公開日: 2025/08/13
更新日: 2025/08/20
今回はユーメディア湘南オフロードワールドさんのご協力のもと、バイクジャーナリスト小林ゆきさんがセロー250、セロー225WE、KLX230シェルパ、スーパーシェルパ、新旧モデルの足つき比較インプレを行いました! ぜひバイク選びの参考にどうぞ!
こんにちは、バイクジャーナリストの小林ゆきです。今日は新旧セロー、そして新旧シェルパ、こちらの足付きインプレを中心に比較をして参りたいと思います。今回は、オフロードワールドさんの場所を借りて、ユーメディアグループさんから車両をお借りして、インプレをできることになりました。
●「セロー250」シート高830mm/車両重量133kg
さて1台目は、こちらはセローの250、そして目の前にあるのはファイナルエディションです。すでに新車としては売っていないんですけれども、未だに人気でこういった大きなショップさんとかは取り扱いがあったりします。エンジンは250になっています。元のモデルは225だったんですけれども、空冷エンジンは同じ。そして排気量が250。オフロードベースの方に上がっております。そして、新旧の違いはシェルパも同じなんですが、例えば吸気がキャブレターから、インジェクションに変わったりとか、音の規制があったりしまして、車重はちょっと重くなっております。
シート高は意外にあります。830mmあります。元のモデルは810mmでございます。早速ですが、私の身長は160cmです。手足は結構短めなのですが、前に回りますと、私の股下よりも上なので、シート自体は高そうに見えますね。ただオフロード車としてはだいぶ、そこまで高くないかなという形でございます。
早速またがって参りましょう。ハンドル周りは普通です。私ぐらいの身長のものとしては、そんな高いところにはないです。まず、サイドスタンドのままで、またがりますけれども、シートが細いので、いきなり、ちょうどバイクの真ん中に乗っております。私の場合、この状態で着地している左足は、かなりつま先ツンツンに近いです。なので、このまま左足の力を使ってバイクを起こそうとしても、まるで力をかけることはできないので、ちょっとお尻を左側にずらします。やっぱり脚力を使って起こしたい。足で踏んであげただけでサスペンションがしっかり動きますね。
では、腕も使って起こします。やっぱりセローはすごく軽く感じますね。重心位置がすごく低いわけでもないんですが、起こしただけで軽さが分かります。今、車体を起こしたんですけども、この状態だと真ん中にはあんまり座れてないんですよ。ちょっと座り直すともう左足がだいぶツンツンなのでこれだとちょっと足つきの不安が出ちゃうので、この辺は私より背が低い方は気をつけた方がいいと思います。
ではサイドスタンド払うために足を踏みます。これ踏み換えただけで「キュッキュ、キュッキュ」このシートが鳴るんですけども、滑り止め加工がされているシートなんですよね。オフロードの場合は走っている時にお尻が滑らない方が走りやすかったりするので、そういった加工になっているんですが、背が低い方にとってはこれが若干鬼門かも知れないですね。ただ車両が軽いので、滞空時間の時にグラッと来てもそんなに怖さはないです。
じゃあサイドスタンドを払いますが、今、気がつきましたけど、セローのサイドスタンドにはツノがないんですね。ですが、足が触れる位置にバネの辺りとかがあるので、私より背が低い方や足が短い方でも出し入れが簡単だと思います。
●「セロー225」シート高810mm/車両重量122kg
続きまして、こちらは初代セローの225です。今でも根強い人気があります。その理由は、初代の方は明確な目的があって、「どんな山道でも駆け抜けられる」というようなコンセプトのもと、エンジンがスーパーロー仕様とか、ハンドルがめちゃくちゃ切れるよということで、非常に人気がありました。未だにセローといえば250ではなく、こちらの225を探す人がいるぐらいです。今回オフロードワールドさんに用意していただいた車両は、メーターもアナログな走行距離4800kmという驚きの状態です。探せばまだ、こういった良質な中古車が見つかる状況ではあります。
さて、このセロー225ですが、非常に人気がありました。我々、バイクブーム世代が免許を取り立ての頃は、セローといえば「足付きがいい」「軽い」という理由で、特に女性ライダーに好まれていました。しかし、今スペックを改めて見ますと、シート高は810mmもあったんですね。ただオフロード車ですから、このシート幅は低く抑えられています。そして、乾燥重量108kg、装備重量122kgということで、やはりオフ車ですから、2気筒、4気筒のバイクに比べ、軽いことが分かります。
