公開日: 2022/10/10
更新日: 2022/10/10
ネットで店の在庫車を見たという、あるユーザーが来店した。PCX125かアドレスV125かで迷っていた。現車を確認する前に、近くに展示されていたZ900RSに目が行った。「カッコいいな」と暫く見ていた。すると、1人のスタッフが声をかけてきた。
「この車両、走行距離も5000㎞弱だし、いまは新車の納車には時間がかかるので、絶対にお勧めですよ。これぐらい排気量があると、乗っていて楽しいしね。いま、普通免許や大型免許を取る人がかなり増えているし、コロナの影響で在庫が少ないので、いまがチャンスですよ」
こんな感じで矢継ぎ早にセールストークを受けたらどうだろうか。Z900RSを見ていた手前、人によっては、自分が探しているのは、価格的にはかなり低い「通勤快足」だということを言い出せないかもしれない。そうなると、その場にいにくくなり「ちょっと考えます」と言って帰ってしまうことも考えられる。そして、その人は、もう来店することはない・・・・。
なぜ、このようなことが起きるのか。それは、ユーザーの情報を把握できていないためだ。とは言うものの、一元客の場合、それは不可能。どうすればいいのか。確実なのは、挨拶を除き、すぐには声を掛けないことだろう。 興味深いデータがある。中古車販売店の平均的な成約率は30%ほどであり、再来店率は10%~20%だという。
考えなければならないのは、この数値を高めるには、どうすればいいのか、ということ。多くの消費者は、興味のある車両の情報をある程度把握したら、一旦、店から離れたあと検討しようと考えるもの。そんななかで、いきなり強烈なセールストークを行うことは、再来店率を減らしてしまう可能性がある。では、何をすればいいのか。これについて、マーケティングに詳しいライターの神林昌史さんはこう言う。「売るという意識を持たないことです」 では、何をテーマにどのようにコミュニケーションを図ればいいのだろうか。神林さんは、代替えに限った話、と前置きしたうえで、さらに続ける。
「これは、首都圏に複数店舗を展開する販売店の元店長の体験談ですが、いまお客さんが乗っているバイクの不満な点やマイナスと感じているポイントを聞き、中古車を選ぶ時、必ず確認したほうがいい箇所や車種別のチェックポイントについて教えるのです。相手に買わされる、売り込まれている、という思いを決して抱かせないこと。こうすることで、聞く耳を持ってくれるようになるのです。実際、その店長の個人成績は群を抜いてました」
つまり、無理なセールストークは避け、いま、ユーザーが抱えている問題点を把握し、その対処方法を提案する。これによりユーザーは、「この営業マンは、売れさえすればそれでいい、と思っているわけではない」という感情を抱き、少しずつ心を開いてくれるようになるというのだ。ユーザー視点で考えてみると、知りたかったことが分かり、また、来た甲斐があったという充足感は確実に抱くだろう。
こうしたセールストークとは別に、試す価値のある手段がある。「紹介キャンペーン」だ。よくあるのは、二輪販売店では実施している店とそうでない店がハッキリ分かれているものと思われる。よくあるのは、〇〇を紹介してくれた人には〇〇をプレゼント、というものだが、意外に抜け落ちてしまいがちなのは紹介された側への特典。これがあるのとないのとでは、動機の面に違いが出るだろう。
キャンペーン内容は、例えば紹介者にはオイル交換無料券をあげたり、あるいは店での支払いに使える、オリジナル金券を提供するのも一案だろう。
一方、紹介を受けた人に対しては、特定パーツの無償交換や下取保証など、とにかく紹介を受けたほうが得なんだ、と感じてもらえるようにすることが大切。ポイントは、紹介者の特典を良く設定するところにある。これらキャンペーン情報については、やはりSNSでの発信は不可欠。その他、ポスター等で店の外に大きく貼りだすことも重要だ。
もし、いままでチャレンジしたことがなければ、ぜひ試して頂きたい。きっと何か、新しい発見があるだろう。
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