公開日: 2026/06/04
更新日: 2026/06/17
バイクショップにおける、「その時にしか味わえないサービス」には何があるか考えてみた。これは店舗での体験ということになるが、瞬間的に浮かんだのは「納車式」。これは決していまに始まった目新しいサービスではない。最初にやり始めたのはカーディーラーだと言われている。
二輪販売店でも行っている店はある。実際の実施率についてはデータがあるわけではないので肌感覚でしかないが、規模の大小を問わないとしても、1~2割ほどではないだろうか。写真撮影だけ、という店を含めれば、2割は超えるだろう。やらないショップのほうが多いものと思われるが、これは逆に考えると、それだけ差別化を図るチャンスがあることになる。
ここで「やらない理由」について見てみよう。考えられるのは、「手間がかかる」という理由。ショップによっては、納車式はコストでしかない、という意見もあるだろう。忙しい週末に接客や修理・整備などの日常業務と並行し、そのために一定の時間を割くのはそう容易すくはない。中には、ユーザーが「恥ずかしいから」と固辞するケースも考えられる。その心理には、「スタッフに囲まれて拍手されて・・・なんて恥ずかしい」「さほど高額な買い物でもないのに心苦しい」といった理由もあるだろう。
これらはすべて理解できること。だが、納車式を実施しているショップが少ないことを考えれば、先にも記したように、他店と差別化を図るためにも行う価値はあるだろう。ここで一般的な納車式について確認してみよう。業務に組み込まれたカタチで普通に行っているのは、新車ディーラーをはじめとする販売店。なかでも大型車を扱っているショップに多い。カワサキプラザには、専用スペースを設けているショップもある。
では、中古車販売店ではどうか。新車に比べて少ないが、大手では簡易的な撮影を行うところはある。
実際の流れについて、納車式を行っているという販売店Aは、こう説明する。
「最初に登録書類や保険や帆保証、ロードサービスなどの書類説明を行います。これは事務的な説明。ここからが本番。「では、これより〇〇様のバイク〇〇〇〇の納車式を行います」と言った後、スタッフと一緒にバイクを覆ったカバーを取ります。アンベールですね。これが最初の対面です。その後、外観確認を行い、傷の有無やオーダー通りの仕上がりになっているかどうかについて一緒に確認します。続いて基本操作。エンジン始動やメーター表示の切り替えなどです。あとは電子制御の初期設定などを行い、写真撮影に移ります。先ほどのアンベールもメイン演出ですが、ここからがセレモニー的な感じとなります。バイクの横に立ち、スタッフが写真撮影。「納車おめでとうございます!」との発声とともに、スタッフ全員で拍手し店のオリジナルグッズを贈呈します。奥さんも一緒の時は、花束にすることもあります。ウチではここでシャンパンをサービスします。厳密にはシャンパン風味のノンアルコールドリンクです。ポイントは「ポン」という音ですね。そして最後にお見送り、といった感じです。この一連の流れはスマホで動画も撮影します。これはかなり喜ばれますね。あとはお客さんの許諾を得たうえでのSNS投稿。これも大きなポイントです」
目いっぱい詰め込んだ感じだが、なかにはホールケーキをオーダーし提供するという店もある。このサービスは、かなり喜ばれるという。
この一連の流れを見て分かるように、前半は説明となる。これを省く店は、まずないだろう。なので、もし納車式に抵抗を感じるユーザーがいるとすれば、納車式という言葉を使わずアンベールも省き、説明の流れからそのまま写真撮影とノンアル飲料での乾杯もしくは記念品贈呈に流れ込むといいだろう。
前出の販売店Aでは、上記の流れを全ての購入ユーザーに適用しているわけではない。クラス(排気量・使途)別にレベル分けし、ユーザーの意向に基づき設定しているという。その内容を表したのが表①だ。
このように、納車式をイベント化するだけでも差別化となる、このポイントは非日常感の演出。納車式を単なる事務手続きから「顧客が一生忘れないイベント」へと昇華させる。これが目的だ。
ここまで、バイクという大きな括りで見てきたが、中古はどうすればいいのか、という声も聴く。これについて業界ウォッチャーの喜多濃英明さんは、こう説明する。
「新車はどこで購入してもすべて同一。けれども中古車は一物一価ですよね。店により仕上げも異なるし、旧車やカスタムを施したバイクなどの場合はなおさらなんです。つまり、スタッフがこのようなカタチに仕上げた(製品化した)という思いを納車の場で表現することも理にかなったやり方なんです。言い換えれば、プロ意識の可視化。さらに言うと、納車式という場を通じて、ショップのスタッフ全員と顔を合わせるだけで、不安感の払拭や『この店なら大丈夫』という信頼感の醸成にもなります。中古車の納車式は、良い言い方をすれば、『前のオーナーから受け継いだ車両を、プロの技術で磨き上げ、新しいオーナーへ繋ぐ。その象徴的なシーン』なのです」
必要なのは、ユーザーの心に印象付けることで、店のほうを見続けてもらうこと。納車式を行ったからといってユーザーが店を離れないわけではない。けれども、生涯顧客化の第一歩にはなるだろう。
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