消防法等、関連法令への適合性などの法的な問題をクリアしつつ、自動二輪車を受け入れるだけの余裕の有無のほか、自転車や原付の利用状況等も確認する必要があります。慎重に検討を進めてきた結果、一部の既存施設において、これらの問題をクリアし自動二輪車を受け入れる準備が整ったため、令和3年度より条例を改正し、受け入れを開始したのです」(江東区・土木部・交通対策課・自転車対策係)

 AJ東京の要望や国交省の通知、江東区の前向きな検討、この3つが組み合わさったことにより条例の改正が実現したのだ。

江東区の実例をまとめたパンフレットを片手に、他の区とも交渉中

「条例を改正して明文化するというのは、東京都では江東区が初めてだと聞いています。杉並区でも同じような取り組みをしていますけど、条例は改正されておらず、運用レベルでの対応となっています。私たちの組合活動として、条例が改正されたというのは『大快挙』と言える出来事だと思っています」(野間理事長)

 また、江東区の条例改正については、公明党オートバイ議員懇話会の北側一雄会長(公明党副代表)をはじめとする公明党議員の尽力が大きいという。

「北側先生から『江東区からやろうよ』との話を頂きました。北側先生を筆頭に、公明党の先生方には積極的にご協力頂きました」(野間理事長)

 現在、条例が改正されたのは江東区だけだが、他の区にも働きかけているところだという。

「例えば、江東区の隣の墨田区や江戸川区、足立区などですね。江東区も条例が改正されたといっても、駐車スペースの問題がありますので、区が管理する自転車駐車場全てに原付二種が置けるようになったわけではありません。そのようなスペースの問題はどの区でも一緒でしょうから、江東区は良い前例になると考えています。江東区の実例をまとめたパンフレットを片手に、AJ東京の役員、この取り組みに賛同頂いている議員の方々と各区を歩き回っています。自転車駐車場への自動二輪車受け入れは、23区全てに広げていきたいと考えています」(野間理事長)

江東区内には、区立自転車駐車場が50施設あるが、そのうち3施設において、原付二種までの駐車が可能となっている。

「駐車可能な3つの施設とその収容台数については、『亀戸駅北口第三自転車駐車場』が20台で定期利用のみ、『南砂町駅西口自転車駐車場』が7台で定期利用のみ、『新木場駅南自転車駐車場』が45台で一時利用のみ(駐車エリアは原付一種と共用)、3施設合計で72台の駐車が可能です。区立自転車駐車場のなかには、歩道上に設置しているために自動二輪車の駐車スペースが確保できない施設もあります。このことから、全ての区立自転車駐車場で自動二輪車を受け入れるのは難しいと思いますが、利用状況を見つつ、受け入れ台数については拡大を検討していきます」(江東区)

条例は『自動二輪車全体』。より大きな排気 量の受け入れも検討中

<center>亀戸駅北口第三自転車駐車場</center>
亀戸駅北口第三自転車駐車場

 区の管理する自転車駐車場ではなく、民間の運営する駐車場はどういう状況なのだろうか。

「民間の駐車場に関しては、スペース提供のお願いはできても、判断するのはオーナーの方なのでなんとも言えませんが、組合としては民間の駐車場にも働きかけています。最近増加している『民駐(駐車場シェアリング)』も含めると駐車場の数があまりにも多く、全部を把握するのは難しいですが、少しずつでも増やせていければと思います」(野間理事長)

 現在は125㏄までの受け入れだが、今後、より大きな排気量の利用は可能になるのだろうか。

「今回の改正条例では、今後の展開も見越して、『自動二輪車全体』の受入れが可能となるよう条文に盛り込んでいますが、現時点では、原付一種とほぼ同サイズの原付二種のみの受入れです。より大きな排気量の(より車幅の大きい)自動二輪車の受入れが可能かどうかについては、今後も検討していきます」(江東区)

 コロナ禍の中、移動手段として注目されている二輪車。このタイミングを逃さないためにも、利用環境の整備を推進することは最重要課題の一つだと言える。最後に、野間理事長が今回の自動二輪車受け入れに対する思いを語ってくれた。

「私は、ハーレーという大きなオートバイを販売している関係からなのか、『なんで野間理事長が125㏄のことで動いているのか?』とよく質問を受けます。でも、私自身、オートバイ人生を振り返ってみると、50㏄、原付から始まっています。そのオートバイとの出会いを大事にしたい。オートバイを利用する環境を整え、利便性を高めていくことで、オートバイと出会ってくれる人が増えていくのではないかと感じています。今は、初めてのバイクがハーレーという人もいますが、まずは、125㏄までの原付クラスとの出会いを一番大事にしたい。そのための環境作りとして、停めるところがない、という状況は改善していかなければならないと考えています」

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