コラム

地域の生活を支えるローカル鉄道が存続の危機に。ポイントは「輸送密度1000人未満」

公開日: 2022/10/18

更新日: 2022/10/18

鉄道開業から150周年を迎える今年、地域の生活を支えるローカル鉄道が存続の岐路に立っている。国土交通省は7月25日、経営が厳しいローカル鉄道のあり方を検討する有識者会議を行い、利用者の少ない路線の見直しに関する提言を発表した。かねてより、存続が心配されているローカル鉄道だが、なぜ、いま見直しが行われているのだろうか。

JR東日本は7月28日、利用客の少ない35路線66区間の2019、2020年度の収支データを公開した。これによると全線区が赤字で、国鉄からJRに民営化された1987年度の1kmあたりの1日平均利用者数を意味する〝輸送密度〟と比較すると、最大95%もマイナスとなっている区間も存在することが分かった。

JR東日本がデータを公開した背景には、コロナによる影響がある。いままでは、首都圏の在来線や新幹線などの黒字路線でローカル鉄道の赤字をカバーしてきた。けれども、コロナ禍によってテレワークが進み、通勤で使用する定期代の収入が大幅に減少。さらに、ホームドアなど安全対策の投資も必要なため、コロナ禍以前の利用者数まで回復する見通しが立たず、継続は難しいと判断したのだ。

地域にとってどんな交通の姿が最適かを話し合う

国交省はこのような現状を踏まえ今年2月より、ローカル鉄道のあり方について議論することを目的とした有識者会議を5回にわたり実施。そして、7月25 日、「輸送密度1000 人未満を目安とする区間」を対象に、国が協議会を設置して、協議開始から最長でも3年以内に方針を決定する、という提言を示した。これは、単純に赤字だから廃線とするのではなく、地域にとってどんな交通の姿が最適であるかを話し合うことを求めている。

この他、バス輸送への転換や、廃線にした路線をバス専用の道路にして運行するBRT(バス高速輸送システム)を導入する際は国が支援すると説明。さらに、鉄道として存続させる際は、線路や駅などの設備を自治体が管理し、鉄道の運行のみを事業者が行う「上下分離方式」の導入も視野に入れていることを発表した。

余談だが、国交省の大臣は公明党の斉藤鉄夫氏である。同氏は公明党オートバイ議員懇話会の副会長を務めるなど二輪業界への貢献度は大きいが、同時に大の鉄道マニアでもある。プロフィールにも、「自他ともに認める鉄道マニア」と書くほど。

同氏はかつて何かのインタビューで、ローカル鉄道を存続し活性化するためには、鉄道会社と利用者が一緒に知恵を出し合い考えなければならない。努力と熱意に国の支援が加わり三位一体となることで解決の道は開ける、といった趣旨の話をしていた。

オートバイ懇話会でも存在感を発揮している斉藤大臣。鉄道問題についてはどう、舵取りを行うのかがポイントとなるが、国交省が8月25日に発表した2023 年度予算の概算要求には、ローカル鉄道の見直しを支援する施策が盛り込まれている。今後、ローカル鉄道を巡る議論が活発化することは間違いない。地域の生活の足をどのように維持していくのか。ローカル鉄道はいま、大きな分岐点に立っている。

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