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二輪新車総需要台数、2021年は2019年・2020年から約5万台増加

公開日: 2022/06/30

更新日: 2022/09/06

昨年の二輪新車総需要台数※が6年ぶりに40万台を突破し、41万5892台(二輪車新聞調べ)となったことが分かった。この台数は、コロナ禍以前の2019年と比較しても5万台以上も多い。昨今の二輪人気の高まりを示す結果となった。
※二輪新車総需要台数/原付一種・二種の新車国内出荷台数と軽二輪・小型二輪(逆輸入車・海外メーカー車含む)の全国販売台数の合計台数

全クラス合計の総需要台数が40万台以上となるのは2015年以来、6年ぶり!

<center>出典:二輪車新聞</center>
出典:二輪車新聞

二輪業界の現状を知るためのデータはいくつかあるが、その一つが「二輪新車総需要台数(以下、総需要)」。簡単に言えば、二輪の新車が何台売れたのか、というもの。昨年はどうだったのだろうか。

少し話は逸れるが、一昨年あたりからYouTubeを見ていても、「バイク系のVlog(ブイログ=ブログの動画版)を始めました」のような動画を見かける頻度がすごく高くなってきている。

それはYouTubeに限らず、インスタグラム、ツイッター、ティックトックなども同じ。様々なSNSで、当たり前のようにバイク系の投稿者を目にする。しかも、いかにも「バイクに乗っています」風なバイク好きの男性ばかりが投稿しているではなく、20代の女性も少なくない。試しに、ティックトックでハッシュタグ『バイク女子』を検索すると、関連する動画が332.2M回視聴と出てくる(6月1日現在)。1M回は100万回なので、3億3220万回もティックトック上にあるバイク女子の動画が見られているということだ。もう、立派なコンテンツの一つになっていると言えよう。今や、バイクがライフスタイルに溶け込んできているということでもある。

話を戻すが、そういう状況だけに、総需要の増加にも期待がかかるというものだが、その結果はというと、全クラスの合計で41万5892台。

実に6年ぶりに40万台を突破。2020年から4万9968台、13.7%の増加となった。2020年は今も続くコロナ禍という特殊な状況下にあったことから、コロナ前である2019年と比較するとどうなのか気になるところだろう。2019年の総需要が36万2313台なので、5万3579台、14.8%も増加している。

これだけ大きく伸びてしまうと、その反動がいつかくるのではないかと不安を感じるが、全軽自協のデータを見る限り、今のところその心配はなさそうだ。軽二輪クラスの1月から4月までの累計が2万5086台で、前年比4.6%プラス。小型二輪クラスの1月から4月までの累計が3万3327台で、同36.0%のプラス。2021年の勢いは、全く衰えてないことが確認できる。

肉薄する原付一種クラスと原付二種クラスその台数差、わずか2108台

総需要をクラス別に見てみよう。新車国内出荷台数のデータについても同様のことが言えるが、原付一種クラスと原付二種クラスの差は、もうほとんどない。一種が12万7759台で、二種が12万5651台なので、わずか2108台の差だ。2019年が2万6674台差、2020年が2万0679台差と2万台以上離れていたが、2021年にグンと縮まった。一種、二種ともに2019年を上回る需要台数となっているが、特に二種クラスの伸びが大きく、前年比で23.5%ものプラスを記録している。このクラスが12万台以上になるのは、リーマンショックが発生した2008年にまで遡らなければならない。12万台という実績は、実に、13年ぶりの“快挙”でもあるのだ。

「これまで通勤に電車を使っていた人が密になるのを嫌って、原付二種を通勤の足に使うようになってきています」

この2年、多くの販売店から聞かれるようになった話である。

原付二種はAT小型限定以上の小型限定普通二輪免許が必要になるが、30km/hの速度制限や二段階右折も不要となりタンデムが可能となることから、軽二輪クラスとは、高速道路に乗れるか乗れないか、程度の違いとなる。

また、自賠責保険料金は原付一種と同じで、任意保険も自動車のファミリーバイク特約が使える。原付一種と軽二輪以上のメリットを併せ持っているのが原付二種。同クラスの躍進を支えた背景の一つに、通勤手段の見直しが挙げられる。多くの販売店から聞かれるようになった「声」は、ここに起因する。