前に回ります。私は身長が160cm、手足短めでございますが、サイドスタンドを立てた状態では、シートの一番高い部分が股下よりも高くなります。先ほどセロー250で足付きインプレをやりましたが、あまり大きな差はないように感じます。ハンドル周りも、ほとんど差はないように見えます。こちらのほうが少し広く感じるような気もしますが、気のせいかもしれません。また、シートの後ろ側は新旧ともにフラットな形状のため、またがり込みやすいシートになっています。
それでは早速、シート高810mmのセロー225にまたがってみます。実は私、以前セロー225に乗っていたので、すごく懐かしく、そしてしっくりくる感じがします。今はシートの真ん中にまたがっていますが、新しいセロー250と比べると、股のあたりがかなり細いと実感できますね。お尻が当たるシートの座面も違いますね。そして、右足のステップ位置も、こちらのほうがずいぶん高いように感じます。
そして、サスペンションに関してはもちろんこれ古い車両なので、新しい状態とは違うのですが、今、左足は母指球までしっかりと地面についている状態です。膝は少し曲がっているように見えるかもしれませんが、ほぼ真っ直ぐな状態です。この状態から車体を起こせるか試してみると、サスペンションの感触が全然違いますね。古い車両ですが、サスペンションがしっかりしている感じがします。
足の力だけで起こせるか試してみたところ、起こせました。足の力というよりも、お尻で右に押すような感じで起こすことができました。やはりセロー、シート高810mmありますが、車両の軽さや重心バランスの良さで、扱いやすいと感じます。車体を起こした状態で、サイドスタンドが私の左足を邪魔しておりますけれども、ここで足を踏み替えます。サイドスタンドを払うために踏み替えるのですが、やはりシートの高さがあるので、一瞬だけ両足が地面から離れます。
シートの滑りは、旧型のセロー225のほうが滑りやすいですね。そして、何度も言いますが、やはり股の部分が細いので、足を伸ばして着地しやすいですし、車体も非常に軽く感じます。サイドスタンドは、こちらもツノがないタイプですね。今、操作した感じでは、しまうときは軽く感じましたが、出すときは意外と重く感じました。
●「スーパーシェルパ」シート高810mm/車両重量126kg
続いては、カワサキのスーパーシェルパです。足つきのインプレなど、やってまいります。このスーパーシェルパは、1997年に明確なセローの対抗馬として登場しました。セローと同じく空冷エンジンを積んでいますが、スペックは所々で上回っています。例えば、パワーは26馬力とセローを凌ぎます。一方で、重さは誤差のレベルですが、乾燥重量111kg、装備重量126kgと、若干の重みがあります。
シート高は810mmと公表されていますが、当時のカワサキが頑張ったのではないかと思うほどです。実は、私がフリーランスになって初めて、2月に北海道をツーリングしたときの相棒がこのバイクでした。凍った道や雪道を、タイヤチェーンを巻いて走ったのですが、その時にも感じたのが、長距離ツーリングでもお尻が痛くならないシートです。まるでオンロードバイクのように肉厚で、さらにカワサキによく使われる梨地のような、牛革を加工したような表皮が特徴です。こうした細部が、セローとは少し雰囲気が違いますね。ちなみに、今回お借りした車両は走行距離が1100kmしかなく、見た目にも非常にきれいです。
では、早速またがってみましょう。シート高は810mmです。セローと比べると、ハンドルの位置が少し低く感じますね。スーパーシェルパもセローと同様に、後ろに向かってフラットなシートなので、非常にまたがりやすいです。今、3台目のインプレですが、足つきはこれが一番良いです。サイドスタンドを立てた状態でも、ご覧のようにつま先からかかとまで地面にベタっとつきます。シートの真ん中に座ると、かかとがわずかに浮く程度。ハンドルもかなり低く感じます。また、ハンドルと座る位置が近く感じるのも特徴です。キャスター角に秘密があるのですが、今回はその説明は省略します。
そして、右足のステップは少しバックステップ気味で、やや高い位置にあります。そのため、車体を起こすときに右足を踏み込んで起こすことができます。オフロード車らしくサスペンションがよく沈み込みますね。ただ、足の力だけで起こすには、重心位置のせいか少し重く感じます。途中でずっしりと重くなるポイントがあります。車体の上のほうに重さがあるような感じです。なので、起こすときはやはり腕の力で右に引っ張ってあげる必要があります。
このバイクも、車体を起こすとサイドスタンドが足に少し干渉してしまいますね。足の位置を踏み替えますが、シートのクッションが厚く丸っこいので、両足を地面につけたまま踏み替えるのは難しいです。私の場合は、両足が浮いてしまいます。シートの滑りは普通ですね。
サイドスタンドは、こちらもツノがないタイプです。つま先で払い、かかとで出すのですが、このバネが少し硬く感じます。これまで試した3台すべてに言えますが、オフロード車はバネが硬めに設定されているのでしょうか。ただ、足の長さに対しては、サイドスタンドの出し入れはしやすいと思います。