需要台数において原付一種クラスと原付二種クラスは、販売台数のデータではなく、出荷台数のデータがベースとなっている。また、この数字には、海外メーカーの販売台数は含まれず、国内メーカーのみの数字となっている。例えば、若い女性に人気のプジョーモトシクルの「ジャンゴ125」などは含まれていない。それらの台数が足されていたら、もしかしたら既に原付二種クラスが原付一種の需要台数を上回っていたかもしれない。そう思えるほど大躍進した2021年だった。

2007年以来、14年ぶりの8万台突破小型二輪クラスは24%もの大幅増

2021年は原付二種が大きく躍進した一年だったが、前年比で同クラスよりも高い数字を出していたのが、小型二輪クラス。2021年の需要台数は8万3571台で、前年比24.0%のプラス。原付二種が2008年以来の12万台と書いたが、小型二輪クラスが8万台以上となるのは2007年以来、14年ぶりなのだ。

小型二輪は、趣味性が非常に高いクラスであり、通勤・通学やビジネスユースで使われることはレアケース。『バイクに乗る楽しさ』を味わう人の割合が、他クラスよりも圧倒的に多いだろう。「眠っていたバイクを起こし、また乗るようになったお客さんが増えた」という販売店の声は何度も耳にしたが、こうした状況に加え、「新しい趣味」としてバイクを楽しむようになった人からの需要が急増したことも、小型二輪クラス大躍進の要因であると考えられる。SNSでも、「十数年ぶりにバイクに乗り始めた」「この機会に免許を取って乗り始めた」などは非常によく見る。

続いて軽二輪クラスを見て見よう。このクラスもプラスで、2021年は7万8911台の前年比6.1%増となっている。2021年は小型二輪クラスに比べて少ないが、2020年は前年比27.5%もの伸びを見せている。

『バイク女子』について前段で触れたが、ヤマハ「YZF-R25」などは女性人気の高いモデル。ユーチューブでは、R25に乗ってツーリングを楽しむ女性の動画を見つけるのは、とてもたやすい。フルカウルモデルだとスポーティな走りを想像するかもしれないが、1980年代や1990年代のようなスペック至上主義や『走り命』みたいなものではなく、「このバイクが愛おしいから乗ってる」というような、ともすればペット感覚でバイクに接しているのだ。これは、いまどきの特徴の一つかもしれない。

メーカー別に需要台数を見ると、R25を擁するヤマハは10万4441台(前年比18.2%増) でホンダに次いでシェア2位(25.1%)。ホンダは19万7099台(同11.2%増)でシェア1位(47.4%)。スズキは5万3826台(6.7%増)でシェア3位(12.9%)。カワサキは3万0350台(26.3%増)でシェア4位(7.3%)。その他が3万0176台となっている。

約半分のシェアを持つホンダの中で人気が高かったのは「GB350」や「レブル1100」。相変わらず「レブル250」の人気は高いが、「なかなか入荷しない」という声を販売店から聞く。この問題がなければ、ホンダだけではなく全体の需要台数も、もっと伸びていたはずだ。もちろん、それは他メーカーも同じ。3月に、3年ぶりに開催されたモーターサイクルショーのプレスブリーフィングでは、すべてのメーカーが入荷の遅れをお詫びしていたほど。

ヤマハで人気が高かったのは、やはり「YZF-R25」。ほか、「マジェスティS」や「SR400ファイナルエディション」なども販売に貢献した。

スズキは、「ジクサーSF250」や「SV650/X」などの人気が高い。特に、SV650は個性の強さが光るモデル。似たようなバイクがないというのは大きな強みになっているものと思われる。 カワサキは言うまでもなく「Z900RS」が強い人気を誇っている。そのほか、「ニンジャ400」「ニンジャ1000SX」の人気が高かった。

全軽自協のデータからも、まだまだバイク人気の熱は下がっていないことが分かる。この先、コロナ禍がどうなっていくのかは全くもって不明だが、多くの人の目がバイクに向いている今が、ライフスタイルにバイクをしっかりと根付かせる最高のタイミングだ。



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