●「KLX230シェルパ」シート高845mm/車両重量134kg
続きまして、カワサキのこちらは「スーパー」がつかない方のシェルパです。このシェルパは現行車両で、KLX230シリーズの一環です。実は以前、別の店舗でこのシェルパとKLX230の比較動画を制作しましたので、ぜひそちらも参考にしてください。
さて、今回は新旧シェルパを比較しますが、現行のシェルパはKLX230シリーズの中では最もフレンドリーな仕様です。とはいえ、今回用意した4台の中では最も手強い、シート高845mmです。もう目の前にあるだけで、いかにも高いと感じます。
さっそく前に回り、シートの高さを見てみましょう。腰骨、または大腿骨頭あたりにシートが来るので、その高さが一目瞭然です。ハンドルも急に高く、幅も広くなっています。
それではまたがってみましょう。私はシートが高いと知っていましたが、改めてまたがるとやはり高いです。ただまたがっただけでは右足が浮いてしまいます。サイドスタンドを立てた状態でも、左足は地面についているように見えますが、実はブラブラです。無理やりステップに足を乗せている状態なので、車体を起こす際に左足は全く役に立ちません。
車体を起こす際は、お尻を完全にずらし、太ももをシートに乗せるような形で、腕の力だけで起こすことになります。すると、サスペンションがかなり沈み込むのが分かります。サイドスタンドを払うために足を踏み替えますが、シート高が845mmもあるため、せーのでよいしょ、という感じで体を大きく動かさないと踏み替えられません。骨盤がかなり動くことになります。サイドスタンドを払うのも、前回同様に苦労します。サイドスタンドを払うのは、一度バイクから降りてからにした方が良さそうです。
今回は、セローの新旧モデルとシェルパの新旧モデル、合計4台を一気に足つきインプレなどをしました。オフロード車の中には、本格的な競技用モデルにウインカーを付けたようなバイクも存在しますが、今回試乗した4台は、いずれも空冷エンジンを搭載しており、車重も比較的軽いという共通点があります。では、この中でどのようにバイクを選べば良いのでしょうか? バイクにはそれぞれ長所があり、一概に優劣はつけられません。
セローは、225ccから250ccへと排気量が変更されました。本来のセローの目的からすると、セロー225を選びたいという方も多いでしょう。元々乗っていた方にとっても、「セローといえばこれ」というモデルです。しかし、キャブレター仕様であることや、80年代から続く古い年式であるため、古さは否めません。今回お借りした車両は走行距離が浅いですが、日頃のメンテナンスにご自身で対応できる方や、信頼できるショップがある方にはセロー225も良い選択肢です。
一方、セロー250は最近まで生産されていたため、市場に流通している台数も豊富です。新しめの車両が多く、インジェクション仕様なので高速道路なども安心して走行できるのが魅力です。
シェルパは、もはや別のバイクと言えるほど進化しました。現行のKLX230シェルパは、競技用モデルのKLX230の流れを汲んでおり、車体構成が全く異なります。排気量は250ccから230ccに落ちましたが、最新のインジェクション制御が素晴らしく、スペック上のパワーは劣るものの、実際に乗ると現行モデルの方がパワー感を感じられるかもしれません。
スーパーシェルパも、その親しみやすさは侮れません。少し重量感があるという話をしましたが、これは長距離でも安定して走れるというメリットにもなります。
乗った感覚を直接比較するのは難しいと思いますが、バイク選びのヒントとして参考にしてください。免許取り立ての方はまずはシート高が低いバイクの方が安心できるでしょう。ベテランライダーの方はセカンドバイクとして選ぶなら、セロー250やシェルパ230など、本格的なオフロード走行も楽しめるモデルがオススメです。
今回は滅多にない機会で、4台を並べての比較でした。この動画が、皆さんのバイク選びの保存版となれば幸いです!
●撮影協力:ユーメディア湘南オフロードワールド様
【小林ゆきさん略歴】
横浜育ちのバイクブーム世代。バイク雑誌の編集者を経て、現在はフリーランスのライダー&ライター。バイクを社会や文化の側面で語ることを得意としている。愛車は総走行距離25万kmを超えるKawasaki GPz900RやNinja H2など10台。普段から移動はバイクの街乗り派だが、自らレースに参戦したり鈴鹿8耐監督を経験するなど、ロードレースもたしなむ。ライフワークとしてマン島TTレースに1996年から通い続け、モータースポーツ文化をアカデミックな側面からも考察する。
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